変化とは別の変化を準備する
私にはアナタが必要なの」
上気した頬に、荒い吐息。
愛の告白ならこんなにも熱烈な告白もないだろう。
人気の無い夕日が落ち切った校舎裏で非常灯の灯りに照らされた桜の花びらと共に目の前の少女の姿を映し出す。
歳は同じ頃、同じ制服を纏い濃紺に彩られた髪色は夜の空気に晒されて、暗闇との境目を曖昧に見せ彼女の存在を大きく感じさせている。
目鼻立ちは凛と意思の強そうな瞳が真っ直ぐに見つめ、彼女は興奮冷めやらぬ表情で一歩前に出るが、少年はそれでも彼女の願いに首を縦に振る事はない。
「なんで……なんでよ!」
上げた瞳は憎悪と悲しみを伴い、否定する少年をみすえていた。
「私は、アナタの言う事なら何でも聞くわ!あの女達よりアナタを理解するし!欲しいというのならこの身体を捧げても良い!」
誰の目から見ても目麗しく魅力的な彼女の容姿だが、どんな物を差し出されたとしても彼女の願いは聞き届けられる事は無い。
「お願い……お願いします。もう私にはアナタを頼る以外に方法がないの……」
プライドが高い彼女が頭を下げる光景を、彼女を知るクラスメイトが見たら驚くかもしれない。
そんな、深く、深く頭を下げる彼女の願いは叶うことはないが、それでもたった一つ残った希望に縋る様に彼女は少年に言葉を漏らした。
「気まぐれでも、情けでもいい……二度と顔を見たくないというのなら私は二度とアナタの前に姿を見せないから……だからお願い、一樹くん……私の弟を助けて……」