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第三章 十六話


 ダーク、クローバー、テンラの三人は急いで森の奥へと逃げていくと道中、エルフの集団と出会ってしまった。


 「テンラ? そいつら誰だ?」


 「えっと、こいつらは……」


 出会ったのは先ほどの六人で、手元に新鮮な肉を持っていた。狩りでもしていたのだろうとダークは思い、その獲物を食い入るように見た。


 「な、なんだよ、こいつ、人間か? 俺の獲物を見てやがる」


 「いやー、良い獲物をお持ちですね? 何の肉です?」


 「あ? うちの本村で育ててる豚だよ、そろそろ弱ってきたから供養のために肉にしたんだって……あんた、エルフじゃないのにエルフ言葉分かるのか?」


 「ええ、俺はイーシーの知り合いで、獣心共和国の者です、エルフの言葉くらい使えますよ、ちなみにもう一人の女性もです」


 こう名乗ったのはイーシーが神聖王国に土地を追われたと言っていたのと、レイリーの村がこの先にあるならこの中は獣心共和国の領土のはずだからだ。きっとここは獣心共和国贔屓に違いないと。イーシーが自分たちに追いつく前に騙して、いったん道を聞こうという判断だ。


 「獣心共和国? あ、なるほど、ならあんたか、最近呼ばれた獣心共和国の使者って? あ、悪い、獣心共和国の人にはお世話になってるから敬語じゃないとだめですね」


 「いえ、お気になさらずに」


 「そんなわけにもいきませんよ、この森を定期的に守りに来てもらってるんですから」


 「はぁ、なら敬語で良いですよ」


 「はい、それでどうかしたんですか? こんなところで?」


 「ええっと、今からこの子たちをイーシーさんに届けようかと」


 「え? イーシーさんならさっきテンラと一緒に行ったんですが……なぁ? テンラ?」


 「途中でどっか行ったのよ、それでこのダー……人とこのクロ……女の人が来て、イーシーがこの人たちと先に戻る様にと」


 「な、なるほど、じゃあ、どうぞ、この先に村があるのでそこイーシーを待つと良いかと」


 「どうもー!」


 なんか怪しい箇所はあったが頑張ったなテンラ! ダークは心の中でテンラを褒めながら、エルフたちに気さくな挨拶をしていき、その場を去ろうとした。


 「あ、一つ良いですか?」


 「ん? ん? なんだね?」


 まさか話掛けられるとは思わなかったダークは変な喋り方で返してしまう。話しかけたのは同じエルフの男ではなく、別の男だった。


 「なんの動物なんですか?」


 「え?」


 初対面の人に何の動物なんですかって聞かれたの初めてだったダークは悩むが、獣心共和国は半獣半人の国だと思い出し、ダークは慌ててエルフの手を握る。


 「あ、ああ! そ、それはね! アメーバだよ!」


 「ア、アメーバ?」


 「そう! アメーバ! もういい? じゃ!」


 ダークは確信は無かったが実際見えないアメーバを知らないであろうエルフにそう言い、案の定、エルフは顔に困惑の色を浮かべており、最後にごり押しで別れの挨拶をするとテンラとクローバーを引き連れ、先を急いだ。


 「ふう、危なかった」


 「さすがだな、ダーク」


 「まったく分からなかったわ」


 エルフたちから距離を取り、安堵の声を上げてそう呟くと、すかさずテンラがダークを褒める。だが、クローバーは何を言っているのか分からなかったのか疑問の声を上げる。


 「エルフ語を勉強しろ」


 「あのね、エルフって数が減ってて絶滅されてるとまで言われてたのよ! そんな生物の言語なんか覚えてる暇ないの!」


 「むっ! クローバー! 私の種族をバカにすると許さんぞ!」


 「あ、ごめんなさい、でもあなた、迫害されてるのによくそんなこと言えるわね」


 確かにテンラは迫害されてる割にはエルフを責めたりはしない。せいぜいがイーシーへの悪口だ。するとテンラは少し照れ臭そうにした。


 「父さんがエルフ好きだったから、私も好きなんだ、イーシーの言っていることも理解できないわけじゃないしな」


 「テンラは捨てられたわけじゃないんだろ?」


 「ああ、父さんが人間で母がハーフエルフだ、元々は父さんの生まれた村で母さんと過ごしていたんだ、そしたら私が子どもの頃、エルフの子なんだからエルフの村にも行ってみるべきだって、母さんは反対してたけど、父さんは私が人間の子たちと仲良くするのに戸惑っているのを知って、血は薄くても子どもの間は外見が似ている同じ種族の子たちと一緒の方が良いって押し切ったんだ……」


 「一度、テンラの家に戻ろうか、だからその良かったら話してくれないか? お父さんのこととお母さんのこと、後はエルフの森の事」


 「分かった」


 それからテンラは昔の話をゆっくりと笑ったり、落ち込んだり、表情をころころ変えながら話し出した。

 それは彼女の悲しい物語―――。

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