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第一章 一話

 明人に設定をしてもらい、ゲームが始まると目の前は砂漠だった。だが、この世界、なぜか温度や砂が当たる気持ち悪さがつきまとい、総馬はすでにこのゲームをやめたくなっていた。

 だが、総馬が何をしても、ゲームから抜け出せず、暑いと思い、脱ごうとした服は着ていた服ではなく、なぜか明人のあのサムネに使われていたダークアナライザーの服だった。総馬は何がなんだかわからず、砂漠を歩き続け、ゲームからでる方法を探した。


 途中、腹が空いたので服にくっついてたバラを食べた。そこまで総馬の精神が崩壊し始めていた。暑さと疲労。出られないという事実に総馬は壊れかけていたのだ。


 「まさかゲームオーバーまでやめられないとか……ん?」


 物騒な弱音を吐きつつも、総馬はある事に気づいた。一面砂漠の土地で、何かが粉塵を巻き上げながら、総馬の方に向かってきていた。


 「まさか人か!?」


 総馬の表情が希望に溢れた。必死に手を上げ、振り続け、飛び跳ねた。


 「おおおい!! 助けてくれ!! 頼むうう!!」


 もうヤケクソだった。どんどん粉塵から現れていく影に総馬は目を輝かせていく。だが、その姿が見え始めた途端、総馬の顔は恐怖に染まった。


 「最早悪夢だな」


 粉塵を抜けて現れたのは人間ほどの大きさの蟻の群れだった。全長二メートルほどのその大きな蟻の群れは勢いよくこちらに向かって進軍しているのだ。

 総馬が今、見えている砂漠の地面がだんだん迫ってくる蟻の集団に覆い尽くされ黒々となるほどの数だった。決断が早かった総馬はその群れに背を向け、尻尾をまくって逃げた。上に振っていた腕を今度は前後ろに必死で振っていく。


 「俺が何したってんだ! 絶対、帰ったらディスクぶん投げる!」


 ゲームに対しての恨みごとを叫びながら、砂漠を走っていき、途中、進路を変えたが、どれだけ進路を変えても、結局は海のようなに広く、飲まれたら骨一本残らないのではと想像させられる蟻の群れは総馬の視界から外れない。


 「ああ! 勘弁してくれ! もうこれで許してくれよ!」


 走るのを諦めた総馬は、蟻の群れに真正面を向くと、勢いよく土下座をした。土下座をしたのは初めてだった。しかも太陽に晒された砂はかなりの熱を持ち、総馬は手が燃える様な痛みに襲われた。こんなとこまでリアルにすんな! と作った奴らに言いたい衝動に襲われるが、策が功を成したのか、蟻たちはそれを見ると急停止し、その黒い目で総馬を眺めだした。動いたら殺されるかもしれない。そう思った総馬は熱を我慢し続けた。少し視線を上げれば、頭が低くなっている状態の総馬の眼前には無数の蟻が蠢いているのが視界に飛び込んでくる。


「ひぃ!」


 小さい悲鳴を上げてしまうが、興奮させないように大きな声を上げないように口に手を当てた。総馬と蟻が目を合わせ数秒か十数秒経とうとした頃、蟻の群れは土下座をし続けている総馬を中心にどんどん左右に分かれ、道の様な物を開けていく。道が出来るとこちらに向かってくる他の巨大蟻よりも少し体格が良い蟻がこちらに向かってきていた。


 「蟻の王様ってやつか……」


 「それは違うわ、私は女王様よ」


 砂の地面に小さいクレーターのような足跡を付けながらやってくる巨大蟻たちの方から声が高い女の子の様な声が聞こえてきた。

 よく見ると、他の蟻よりもガタイの良い蟻の頭上に黒いドレスの様なフリフリを着た褐色の少女が蟻の触覚を掴み、足を放り出しながら座っていた。そして、少女から少し離れた蟻の尻部分にも誰かが座っているがボロボロの色落ちしたローブで姿が隠れており、どんな人物かは分からない。

 久々に人に会えた喜びに打ちひしがれそうになるが興奮を抑えつつ、土下座をやめ立ち上がろうとした瞬間。


 「っ! 頭が高いわ!」


 総馬の行動に憤慨した少女は声を荒げる。すると総馬の近くで左右に分かれた蟻たちが何か液体を吐きかけてきた。吐き出された白い液体は総馬の居る場所スレスレの地面に当たり、砂漠の砂を溶かしていく。溶かされた砂は、ドロドロの状態に変化した。


 「ま、まじかよ!? す、すいません!」


 総馬はその光景を自分に当てはめ、すぐさま土下座をし直した。さすがにゲームだからと言って、あの酸を受け止める覚悟は無い。体調が変調している時点で痛覚があってもおかしくないという判断もした総馬は恐怖で身体を震わせた。

 恐怖に震える総馬の頭の中で疑問がわき始める。リアルな体調不良を引き起こし、登場人物が出たと思えばこんなにリアルな会話ができる上に脅され、なぜか現実でもしたことがない土下座連発。

 実はゲームじゃないのでは、と総馬は判断しかけるが土下座をしたまま目線を上に向けると、視界に現れる巨大蟻という存在が現実じゃないぞと言ってくる。もうどうでもいい、そんなことより誰か助けてくれと総馬は考えるのをやめ、あの女の子を怒らせないよう必死に土下座を継続させた。

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