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第三章 二話


 森の中は木漏れ日が木の間から差し込み、涼しい風がレイリーの柔肌をくすぐった。そして耳にはリスや鳥が生活音が微かに入り込んだ。


 ――――――――リスさんは可愛いから殺せないし、鳥さんも獲れる手段がない……どこかに食べれる植物とか木の実があれば良いんですけど。


 レイリーは木の枝や地面をくまなく見てはダークが食べれそうなものを探した。だが、あるのはダークが試してうめき声を上げたキノコばかりだった。レイリーは頭を悩ませた。クローバーには大丈夫と言ったが実際、レイリーは魔力探知と治癒魔法しか使えない魔術師だ。本人にやる気はあれど狩りや食料調達などの任務は向いていなかった。

 だが、そんなレイリーの鼻にわずかな良い匂いが漂った。


 「この匂いはお肉のスープです!」


 思わずそう強く言ったレイリーは精神を集中させ、魔力を辿る。複数か一人か分からないがもしもこの森でスープを煮込んでいるなら分けてもらおうと思ったからだ。


 「複数……七人の微弱な魔力、近くに村でもあるのでしょうか」


 これだけ微弱な魔力は村人のものだとレイリーは確信した。

 基本、どんな人にも魔力はある。だが、微弱な魔力で出来る魔法は無い。どの魔法も魔力をかなり使う。 そして、基本、騎士にも魔術師にも所属していないのは大多数の微弱な魔力を持つ村人か国の住民だ。それでも稀にレイリーのように村人の中からでも連発で魔法を使える魔力の高い者が生まれる可能性もあった。 


 レイリ―は急いで魔力を感じる場所へ走った。森を走っていく内に肉の匂いが強くなる。レイリーの口からよだれが垂れる。ダークにあげるものだが少しくらいはクローバーさんと分けてもバチは当たらないはずだ。レイリーは自身も食べようとさらに足を速めた。そして、焚火の火が見え、レイリーは草むらから飛び出し、その七人の村人に声を掛けた。


 「あ、あの!――――――――え?」


 だが、レイリーは目の前に居た者たちに目を見開いた。そこに居たのは耳が長い人間だった。いや、明確的に言うと人間のようなその生物は通称、エルフと呼ばれるものたちだ。エルフたちは焚火を囲っており、鍋がぐつぐつと煮え立っていた。周りには調理した後なのだろう。血濡れた小型のナイフと剥いだ皮、さらには赤く塗れているロープが焚火の近くにまとめて置かれていた。

 エルフが七人。色白の肌を持つエルフの男性が三人、女性エルフが二人、太ったエルフ、さらには小さい子どもが二人も居た。七人は特徴は違えど、ダークと同等程度の美形だとレイリーは思った。

 すると男エルフの一人がレイリーを睨みつけ、近寄ってきた。数歩遅れてもう一人の男エルフが血濡れのナイフを持って後を追う。


 「――――――――!!」


 「――――――――!!!!」


 「え? え? なんですか!?」


 表情的には怒っているようだがレイリーには何を言っているのか聞き取れなかった。

 そしてレイリーは思い出す。異種族にはそれぞれ専用の言語があるということをおばあさんから聞いていた事を。そしてレイリーはこの地方の言語しか喋れないため、エルフが何を言っているのかわからないんだと気づき、距離を取ろうと後ろにゆっくりと足を運んだ。


 「す、すいません、お邪魔しました!」


 足を後ろにやり、急いで方向転換すると全速力で逃げ出そうとしたが何かに引っ張られ、レイリーは先に進めず、宙を浮いた。エルフがタキシードの襟を捕まえ、持ち上げたのだ。

 レイリーは地に足が付いていない事に焦り、体を揺らして逃げようとするが、エルフはレイリーの襟を持ったまま、まるで猪でも捕まえたかのように焚火の近くにあった血だらけのロープでレイリーの身体を一回りさせ、腕ごと縛るとロープの先端を持って歩きだした。


 「待ってください! 私は怪しい物じゃ!」


 「――――――――!!」


 「何言ってるのかわかりません!」


 「――――――――!」


 「ひっ!?」


 弁明をしているレイリーを黙らせるようとしたのかロープを持っていない男エルフがレイリーの喉に血濡れのナイフを向けた。レイリーは短い悲鳴を上げるとすぐに黙り、肯定の意を込めて首を縦に大きく振った。

 男エルフはそれで満足したのか、ナイフを退けるとロープを持つ男エルフと何やら会話を交わすと残りの五人が居る焚火へと戻っていった。


 ――――――――――クローバーさんとダークさんが助けに来てくれると信じるしかなさそうですね、望みは薄そうですが……。


 焚火でカエルを食いながらダークに文句を言うクローバーと精神的にもろい木に頭突きをしているダークを頭に思い浮かべて望み薄な期待なのかもしれないと思うレイリーだったが、すぐにそんな考えを捨て、心の奥底で助けに来てくれるはずと確信したレイリーは黙ってエルフに引っ張られながら付いていった。


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