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第三章 二十五話


 「あ、あいつらです!」


 「まぁ……」


 本村のエルフが誰かを呼んできたようで、大人しそうな女性の声が聞こえた。ダークが確認のため、そちらを見るとそこには純白のドレスを着た金髪の女性がまぁまぁと手を押さえて笑っていた。その背後に坂が見え、上の方に伸びていた。


 「カナリヤのナキさん?」


 テンラはかなり驚いた顔をして、クロスボウを背中のベルトに挟むとお辞儀をした。ダークはテンラの腰を肘で突くと、テンラはダークの方を見上げた。


 「あの物語を語ってくれた?」


 「そうだ……ナキさん、あなたが獣心共和国の使者ですか?」


 「はい、お元気そうでなによりです」


 ニコッと笑いながら寄ってくるナキ。それを見てエルフたちがざわざわとしだした。それもそうだろう、助っ人に呼んだ人物が外敵と馴れ馴れしいのだから。

 「どうも、ダークアナライザーです、ダークで良いですよ」


 「ダークさん? うふふ、ダークと聞くと幼馴染のセンバを思い出します、黒ですねえ」


 「はぁ、そうですか」


 おっとりとしたナキにダークは苦笑いで返すと、そこにテンラが割り込んできてナキに質問をした。


 「あ、あの、村長居ますか?」


 「そうですねえ、居ますけど……」


 「どうかしたんですか?」


 「いえ、村長が外敵を倒してほしいと頼まれまして……外敵ってどこですか? あなたたちの後ろに居たらしいんですけど……」


 「え?」


 「ああ、ならあっちの方に行きましたよ」


 「え?」


 ダークは自分たちが来た方に指を指すと、息を吐くように嘘をついた。するとナキはお辞儀をし、ありがとうございますと笑って感謝をすると指さした方に向かって行った。

 

 「あ、この大槌は?」


 「さぁ?」


 「危ないですから撤去した方が良いですよ」


 「はい!」


 元気よく挨拶をすればナキはにっこり笑って、ダークに誘導された方に向かって行った。途中エルフがあの! とか違いますよ! と言っていたがナキは大丈夫ですよ、私がなんとかしますと笑って答え、空中に浮くと、どこかに飛んで行ってしまった。


 「なんでもありだな……とんだぞ」


 「獣心共和国だからな、元はカナリヤだ」


 「どういうこと?」


 「知らなかったのか? 獣心共和国の上の連中は全員、元は動物やモンスターの異人種だぞ」


 「なんだよ、それ……」


 「私たちは獣心共和国の出来る前から居て統合に誘われていたらしいが村長が断ったらしい、獣心共和国は特に悪い気がしなかったのかこうしてたまに使者を寄こすがな」


 「なるほどね」


 つまり、あの砂漠の老人もアリの少女もあの体臭がすごい女性も全員、動物なのかとダークは考え、ほんとに人間にしか見えなかったけどなぁと驚いた。


 「さっさと行くぞ、ナキさんはあの坂の上からやってきたんだ、で、村長に頼まれたって事はあの坂の上に居るんだと思うぞ」


 「なるほどな、ほらほら、どけどけエルフども」


 テンラが見せながら歩くクロスボウに怯え、エルフたちは道をあけていく。テンラは並木道を登っていき、ダークはその背後に付いていきながらテンラの耳元に口を寄せた。


 「な、なんだ!? 息がかかってるんだ!」


 テンラは顔を真っ赤にしてそう怒鳴るとダークは驚いて、悪い悪いと詫びるとテンラは、まったくドキドキするだろ……と小声で言った。ダークはそりゃ異性にこんな近寄られたらドキドキするわな、俺も光さんに近寄られたらこんなになったけなぁと懐かしんだ。


 「で、なんだ?」


 「あ、ああ、なぁ、なんかエルフって大人しいんだな」


 「まぁ、もう戦争のせいでほとんど兵士が居ない状態だからな、さっきの門に詰めていた兵士が全部か、村長の家に少し詰めているだろうな」


 「そうなのか」


 「イーシーの言う通り、純潔のエルフが滅びかけているのは本当だからな」


 「そっか、でも俺はそんな所まで気にかけてらんないからな、出来る事はレイリーとお前を自由にすることくらいだな」


 「ああ、それでかまわ―――誰だ!」


 テンラは目の前に怒鳴りつると並木道から九人のエルフが現れた。それはどれも見慣れた顔でテンラと喋っていた男を含めた六人とイーシーの従者三人だ。


 「なんか映画とかのラストシーンに近づいてるって感じ」


 「えいが? それは知らないが村長にあの光魔法を解かれば後はとんずらだ」


 「じゃあ、村長は任せたわ」


 「九人も相手できるのか?」


 「俺だぞ」


 「だからなんだ」

 

 「信じろ」


 その言葉だけでテンラは満足だった。テンラはにっこりと表情を変えると突然、抱き着いた。ダークも抱き着くと頭を撫でた。


 「行ってこい」


 「わかった」


 「行かせるわけないだろ!」


 テンラの進もうとした道にテンラと森で話していた男が前に立ちふさがる。テンラはクロスボウを取り出そうと手を背後に回そうとした瞬間―――鈍い音が響き、目の前の男が後ろから倒れていった。


 「こういうシーンは行かせるのが常だろ? 無粋な男だな、お前」


 左手で石を軽く何個か浮かせ、左手に戻る動作をしながら、右手に一つ石を持ち、そう言い放つダークに八人は目標を変えたのか一斉にダークを見た。

 ダークは不敵な笑みを浮かべ、八人を睨みつけた。


 「ささっと済ませてやるよ! こいやっ!」


 

 


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