夢 前編
目を開けると、そこはいつもの教室。
そしていつもの席に座っていた。
ただいつも通りではないのは電気がついていないこと。漂う空気が重く、暗い事。
そして...席についているのが自分以外、バケモノであることだった。
姿形が一人?一つ一つ違うバケモノを前に私はただ怖気づくしかなかった。足は動かず、瞬きなどできず、呼吸は困難になるばかり。生きている心地はしなかった。そんな絶望のまま口から出た一言。
「これは......夢?」
その瞬間、バケモノ達が一斉にこっちを向いた。そして隣の席のバケモノが右手を出した来た時―――
目が覚めた。そこはいつもの教室、そしていつもの席。そして寝ていて先生に怒られ、起きた自分を笑っている生徒と、呆れた先生の顔。いつもの学校だ。
「もういい加減やめなよ、また職員室に呼ばれるよ?」
と言う隣の席の女子。名前は憶えていない。
「ごめん。」
「他人事だからいいけどさ...何か怯えていたけど、大丈夫?それに...そのおでこの青色の液体は何?」
何かと自分の顔を触ってみると、奇妙な感触の青い液体がベットリとおでこについていた。
「寝ちゃう前にジュースを机にこぼしちゃったのかも」
自分でもアホかと思うぐらい適当な理由をつけたが納得してくれたようだ。
そしてこの液体は一体何なのだろうか。触ってみた時の異常なほどの接着の強さと感触に、嫌な予想しか起こらなかった。
授業が終わり、玄関から出ようとした時。
「ちょっと待ってよ、佑都。」
声をかけられて立ち止まった。
また先生に職員室に呼ばれるかと思ったが、そこにいたのは幼馴染であり、初恋の人。芽生だった。
「今日は一緒に帰ろうって約束でしょ?」
「悪い、忘れてた。」
芽生は最近彼氏ができたらしい。一緒に帰るときも最近はその彼の話ばかりだ。ただ今日は違った。
「今日ね、授業で寝ちゃったときに怖い夢を見たの。私以外みんなバケモノ...みたいな感じでさ...」
芽生から話された夢の話は今日私が見たものと酷似するものだった。
違った点は私は右のバケモノから手を伸ばされたが、芽生は左からだったらしい。
「俺も全く同じものを見たよ。そして起きたら変な青い液体が着いていた。」
「私も...なんだか気味が悪いね。」
他にもこの夢を見たやつがいるかもしれない。いつも明るい雰囲気で帰っていた芽生とはこれ以外には何も話すことはなく、私はただ夕日に染まった真っ赤な空を見ながら家に帰った。
夕飯やお風呂を済ませ、ベッドについた私は、何かと疲れていたのだろうか、横になって間もなく眠ってしまった。
嫌な予感が的中した。今私が見ているものは今日学校で見た夢と全く同じものだった。周りの席ではバケモノ達が談笑している。もう少し状況を確認するために回りを見た。すると驚いたことに隣の席には芽生が座っていた。芽生もどうやら私が座っていることに気づいたらしい。
ただいつもの芽生と違う。確かに芽生だと分かるが、何か奇妙だ。雰囲気が他のバケモノと似ている。
それもそのはず、足や手にはバケモノと同じ鱗のようなものがビッシリと着いていた。芽生自身はこれに気づいていないのか、慌てた様子を見せない。すると、
ガラガラガラッ
教室のドアが、開いた―――
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この作品は前編・中編・後編に分けて投稿する予定です。