第三章 八話
この服は、何らかの理由で家に不在のテンラの父親の物だろうとダークは予測した。ダークには少しぶかっとしたためだ。ダークは父親の事を聞こうとしたが目に見える地雷を踏む度胸は無く、本人が話したら聞こうと胸にそっと疑問を閉まった。
「正直、前の服より着やすくて動きやすいよ、ありがとうテンラ」
「あ、ああ、良いんだ、あ、後、靴も燃えたと言っていたな」
ダークが服を着て感謝の言葉を言うと、テンラは続けざまに渡してきたのはテンラが履いている靴と同じ靴だった。渡す際、少し顔を赤らめていたがそれよりも気になったのはその靴がテンラの履いている靴よりも綺麗だったのだ。
「そんな綺麗な靴貰えないよ、テンラの靴ボロボロなのに綺麗なやつを俺が貰えるわけない、俺は裸足で良いよ」
「この森は蛇や虫が多い、裸足で歩くと危ない」
「うーん、でも……」
そう言われ、ダークは考え込む。
確かに一理あるし、自分にはもう靴の代わりは無い。でもテンラが自分の靴がダメになった時に用意していたものだと思うとなかなか了承しづらい。この段階でテンラはかなりエルフの中で差別されている。小屋もこんなところを使っているし、物も少ない。金銭的にも苦しいはずだ。
「な、なら、これをやる!」
悩むダークにテンラは自分の靴を脱いで差し出した。そして新しい靴を履いた。ダークは面食らって差し出されている靴を見て呆然とした。
「こ、これなら文句ないだろ! 臭くても知らんがな」
「ほんとに良い子だな、テンラは」
「なっ!?」
「女の子の匂いが臭いわけないだろ、ちょっと大きさ的にきついが、どうだ? 似合うか?」
そう言うダークは心境的にネガティブなのは差別のせいだ、なら褒めてやらないとと言う心境で言った言葉だったが、それを聞いたテンラがますます顔を赤くしている。だが、ダークはテンラから貰った靴を履くのに少し手惑い、気づかなかった。
靴はテンラが直前まで着ていたせいか生暖かく、大きさはちょっと小さかったがなんとか靴に足を入れると、テンラに見せた。
「え? あ、ああ、ぴったりだな、足は女のように細いんだな」
「上半身は鍛えられてるよな」
「そ、そうだな、とてもたくましいと思う……ぞ」
「ああ、俺もこんな身体持ててとても良かったと思ってるよ」
「なんだその言い回し? 自分で鍛えたのだろう?」
「まぁそういうことで良い」
「んん?」
ダークの言っていることが理解できないテンラは顔を困惑の色に染めるが、ダークはまぁまぁとテンラの肩を叩いた。テンラの身体が少し硬直するが手を離すと安堵していた。
「男に触れられるのが苦手とか?」
「い、いや、そういうことじゃない、イーシーに触れられると虫唾が走るがな」
「あんなやつ、俺も触れられたくないね」
「ふふっ、正気なやつはみんなそう思うさ、あんなゲスに触れられたくないってね」
「エルフの本村は正気じゃない?」
ダークはそう自然に聞いてみた。するとテンラは寂しそうな顔をしながら倒れた扉があった場所を見つめた。
「ああ、本村は偉いエルフの言う事が絶対だからな、あいつは村長の息子だから偉いんだ」
「どこの世界も偉い奴の息子はやりたい放題だな」
ダークは自身の世界で起きている裏口入学の問題や事件をもみ消すなどの事件を思い出しながらそう言った。
そして、もしも本村閉鎖的な村の場合、イーシーが死ねと言うだけで本村のやつらは死ぬのかもしれないなと思うと怖かった。もしかしたらいの一番に逃げた三人は今頃……
「私はハーフハーフエルフだから本村に居たのは子どものころだけだが、昔からイーシーはやりたい放題さ、私を昔からいじめていた」
「イーシーもクズだが、ハーフハーフエルフ?」
「四分の一だけエルフの血が混じったエルフの事よ、ハーフエルフと人間の混血児ね、さらにエルフの血が薄らいでいるからハーフハーフ」
ダークの耳にテンラじゃない声が入ってくる。その声の正体は物入れから聞こえた。
ダークはあ、忘れてたと一瞬思ったが時すでに遅し、機嫌の悪そうな声がもう聞こえてしまっていた。




