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第三章 三十七話


 「クロムドア二世か、やつは昔から居る騎士団の中じゃ古参メンバーだ」


 そう教えてくれたのは、風呂に入り、伸びた髪を切り揃え、髭をナイフで剃り、多少の顎髭を残したイグゼムだった。イグゼムが毛で覆われた顔をすっきりとさせた時は驚いた。なかなかにダンディな風貌の男だったからだ。

 現在、レイリー、ダーク、イグゼム、クローバー、テンラは、女性陣の広い部屋で円を作るように座っていた。これからの作戦会議だ。


 「クロムドア二世はどんなやつなんだ?」


 「なぜそんなに気になる?」


 「私の母や大祖父が死んだ理由を知っているかもしれないし、村長の地下にあった人形はダークの持っていた文書からクロムドア二世が作ったものだと確信した、やつはエルフの村に何かしようとしていたんだ」


 クロムドア二世は確実にエルフの村に何かをしようとしていた。そしてこちらが邪魔をして計算が狂い、放火した可能性がある。ダークは下手な推理だがそう考えていた。


 「うーん、実は俺もよくは知らないんだ」


 「同じ騎士団でもあまり顔を合わせないとかですか?」


 「いや、まず、クロムドア二世が騎士団に入団して王国に来くるのは年に数回くらいだったな」


 「逆に何しに来てるんですか……」


 「人形だな、やつは人形をよく姫様に贈っていた」


 ダークはあの不気味な生々しいまるで生きている人間の様な人形を思い出しつつ、それがなんなのか知っているかイグゼムに聞いた。


 「え? さぁな、でもそんな生々しい人形だったかな……普通の小さい綿で出来た人形だったと思うけど、ほら、目がボタンでさ、口を横に縫われた糸が目立つやつ」


 「全然違うな……」


 「でもありゃ、奥さんのおかげだったのかもな、クロムドア二世個人が作ったらダークくんの言う不気味な人形になってたかもな」


 「奥さんがいるのか?」


 唐突な事実だ。話を聞いている限り、かなりの変人だという印象が付いてきたクロムドア二世に新たな真実が浮かんできた。奥さんが居る。下手したら強盗殺人に放火魔の男に陰謀を企てた罪を追加しても良い男は廃墟で奥さんと二人、人形を作っているのだろうか。ダークはクロムドア二世に興味が湧いてきた。いや、最初から湧いていたがダークは気づいていなかった。


 「まぁ、戦争で亡くなったけどな、俺もその当時、まだ騎士団に居たから葬式に出たよ、クロムドア二世はずっと棺桶を見つめてたっけかなぁ」


 「そうか……」


 「とにかく、私たちは元々レイリーちゃんのおばあちゃんに会いに中立の街に行く予定だったんだからそのクロムドア二世っていうやつもその街に居るんでしょ? ならさっさと中立の街に行きましょう!」


 みんなが思い思いにクロムドア二世を考えているとクローバーは元気よくそう発言した。ダークもそれもそうだなと腰を上げ、立ち上がると、レイリー、テンラも続いて立ち上がった。


 「俺はどうすっかなぁ」


 「良かったら付いてくるか?」


 「お、良いのか?」


 「ああ、旅の道連れってやつだな」


 「私も良いわよ」


 「私も構わん」


 「はい! 私は大歓迎です!」


 レイリーたちも了承し、イグゼムは少し考えると腰を上げ、ダークに手を差し出した。ダークはそれが握手だと気づき、握手を返す。


 「これからよろしく頼むぜ、ダークくん」


 「ああ、こちらこそ頼む」


 「で? いつ発つの?」


 「そうだな、もう行っても良いくらいだな」


 「善は急げと言うしな、私はダークが行くなら構わん」


 「テンラはそう言ってるが三人はどう思う?」


 「私も別に良いかな、長く居すぎるとそれだけ発つのを躊躇いそうだし……」


 「私も早くおばあちゃんの顔を見たいので構いません!」


 「なら、俺が断れる理由はないな」


 「よし、じゃあ行くか」


 ダークは全員の了承を得ると、旅館を後にした。旅館のエルフたちがお早いですねと挨拶しに来たのを相手しながら一応、お詫びの印で泊まらせてもらっていたので、お言葉に甘えて代金を支払わずに出ると、エルフの老人が待っていたかのようにダークの前に立った。その表情は少し困り顔だった。


 「どうも、ダークアナライザーさん」


 「おや、あなたは?」


 「わしはこのエルフの村で純潔のエルフの代表に選ばれたオルムと申します」


 「代表?」

 

 「ええ、この村はこれからは共和制にしようと話が着いたところです、ハーフエルフとエルフが話し合って政策や法律を決めていくことになりました」


 次に話しかけてきたのは若いエルフだった。多分、この人がハーフエルフの代表なんだろうと察した。


 「ハーフエルフ代表のオズマンと申します」


 ハーフエルフは基本、若い。ダークは老人と若い人が共に知恵を出し合える良い塩梅の代表同士だなと思った。


 「もう発つのですか?」


 「ええ、俺たちは中立の街に行きます」


 「そうですか、何のお構いも出来なく申し訳ございません」


 「いや、良いんだ」


 ダークは頭を下げるオスマンに手を振り、大丈夫だからと声を掛ける。そして、オズマンが顔を上げたのを見て、お辞儀をした。


 「ではお世話になりました」


 ダークは礼儀よくそう言い、エルフの本村を抜けた。その際、放置されっぱなしの鉄槌を見たが誰にも言及されていないと言う事はダークのだと思われていないことだと思い、ダークはスルーした。あんな重い物を持っていってくれと言われた日にはこの村での永住を考えてしまう。そう、思ったダークだった。

ここで第3章終わりです!

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