断章三章 二話
明人は目の前を歩くコボルトの大八木と、サラマンダーの船見を見て、なんか子ども向けアニメの主人公になった気分だった。題名はファンタジーフレンズ……。
「大島くん、行けども行けども砂漠だね……」
「そうですね……」
「腹も空いてきたな……」
三人は砂漠を永遠と歩き続けていた。行けども行けども砂漠砂漠。オアシスのようなものがあると勝手に思っていたがそんなものも見当たらず、三人の体力も限界だったが、ふと、サラマンダーと化した船見を見た。
「船見さん、空腹以外大丈夫ですか?」
「あ、ああ、なぜか俺は暑いとは感じないな、逆にちょっと気分が良い」
「なら、やっぱり乗せてもらっても良いですか? 多分俺たちを乗っけて砂漠を走った方がすぐどこかに着きそうな感じしません?」
「え? 大丈夫? 大島君? 燃やされちゃうかも……」
「こんな砂漠でキレる事なんか無いじゃないですか……?」
「じゃあ試しにそうしてみるか」
船見は渋々と言った感じに身体を屈めた。明人と大八木は恐る恐るその背中に乗った。だが――――。
「熱い!! 無理! 乗れない!!」
「あつあつあつつつつ!!!」
二人は乗った瞬間、あまりにも体温が高い船見の背中に驚いて砂漠の地面でのたうち回りだす。船見はあー、悪い悪い、でもどうしよもないわ。と諦めた風に言った。明人は諦めた様に頑張って歩きますかと言い、進行を再開させた。
――――
三人が頑張って歩いていると、ある場所にたどり着いた。そこはコケが生えた石で出来た場所で、入り口のような物が口を開けた生物の様に見えた。
「ここなんですかね?」
「後ろが森だからもしかしたら街へのトンネルかも?」
「もうここしか無いし、行こうぜ」
「船見くんはほんとにチャレンジャーだね」
「あ、待ってくださいよ!」
船見がガンガン進むぜを体現していく中、大八木もニヤニヤしながら続いていき、明人は渋々ついていく。すると奥の方から声が聞こえ出した。
「――――せ!! 放せ! このけだものども!! 俺の腕と足と身体を返しやがれ!!」
「いったん隠れるぞ、二人とも」
船見に言われ、一旦、その場所の外まで戻ると、近くにある森の木の近くに隠れた。すると、暗闇の中から現れたのは、三人の男女で、手の中には体の腕や足などのパーツが収まっていた。
「死体遺棄の現場か?」
「いや、あの生首喋ってないか?」
ワックスで固めたような髪型をした二十代前半くらいと思わしき生首は文句を言いまくっていた。まさかのホラー展開に明人は息を飲んだ。
「おら、さっさと一昨日きやがれ!!」
そう言って足を地面に投げ捨てたのはモヒカンの男で、ガタイもよく、九十年代の不良のようだった。そして、同じく腕を放り捨てたのは、長い髪を前に垂らして目と口がかろうじて見える女性だった。
「神父によろしく」
「おい! てめえら! 俺をなんだとぉお!?」
最後に頭部を放り捨てる銀髪の男。口元の部分が布で覆われていた。その三人が共通しているのは全員が全員金色の目だったということだ。
「おい! 帰るんじゃねえ!!」
そして驚いたのは次の光景だった。三人が遺跡のような場所に戻っていくと、それを追いかけるように足が腕が宙を飛び、最後に頭部が飛び、復活した。
具体的に言うと、それ以外の細胞がどんどん湧いて出るように出現し、切り離された身体のパーツをくっつけたのだ。そのせいか、全裸だが。
男は三人を追いかけようとしたが、その復活劇に夢中で気づかなかった三人だったが、なぜかその入り口は閉ざされていた。というより、まるで入り口など無かったかのように、入り口があった場所に岩が積まれていた。
「あークソっ! ふざけやがって!」
男が悪態をつき、方向転換をするとその場所から離れていこうとした。
「逃がしたら情報源が無くなる!」
「え!? 行くんですか!?」
「船見に任せる!」
「大八木先輩適当すぎますよ」
「僕、今はただのワンさんだからね~」
「二足歩行してるんだから普通の犬ではないでしょ……」
「わんわん!!」
「あ、ちょっと!」
明人が慌てて、あの男の方を見ると三人が隠れている森の木を見ていた。
「今のでバレたろ! 俺は行くぜ!」
「ああ!」
船見は大八木が放った犬のマネでバレたと思い、森の木から出てその男の進行方向を遮った。男は眉をひそめ、馬鹿馬鹿しいと言った風に笑う。
「サラマンダー、まだ生きてたのかよ、犬のマネが上手いねえ」
「俺はサラマンダーではない」
「あ? サラマンダーだろ?」
「今はそうなのか? よく分かんねえが、聞きたいことがある」
「はぁ? 意味わかんねえこと言うなよ、まぁ、いいや、何が聞きたいんだ?」
「そうだな、とりあえず、休める場所を教えろ」
「そうだな……地獄なんてどうだい?」




