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018「能力開放」



——衝撃の事実だった。


 もし最初に神様クソじじいが忘れずに俺の能力を開放していたら、あの三人はここで死ぬ運命だったなんて⋯⋯。


 ん?


 ちょっと待て?


 俺の能力を開放していたら俺はここにいないから三人を救えなかったと言ってた。


 でも、俺はいま三人の前にいる。能力を解放されなかったおかげで。


 ということは⋯⋯、


「な、なあ、神様。もし、俺が能力開放してもらってさっきの状況にまた戻るってことは可能なのか?」

「ん? もちろんじゃ。それが『救済策』を辞退する場合のもう一つの選択肢じゃ」

「てことは、俺が能力開放して元に戻って三人を助けることも可能なのか?」

「何じゃ? お前さん、あの三人を救いたいのか? まあ、特に問題はない⋯⋯できるぞ」

「で、できるのかっ?!」

「ああ、できる。しかし、いいのか? この世界に戻らず、転生し直せば次の世界は争いのない世界じゃかららお前さんの望みに近いと思うぞ?」

「そんなの今はどうだっていい。ここで三人を救える選択肢があるのならそれを選ばない理由はない。それに⋯⋯」

「それに?」

「あの世界でも可愛い女の子と恋をして幸せになる人生くらい手に入れてみせるさっ!」

「⋯⋯そうか」

「そうだ」


 トーヤの答えに神様がフッと笑みをこぼす。


「⋯⋯ただ」

「ん?」

「その⋯⋯なんだ⋯⋯こんな啖呵切って、かっこつけてあれだけど⋯⋯」

「なんじゃ?」

「その⋯⋯特殊能力ってやつを開放したとしても⋯⋯あんな化け物に⋯⋯その⋯⋯勝てるのかな、て」


 そう、仮にその能力とやらを開放したところで、あの魔獣を⋯⋯そしてバスケルを倒せるのか?


 だが、俺にはその『特殊能力』というやつに賭けるしか⋯⋯。


「プッ! ワッハハハハハハハハハハ⋯⋯!!!!!!!!!」


 突然、神様クソじじいが腹を抱えて笑い出す。


「なっ!? 何、笑ってんだ! この⋯⋯」

「ヒーッ、ヒーッ、ヒー⋯⋯お、お前さんよ。お前さんに与えた特殊能力を開放すれば⋯⋯プッ⋯⋯この程度の状況なぞ⋯⋯何の問題もないぞ? ていうか問題にすらならん。プークスクス」

「え?」

「フー⋯⋯笑った、笑った。お前さんよ、最初に言ったじゃろ? お前さんに与える『恩恵』である『力』はその世界で不自由しないようなものだ、と」

「え? あ⋯⋯」


——————————————————


 何よりもこの転生はお前さんの『過分な非業の死』に対する『対価』じゃからな。その世界で不自由しないように『それなりの特殊な力』を用意しておる。


——————————————————


「思い出したようじゃな。では早速、能力開放するぞ? 能力開放すればワシの言った『問題にすらならん』という意味がわかる」

「わ、わかった」


 そう言うと、神様が俺の背中に周って手を当てた。


 カッ!


「よし。これで開放したぞ。さあ見てみるがいい」

「どうやって?」

「頭の中で『能力を見たい』とイメージすれば勝手に『能力名』と『内容』が出てくる」

「能力を見たい⋯⋯」


 俺は神様の言うようにイメージしてみた。すると、


「うおっ!⋯⋯おお、おおおおおおおおおっ!!!!!!」


 俺の頭の中に『能力名』とその『内容』が浮かび上がった。


「こ、これって、だいぶ⋯⋯いや、かなりの⋯⋯」

「チートじゃろ? どうじゃ? これでワシが言った『問題にすらならん』と言った意味がわかったじゃろ?」

「あ、ああ⋯⋯」


 なるほど。本当に神様クソじじいの言ってたとおりだ。


 これなら、さっきの『絶体絶命の状況』なんて⋯⋯まるで問題にならない!


「うむ。では、改めて聞くがお前さんは『リセットして新たな世界への転生』は望まず、この転生した世界を生き続ける、それでよいな?」

「ああ、それでいい!」

「わかった。ちなみに今、この場所にいる間は現実世界では時間が止まっておる。あと少しならここに留まることができるがここで何かしたいことはあるか?」

「ある! いいのか?」

「うむ。まあ、今回はワシのミスでもあるしな。好きにせい」

「よし!」


 そうして俺は現実世界に戻る前にここで開放された『特殊能力』の扱い方を学習した。



*********************



——数時間後


「もういいのか?」

「ああ、バッチリだ! 今回はあんたのミスに逆に助けられたよ」

「⋯⋯」


 そう。


 神様クソじじいが俺の『能力開放』を忘れるという|ミスをしてくれたおかげ《・・・・・・・・・・・》でアリアナ先生、オーウェン、レナの死ぬ運命を変えることができるのだから。


「では、これでお前さんの能力の開放も終えた。よって初回特典はこれで終了じゃ。今度こそ、次に会う時はあの世じゃ。その時までしばしのお別れじゃな」

「ああ、またな」


 神様が俺に光を当てる。俺はその光の眩しさに耐えきれなくなり目を瞑りそうになる⋯⋯その直前、俺の脳裏に『ある想い』がフラッシュバックした。


(『神様の計らい』を活かしてね)

(っ!? そ、その声は⋯⋯トーヤ・リンデンバーグっ! それに『神様の計らい』て、どういう⋯⋯⋯⋯っ!! ま、まさか、神様のミスって⋯⋯本当はワザと⋯⋯)

(うん、そういうこと。だから三人のこと⋯⋯頼んだよ、当夜)

(っ!! わかった! まかせろっ!!)


 そうして、いよいよ俺は完全に目を瞑った。


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