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第三章 二十六話

 

 ダークは現在、非常に困っていた。敵九人の内一人は倒して八人になったのは良いもののなぜか召喚された武器は石。なぜか石。


 「やぁ!!」


 イーシーの従者の女エルフの剣士が斬り掛かってきた瞬間、意思を投げるも避けられ、足元スレスレの地面に剣の先が突き刺さっている光景が目の前に映るとダークは冷や汗を掻きながら数歩後退した。


 「手厳しいね、お嬢さん」


 「あんたのせいでイーシー様に外されたんです!」


 「なんの話よ……」


 「私もですよ!!」


 声が聞こえた先を見るとダークに向かって火の玉のようなものが迫ってきていた。ダークは慌てて石を投げるが意味なくね? と思った瞬間、熱さが目の前に―――収束して消えた。


 「あり?」


 火の玉が消えた後の地面を見ると投げた石が転がっていたのだが、その石は赤く燃えてるように光っていた。


 「な、なんでよ! もう! あんた変な武器ばっかり使って!!」


 「あんたの使う武器のせいで私たち逃げ出したのよ! それでイーシー様が私たちの様な臆病者は要らない!って……」


 「それは俺悪くなくね!? 逃げたお前らが悪いだろ!」


 「んだとごらぁ!!」


 「今度は男かっ!!」


 今度は従者の男だった。その手には盾と剣を片手ずつ持っており、石を投げても効果が無いと分かり、剣を振るった逆の方に跳んで回避した。


 「食らえ!」


 ダークは回避した瞬間、隙を見つけ、石を投擲するが、やはり盾で防がれてしまった。ダークは舌打ちした。


 「まずいだろ、これ……」


 ダークはピンチだ。この三人捌くだけでも大変だが、背後にはまだ四人も敵が居るなんて考えれられない。考えたくない。ダークはげんなりした。


 「私を騙しましたね、ダークさん」


 「え?」


 するとダークの背後から冷え切った声が聞こえ、ゆっくりと振り向くと、鬼の形相の女性が居た。それは先程噴水のある広場でダークに騙されたナキだった。今のナキに下手な事を言うと殺されそうだと思ったダークはいったん、間を置いて、少し微笑んだ。


 「ごめんなさい?」


 「許しません」


 「……ですよねー……どけどけどけどけ!!!」


 ダークは前を向きなおすと、謎の女性の到来により唖然としていた八人の間を縫って逃げ出した。八人はダークが通り抜けた後、ハッとしてダークの方を見て、追いかけようとした。


 「待ってください、私がやります」


 八人を止めたのはナキだった。ナキは怒りの形相を変えずに逃げていくダークの後姿を睨み続けた。八人はそのナキの圧力に耐えきれず、黙って頷くとナキに全てを託した。



 ――――――――


 「いやいや、まずいだろって、あんなのまで相手にするとか無理! えっと石の数は……」


 ダークは左手に残っている残りの石を視認すると残りは三個だけになっていた。この石は魔力を封じる以外はただの石ころだ。ダークは使い方を誤らないように大事に使おうと決め、テンラが向かった方に行くかどうかを悩んだ。


 「どうすっかな、俺が行ったら全員引き連れちゃうわけだけど……他に抜けれる道は無いし……すまん! テンラ!」


 そうまだ再開を果たせていないテンラに謝るとそのまま坂を脇目振らずに走りだした。


 ――――――――


 テンラはダークに敵を任せ、村長の家に来ていた。

 坂の上の森の頂上に位置した場所にあったその家はやはり木製だが、テンラや大祖父の家よりもかなり豪華で柱の木がツヤツヤになって光っていた。


 「これは不満も溜まるな」


 ハーフエルフの村などという区別村を作ったくせに村長はこんな豪華な家で暮らしている。しかも訴えも全て武力で解決していた。テンラは村長に憎悪を沸かせた。


 「村長!! 村長居るだろ!! 出てこい!!」


 テンラは勇んで声を上げるが家からはうんともすんとも生活音さえ、せず、テンラは頭上に疑問符を浮かべた。


 「もういい! 押し入るからな!!」


 テンラはなんとなしに木製の引き戸を勢いよく引いた。引いたと同時にテンラは一歩踏み出した。


 「お邪魔す―――」


 ―――くちゃ


 「ん?」


 テンラが一歩玄関の中に入れるとテンラの足が何かに濡れた。テンラは目線を下に向けていく。


 「ひっ!? きゃああああああ!!」


 テンラの絶叫が家中に響き渡たった。テンラは目下の物から数歩離れ、しりもちをついた。


 「あ、ああ、あ」


 しりもちをついたテンラの目線の先にあるもの、それは―――死体だった。

 死体は玄関に足を向け、倒れており、腹部から血を流しているようだった。微動だにしない事からテンラは死体だと判断した。


 「ど、どうして……でも村長じゃないよね」


 テンラは死体の顔を見て、そう呟いた。そして玄関の先を見ると、何かが押し入ったように棚や割れた瓶が散乱していた。


 「村長! 村長!!」

 

 テンラは村長の憎しみを止め、中に生存者が居るのではないかと勇気を出して家に踏み込んでいった。

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