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015「決断」



「さあ、では行きますよ! 皆さん、私についてきてください」


 校長が皆を先導して前に進む。


 ミーシャは校長先生の横で「大丈夫です!」「アリアナ先生たちが討伐してくれますから!」と周囲を励ますよう声をかけていた。


 俺は俺で最後尾で村人⋯⋯特にお年寄りや小さい子供が遅れたりはぐれないよう見ていた。


「⋯⋯これでいいのだろうか」


 俺は考えていた。


 力がない自分ではオーウェンたちの元に戻っても何もできない。それどころか足手まといだ。だからミーシャと同じ逃げることが俺のできることでやるべきことだ。


 それはわかっている。


 でも、でも⋯⋯、


「トーヤ?」

「っ!? ミ、ミーシャ!」

「どうしたの? 難しい顔して?」

「あ、いや⋯⋯避難場所ってどこだろうな〜、て⋯⋯」

「そっか。トーヤ知らないんだ。避難場所はね⋯⋯」


 ミーシャが明るく振る舞いながら丁寧に教えてくれる。たぶん、俺が不安がっているのを察して無理してるのだろう。ミーシャは昔のトラウマがあるから魔獣が怖いのは俺以上のはずなのに⋯⋯強いな。


「⋯⋯つまり、あともう少し歩けば目印があるんだよ!」

「そ、そうなんだ、ありがとう」

「えへへ。あ、コラー! 列を見だしたらダメだよー!」


 ミーシャは、はしゃぎながら歩いている子供たちを見つけると注意しに行く。魔獣の姿を見ていない子供たちはワイワイしながら歩いているので他の村の大人たちも注意しながら歩いている。


 俺はここにいる皆と一緒だ。


 力なんて何も持っていない。


 だから、


「これが正解⋯⋯だよな」


 さっき、アリアナ先生、オーウェン、レナが話していた内容は聞いていた。応援が駆けつける可能性があると言っていた。だからそれまで耐えれば勝算はあると。でも、


「応援が駆けつける⋯⋯なんて確証はない」


 そう、アリアナ先生が話していたのはあくまで『可能性』の話なのだ。しかし、その事に三人は気づき理解しているようだった。


 つまり、応援が来ようが来まいが少しでも俺たちが遠くに逃げ延びることだけを考えて、三人は魔獣の前に立ちはだかっているのだ。


 それにレナが言ってた⋯⋯「どの道、バスケル辺境伯は皆殺しにする」と。


 だったら、今逃げたところで俺たちも殺される可能性は高い。


「それなら⋯⋯」


 俺はもう一度考える。


 そして、ある一つの可能性を閃く。


「俺には逃げることしかできないが⋯⋯俺でも『逃げること』だけならできるっ!」


 つまり、魔獣の前に出て逃げに逃げて逃げまくって時間を稼ぐことなら俺にだってできる!


 そうすれば、もしかすると本当に応援が駆けつけるかもしれない。少なくともその可能性は上がるはずだ!


「そうだ。魔獣の前に出て逃げながら邪魔をすれば⋯⋯皆が生き残る確率は上がる!」


 俺は迷いを捨てた。


 むしろ、これが最善だと確信した。


「⋯⋯よし!」


 俺は誰にも見つからないよう、そっと列から抜けた。


 そして、さっき通った道よりも村に早く着ける林の中の近道を使って俺は全速力で三人の元へと向かった。



*********************



「トーヤ! もうすぐ目印が見えるよー! トーヤ! トーヤ!⋯⋯トーヤ?」


 ミーシャが最後尾のトーヤの所にやってくる。


 しかし、そこにトーヤの姿はない。


「そ、そんな⋯⋯トーヤ⋯⋯まさか⋯⋯」


 ミーシャは村の方へと視線を向けた。


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