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019「終結。そして⋯⋯」



「では、さらばだ。少年」


 ゴォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーっ!!!!!


 エビルドラゴンが猛烈な炎を吐き出した⋯⋯俺と倒れている三人に向かって。


 俺は炎が届く直前——神様に意識を転移され、そして『能力』を開放してもらい、再びこの状況の自分に意識が戻った。


 そして、目の前に迫ったエビルドラゴンの炎を、


「フーッ!」


 吐息の『ひと吹き』で無効化した。


「⋯⋯は?」


 バスケルが目の前で起きた現実についていけずにいた。


「今、君⋯⋯何をした?」

「ん? 息、吹きかけた」

「息を⋯⋯吹きかけた? 君は一体何を言って⋯⋯」

「グゥルルルルルルルルル〜〜〜〜⋯⋯」

「ん? どうした、エビルドラ⋯⋯なっ!?」


 バスケルがエビルドラゴンに目を向けると、エビルドラゴンが身を縮めながらジリジリと後ろに下がっていることに気づく。


「な、何を⋯⋯何を怯えているっ!!! お前はBランカーの魔獣なのだぞ?! 魔力量が平民以下の目の前の子供になぜ怯える⋯⋯っ!!!!!!!!」


 この時、バスケルはトーヤの魔力量しか見ておらず、おまけにトーヤがエビルドラゴンの炎をひと吹きで無効化したことについてはあまりに現実離れした光景だった為、バスケルの中では無いことになっていた。その為、エビルドラゴンが本能で『恐怖』したトーヤに対してまったく理解できずにいた。


「行くんだ、エビルドラゴン! 私の命令に従えっ!」


 バスケルは懐から『黒い何かが渦巻く石』を掲げ、エビルドラゴンに命令する。


 すると、その石がドス黒く光るとその黒い石から瘴気のようなものが大量に飛び出し、エビルドラゴンの体を包み込んだ。


 パキッ!


「ぬぅぅ⋯⋯これが最後だったか。まあよい。エビルドラゴン、あの子供をさっさと始末しろ!」

「ゴァァァァアアアアアアアアアアァアアアアァァァァァ!!!!!!!!」


 先ほどあれだけ怯えていたエビルドラゴンの姿はなく、そこには黒い瘴気に身を包み、目を充血させ凶暴性が露わになった魔獣が咆哮を上げていた。


「さあ、遊びの時間は終わりです。今のエビルドラゴンはBランカー程度の強さではなく、すでにAランカーに近い強さと凶暴性が備わってます。こうなるともはや、私でも簡単には止められ⋯⋯ぶぎゃっ!!!!!」


 凶暴化したエビルドラゴンはその鉤爪で一瞬にしてバスケルの首をはねた。


 一瞬——ほんの一瞬のエビルドラゴンの爪だけでバスケルは絶命した。


 辺境伯となるだけの魔力量、それに『闘拳士(グラデュエーター)』『騎士(ナイト)』と両方の戦闘スタイルをこなす実力者であったにも関わらず⋯⋯いとも簡単に。


 バスケルが襲われた原因は『黒い石』の効果が無くなり砕けた為でもあったが、それよりも制御を失ったエビルドラゴンと化したのが致命的だった。まあ、今となっては過ぎた話である。


「ゴァァァァアアアアアアアアアアァアアアアァァァァァ!!!!!!!!」


 狂気のエビルドラゴンは目の前のトーヤを完全にターゲットとしてロックオンしている。いつ飛び出してもおかしくない状態だった。


「お前ももしかしたら⋯⋯たぶん、バスケルの被害者なのかもな。でも⋯⋯」


 俺は狂気のエビルドラゴンに向かって『気迫(オーラ)』を放つ。


 ドン! 


「っ!? グガ⋯⋯っ!!!!!!!!」


 俺の気迫(オーラ)に一瞬、怯んだエビルドラゴン。そして、


「せめて、苦しまないように⋯⋯一瞬で消してやるっ!」


 カッ!


 俺は右手からエビルドラゴンに向けて一直線に光を放った。


 その光に触れたエビルドラゴンは一瞬で蒸発——足だけを残して完全に消滅した。


「⋯⋯終わった」



*********************



「おい! おい、大丈夫か!!」

「あ、あれ⋯⋯お父⋯⋯さん? お母⋯⋯さん?」

「「レナーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」」


 レナは気がつくと、目の間にウォルターとリリーがおりそのまま二人に抱き締められた。


 起き上がった直後でもあったので最初、レナは状況をよく把握していなかったがしばらくして思い出した⋯⋯絶体絶命の状況を。


「っ!? オーウェン⋯⋯オーウェン兄ちゃんは! ア、アリアナ先生も! それに魔獣⋯⋯は? エビルドラゴンはどうなったのっ!!」

「もう大丈夫だ。心配いらない、レナ・リンデンバーグ」

「アリアナ先生!」


 右腕に包帯を巻いたアリアナが声を掛ける。


 傷は三人の中で一番ひどかったが顔色は明るい。


「エビルドラゴンも⋯⋯バスケル辺境伯も⋯⋯全部、終わったよ」

「オーウェンお兄ちゃんっ!」


 元気そうな二人を見てレナは泣きながら抱きついた。


「よくやった⋯⋯本当によくやったぞ、レナ!」

「ええ⋯⋯すごいわ、レナ」

「ありがとう⋯⋯お父さん、お母さん」


 現在、村にはウォルターやリリー、他にもヴァーズやアデル、応援で派遣されていた騎士団や術士団も訪れ現場の被害状況や安全確認、現場調査が行われていた。


 アリアナ、オーウェン、レナの三人は応援にきた術士団の治癒魔術班による治癒魔術で傷も体力も回復し、今は大事をとって休憩室のあるテントへと移動して休んでいた。


——第五騎士団・第六術士団合同現場調査班


「団長」

「なんだ?」

「現場に残された『黒い石』の欠片です」

「っ!? こ、これが⋯⋯あの⋯⋯『愚者の石(フールズ・ストーン)』。本当に実在したとは⋯⋯」

「だ、団長?」

「は、は、は⋯⋯」

「は?」

(はかど)りゅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!!!!!!!」


『団長』と呼ばれた幼女(・・)——第六術士団団長『キャスコ・クゥインスター』がいつもより増し増しの気持ち悪さで奇声を轟かせた。


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