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020「調査班テント」



——調査班テント


 レナと別れた後、ウォルターとリリーは現場調査を行っている騎士団と術士団のテントに入り、ヴァーズを探していると、


「ウォルターさん、リリーさん⋯⋯」

「「アデル君!」」

「お二人の戦い拝見させて頂きました。Cクラス、Dクラスの魔獣をあんなにもいとも簡単に蹂躙する様はまさに驚愕でした。改めて、初対面の際の無礼な態度をお許しくださいませ」

「その話はもういいよ、アデル君。それに私たちもヴァーズだからってつい馴れ馴れしくしてしまったのも悪いしね」

「いえ、『大陸間戦争』の英雄二人を知らない私の不手際です。申し訳ありません!」


 二人はアデルの謝罪攻勢にどうしたものかと悩んでいると、


「おい、アデル! その話はもういいから!」

「で、ですが、英雄のお二人にあのような私の無礼な態度はあまりに失礼⋯⋯」

「だー! だからもういいから⋯⋯」

「わかる! わかりますよ、アデル君!」

「ローランドさん!」


 ヴァーズがアデルを宥めようとしたとき、アデルの横からローランドが入ってきた。


「君の気持ちは私が一番よーくわかっています! ウォルターさん、リリーさんという英雄の戦闘を目の前で観たらそんな気持ちになるのも無理はない!」

「また、ややこしい奴が⋯⋯」


 ウォルターが小声でため息をつく。


「アデル君。英雄の戦いは凄かっただろ?」

「はい。まさかあれほどの強さとは思いもしませんでした」

「そうでしょう、そうでしょう。英雄の強さはまさに異次元ですからね」

「はい。まあ、でもヴァーズ司令のほうが英雄お二方よりも強かったですけどね」

「ん? いやいやいやアデル君。ヴァーズ司令も強いですがやはり英雄お二方のほうが強かった⋯⋯」

「何を仰いますか、ローランドさん。ウォルターさんもリリーさんも確かに強いですが、やはり現役のヴァーズ司令のほうが技のキレは凄かった⋯⋯」

「ふー。まったくアデル君は何もわかっていないようですね。わかりました。それでは私が違いについて具体的にお話ししましょう。まずですね、英雄お二方というのは⋯⋯」

「お前ら⋯⋯向こうへ行ってろ、邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」


 いよいよキレたヴァーズが二人をテントから追い出した。



*********************



「すまない、二人とも」

「「い、いや(いえ)⋯⋯」」


 ヴァーズがウォルターとリリーに申し訳なさそうに平謝りする。


「まー確かにお前らのあの戦いぶりを見たら興奮するのもわかるがな。久しぶりに見たが腕は落ちてないじゃないか。正直⋯⋯復帰を考えてもいいんじゃないか? 俺はもちろんだが騎士団や術士団にとってもかなり助かるし心強いと思うぞ? 見てみろよ⋯⋯」

「「っ!?」」


 ヴァーズに促された二人は周囲を見渡してみた。


「お、おい、あの二人って⋯⋯『大陸間戦争』で大活躍した有名な第七騎士団の団長と第一術士団の副団長じゃないか!」

「俺、初めて見たよ! さっき魔獣との戦いであの二人、鬼のような強さだったぞ!!!!!」

「引退してだいぶ経ってるのにあの強さとかやば過ぎだろ⋯⋯っ!!!!」


 騎士団・術士団両団員がウォルターとリリーをチラチラ見ながらコソコソ話をしていた。


「な? お前らの実力を考えたら復帰してほし⋯⋯」

「いや⋯⋯それはできないよ、ヴァーズ」


 ウォルターが苦笑いしながらやんわりと断る。


「あ、あの事件(・・)はお前のせいなんかじゃない! ましてや誰のせいでも⋯⋯」

「これはこれは⋯⋯お久しぶりです、ウォルター()団長」

「おお、ゾイド! 久しぶりだな」


——ゾイド・スペンサー


 第五騎士団副団長。ウォルターの第七騎士団団長時代の部下。緑色の長髪と切長の鋭い瞳が特徴的な男。


「引退して15年——だいぶ田舎生活も慣れてきたようですね、()団長?」

「ああ、まあな」

「⋯⋯チッ」


 ゾイドが不敵な笑みを零しながら皮肉を言った。


 しかし、ウォルターには皮肉が通じていない様子だった為、舌打ちをする。


「おい、ゾイド。お前⋯⋯」

「ヴァーズ司令! 私は今、第五騎士団副団長! 立場的には私の方が上ですよ?」

「フン! はいはい、わかりました。失礼しましたよ、ゾイド副団長様ぁ〜」

「フン⋯⋯まあいいでしょう。それよりも元団長⋯⋯いや、ただの平民のウォルターさん。あまり戦闘で出しゃばるのはやめてください。こちらの連携が乱れますから」

「おお、そうか。わりーわりー⋯⋯迷惑かけちまってすまない!」


 ゾイドは再度、嫌味な言い方をするがウォルターにはまるで通じていなかった。


「チッ!⋯⋯邪魔ですからさっさとこのテントから出てってください」

「わかった。すまんかったな、邪魔して」

「フン!」


 そう言って、ゾイドが苦虫を潰したような顔をして離れていった。


「ったく! あの野郎、第五騎士団の副団長になってからずっとあの調子だ⋯⋯」

「まあ、あいつはあいつのやり方があるんだろう⋯⋯。それに、俺みたいな一平民ごときがこの調査班のテントに入るのは確かに調子に乗り過ぎたかもしれん」

「んなことねーよ」


 そう言ってヴァーズがウォルターの肩を叩く。


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