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断片三章 一話

断章三賞は、断章二章で異世界転移した明人と船見、大八木のお話です

 

 暑い。男はそう感じた。何かが身体に掛かって気持ち悪いと男は思いながら身体を起き上がらせる。身体に纏わりついていたのは砂だった。身体を汚いなぁと思いながらはたいていく。すると、男は違和感を覚えた。自身の身体が軽いのだ。まるで重りを全て脱ぎ捨てたような気分になっていた。そして、今、はたいていたら触れた柔らかい胸。いや、確かに男にしては胸のような脂肪の塊は元々あった。だが、これは違う。もっと柔らかくて触っていると気持ちいい……。


 「な、なんだこのいやらしい―――ん? 声が……女の子になってる!?」


 男は自身の声が高めの声になってるのに驚いた。そして、男は頭を下げ、身体を見た。胸がある。垂れる髪は茶色。そして、細い手足に綺麗な肌。着ているものもかわいいスカートに赤いブラウスだった。男は理解した。


 「俺、女の子になってるぅーーーー!!」


 「うるせえ!!」


 「あだっ!?」


 男は自身が女性になったのに感激のあまり、叫んでいると背後から蹴り倒されてしまう。男は突然の不意打ちにご立腹したのか蹴った相手を睨むように見上げた。

 だが、見上げなければ良かったと思った。


 「あ、あの……あなた様は……」


 男の目に映ったのは二足歩行の赤いトカゲだった。トカゲは長い舌を伸ばしながらなにやら不機嫌そうだった。


 「お前こそ誰だ!」


 「質問にしつもっ!? すいません、大島と申します」


 質問に質問を返すなっ! とかっこよく言ってやろうとした大島明人だったが、トカゲが口を開き、口内で火球を作り始めたのを見て、すぐに答えた。


 「大島? 大島明人くん?」


 「はい、お願いします、食べないでください!!」


 「いや、俺だよ俺、船見仁だよ」


 「トカゲだったんですか!?」


 「違うわ! 目覚めたらこうなってたんだ!!」


 「ひいいいい!!」


 船見を名乗るトカゲは怒り出すと皮膚から火を放ち、明人の足元に着弾した。砂漠の砂が火で溶けだし、明人は情けない声を上げてしりもちをついた。


 「悪い悪い、スカートの中見えてるぞ」


 「んあっ!? もうエッチいぃいい!?」


 またもやなぜか火球が飛んできて、今度は明人の背後を焼いた。船見はなぜか怒っているようで冗談が通じなかった。


 「な、なんか嫌な事でも?」


 「元が男の奴にエッチと言われる筋合いはない!」


 「ええ、なんか怒りっぽくなってませんか?」


 「確かにコントロールが出来ない……昔に戻ったみたいになにもしていないのにイラついてくる……」


 「昔の船見君はすぐに手が出て大変だったよ」


 「大八木お前も……あ?」


 「なんだい?」


 「大八木先輩……なんか可愛いですね」


「え?まじ?ありがとう」


大八木先輩はなぜか顔が犬のようになっており、四足歩行だった。明人はゲーム知識でこれはコバルトだなと見抜いた。

そして、船見さんは火トカゲのサラマンダーだ。


「なんで俺たち全員、姿が変わってるんだよ……」


「ふむ、僕が思うにあの、未市くんが入れと言われた場所に入ったせいだね」


「んなこた!分かってるんだよ!なんで砂漠に放置されてしかも姿まで変えられて…ファンタジー映画か!」


「なら僕はネズミが良かったよ」


「大八木、まじめに考えろ、これからどうする?」


「大島くんはどう思う?」


「え、ああ、とりあえず…歩きますか?」


「ま、そうするしかないわな…」


異種多用な三人は砂漠を歩いた。一人ではなく三人だっため精神的なダメージは少なかったが、この暑さはじわじわと三人の体力を奪っていく。


「船見くんは暑いの平気そうだし、背中に乗らせてくれよ」


「俺がキレたら真っ先に燃え尽きても良いなら?」


「ちゃんと勘定コントロールしないと!」

 

「ああ、もう!」


船見が起こると船見の皮膚から少量の火がパチパチと音を立てて吹き上がりそうになる。


「また、怒ってるよ」


「なんでだろうな…自分の心が自分のじゃないみたいだ…」


船見は大島の指摘を受け、なんとか自身をクールダウンをさせ、なんでなんだとか、くそっ、こんな体になるなんてなどブツブツ言い始めた。


「……大丈夫なんですか?船見さん?」


「昔よりは?」


「昔、どんだけ荒れてたんですか……」


「荒れてたというより、言葉にも出来ない発散出来ない想いをぶつけまくってたかなあ?」


「なにか嫌なことでも?」


「んー、内緒」


バーでやった時のような態度でかわされた明人は、まだ信頼されているわけじゃないし、仕方ないかと聞くのを諦めた。

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