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0ツ星

「え、えっと……」


 多くの大人に囲まれて困惑しているリオナを見て俺は満足気な気分に浸っていた。


(これで残すは俺だけか)


 リオナはしっかりと約束を果たしてくれた。

 その約束に今度は俺が応える番だ。


「今から泣く準備でもしておいた方がいいんじゃないのか?トリガー」

「やかましいぞエルロンド。泣きを見るのはお前の方だ」

「平民のお前がリオナと同等の神獣を出せると?冗談はやめてくれよ」


 ニタニタと笑いながら嫌味ったらしくエルロンドが絡んできた。


「リオナの面倒は僕が騎士団で見るから安心していいぞ」

「お前こそ笑えない冗談はやめろよ。お前みたいな奴にリオナは任せられない」

「ふん」

「最後、アルバス=トリガー。前へ」


 気に食わないと言った表情をしているエルロンドを尻目に、俺は魔法陣へと向かった。


「あ……頑張ってアル!」


 大人達に囲まれながらも俺のことを気に掛けてくれたリオナにピースサインで応え、魔法陣の中心で跪づいた。

 父さんに鍛えられ、神獣についての心構えを学んできた集大成を今ここに現してみせる。


 俺が召喚を始めることに気が付いたのか、騒がしくしていた人達が少し静かになり、注目が俺へと集まる。


 俺は一つ深呼吸をし、心を落ち着かせてからゆっくりと文言を口にした。


「天より託される一本の鎖は我が御魂と結ばれ、新たな命を今ここに顕現させるだろう…………あふれんばかりにこぼれる神の寵愛を我に授けたまえ!」


 魔法陣が発光を始め、俺の胸から光の線が流れ出た。

 まるで下から風が吹き荒れるように魔法陣と光の線が結びつき、ギュルギュルと幾重にも折り重なっていった。


(来る……!)


 と思った次の瞬間、ポンッという可愛らしい音と共に、何か小さい生物が俺の頭に乗っかった。

 既に魔法陣は効力を失い、光の線も無くなっている。


「ん……?」

「「「え?」」」


 俺を含めて、その場にいた全員が呆気にとられていた。

 そして、岩盤には既にステータスが記載されている。


 ──────────────────


【ナナドラ】 Lv1


 ○攻撃力:10

 ○防御力:10

 ○素早さ:10

 ○特殊能力:10


 スキル:『???』


 ──────────────────


「これは………………0ツ星…………?」

「0ツ星…………」

「………………ぷっ」


「「「あーっははははははははは!!!」」」


 ドッとせきを切ったように、笑い声が神堂内を包み込んだ。


「0……!?0ツ星!?なんだそりゃ聞いたことねーぞ!!」

「一ツ星ですらねーとかマジか!!」

「見ろよあのステータス!!子供の方が強いんじゃねーのか!?」

「伝説!!これ伝説だよある意味!!ぎゃははははは!」


「ぐぬぬ……!」


 俺は頭の上に乗っている生き物の両脇を抱えるようにして頭からとってその姿を確認した。

 龍…………に見えなくもないが、どちらかというとトカゲに近い。

 黄色っぽい体に小さな翼が生え、内側は真っ白でプニプニしている。

 触り心地は最高に柔らかいわけだが…………一体これで何を防げるというんだ。


「クピ?」

「くぴって…………」


 相棒はキョトンとした顔で頼りなく鳴いた。


 頭を強く殴られたような衝撃を受けて、思わず立ちくらみがする。

 リオナは五ツ星を召喚し、エルロンドですら四ツ星を召喚した。当然、俺もそれに連なる神獣を召喚するものだと疑ったことはない。


 前代未聞だった。

 俺が契約を結んだ神獣はおおよそ神獣とは呼べる代物ではなかった。

 これが五ツ星とかであればこのステータスでも今後に期待と言うことができるが、最低レアリティと言われていた一ツ星ですらない0ツ星。

 一応スキルは持っているみたいだが、謎の『???』。


 俺はこいつに何を期待すればいいんだ?


「ま、まぁ……神獣がダメだからといって働き口が無いわけではない…………あまり気を落とすでないぞ」


 立ち合っていたお爺さんが気を遣って声を掛けてくれたが、その声には同情の色しか感じられなかった。


「アルバス……」

「アル……!!」


 ロートルおじさんとリオナが心配した目で俺の方を見る。

 だが、俺にはそれが憐れみの目にしか映らなかった。


「っ……!」


 俺は見てほしくなかった。

 高レアリティの神獣を出すと、騎士団に入ると、豪語していた手前この結果は恥ずかしくてしょうがない。

 何よりリオナとの約束を守れないこと、そのことで自分自身を許すことが出来なかった。


「くっ…………!」

「アル!!待って!!」


 俺は相棒バディを抱えたまま走り出した。


「良かったじゃないかトリガー!!君は自分の身の丈に合った神獣と契約することができたわけだ!!あーはっはっはっは!!」


 エルロンドの高笑いする声が俺の心を傷つけてくる。

 本来はこの後にスカウト活動が入り、各々の進路を考える時間があるのだが、俺はその場から一刻も早く立ち去りたくてそのまま神堂を飛び出していった。


 どうせ0ツ星の神獣を持った俺をスカウトしたいと思う人なんているわけがない。構う必要なんかなかった。

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