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第三章 一話


 レイリーは小さくてかわいい黒髪の女の子。彼女はある理由から別の世界で今、現在隣でキノコを丸かじりしている男の友人の元に暮らしていた。

 だが、ある日、この世界に戻され、その時、近くに居たのが隣でキノコをまるかじりした挙句、腹部を押さえ、うめいている男だった。レイリーは彼ともう一人の仲間の勇者様と共に強敵たちとの闘いを経て成長したと自分を褒めつつ、隣で苦しみうめいている男を介抱していた。

 レイリーは治癒魔法が使え、キノコを食ってうめいている男に向かって手をかざすとみるみる内に男はうめくのをやめ、顔を地面につけたまま安堵の息を漏らした。


 「あの、ダークさん、もうそこらへんのキノコ食べるのやめてくれませんか?」


 「じゃあ代わりの食いものを持ってこい……」


 レイリーの注意をそうやって邪険に扱い、そう文句を言い出すこの男はダークアナライザーと言い、本名は道下総馬なのだが、他の人にはバラすなという意味の暴行を受けてからレイリーはダークアナライザーさんと呼んでいた。さらに名前が長いという事で略称され、短くしてダークさんとなった。彼はレイリーにとって別の世界で良くしてもらった恩人の大島ぁ明人の友人なのだがいかんせん、基礎的な精神力が弱かった。


 彼らはレイリーのおばあさんが住むという村を目指して森の中を進んでいたのだが、このダークという男が食事にうるさくレイリーは困っていた。


 「はぁ、あるじゃないですか、カエルの焼き木が」


 「悪いがあれを平気で食えるようになったらもう元の世界に帰れないことを意味している」


 「でも最初に俺の世界でもカエルって食えるって聞いたな~って言ってたじゃないですか」


 「あのな、レイリー、あれはな、カエルじゃない、突然変異の化け物だ」


 そう言って指さした焚火の火の前で、木で貫かれてあぶられていたのはカエルの様でそうじゃないものだった。形はカエル同様丸いがそれだけが類似点で後は目が五つもあり、さらには身体の下部分にある腹部から死後でさえ、分泌され続けている緑の液体。ダークはそれを見るたびに気持ちが悪いと目を逸らしていた。

 ではこんなグロ生物を誰が獲ってきているのかというと。


 「ほらほらカエルこんなに取れたわよ!」


 そう言い、銀のロングソードに十匹以上のそのカエルをぶっ刺して帰ってきた勇者だ。彼女こそがこのカエルを乱獲してカエルの焼き木という料理を連発していたのだ。


 「あ、ありがとうございます、クローバーさん」


 「ふざけるな、この水女! いくらでも水を出すのは大歓迎だが、なぜそのミュータントカエルばっかり取ってくるんだ! もっと魚とかあるだろ!」


 「は? 魚なんてこんな森の中に居るわけないでしょ! せいぜい沼よ! だから沼に生息しているカエルを獲ってきてあげてるんじゃない!」


 「大体、勇者の証とかいうその剣そんな使い方して良いのかよ!」


 「ある物でやりくりするしかないのよ! いいから残ってるやつ食べてよ! 新しいの焼けないじゃない!」


 「いるかこんなもん!」


 「お、美味しいですよ? ダークさん?」


 ダークとクローバーが言い争っているとレイリーが気を遣ってなのか、ニコニコとそのグロカエルを食べながらダークに笑いかけた。口から溢れている緑の液体が毒々しい。さらにレイリーの小さい口では丸のみ出来ず、頭部が食われ無くなったことにより、残った目玉が支えを失ってドロリと地面に落ち、ぐちゃっと潰れた目玉とたまたま目があったダークは地面から見られている錯覚を起こした。


 「ひいいい!!」


 ダークは情けない声を上げながら、頭を押さえた。クローバーはレイリーに偉い偉いなどと言い、頭を撫で、ダークを情けないと罵倒した。だが、そんな罵倒が今のダークに聞こえるはずもなく、ダークは情けない声を上げたまま、もう嫌だとかなんだこの生活と大木に頭を打ち付けだした。ゆっくりとだが。


 「他の食材を探しに行った方が良いですよね……」


 「えー、なんであんなやつのためにこれ以上、動かなきゃいけないのよ」


 「でも、あれじゃ、倒れちゃいますよ、治癒魔法って傷が治せても空腹や精神も治るわけじゃないですから」


 「はぁ、あいつに一応、救ってもらった恩もあるし、あいつの元の世界の話は意味不明だし、助けられた記憶ないからまったく親身になれないけど……しょうがない、ちょっと森の奥まで探しに行ってくるわね」


 「あ、いえ、今回は私が行きます、クローバーさんはカエル獲りでお疲れでしょうし、他の食材探しに行こうって言ったの私ですし」


 「大丈夫なの?」


 「はい! 私、こう見えて逃げ足だけは速いんで!」


 レイリーは神聖王国から逃げた記憶を思い出しながら得意げにそう言った。クローバーは心配して何度もやっぱりと腰を上げそうになったが、そのたびにレイリーが大丈夫ですからと念押しし、なんとかレイリーはその場を離れた。

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