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断章 六話

 

 その後、男に連れられ、繁華街の南口を抜け、だんだんと店が減り、高級住宅街が見えた。船見はこんな場所に縁がなく、来たことが無かったがその高級住宅街は他の住宅街と比べ物にならないと感じた。

 豪華な庭に大きな洋風な一軒家が立ち並び、まるで外国にでも来たようだ。だが、少し違和感を覚えた船見は男に話しかけた。


 「この住宅街、人の気配が無いが」


 「そうですね、みなさん、出払っているのでしょう」


 男は船見を一瞥せずにさしてどうでもいいことの様にそう答える。船見は住人全員が出払うなどありえないだろとツッコミたくなったがきっとのらりくらりとこの男は避けるだろうと思い、口を閉じた。

 数分、歩き続けるとある場所に辿り着いた。船見は驚いた。目を何度も擦るが目の前の光景は変わらない。さらに言えば船見を連れてきた男は平気な顔で庭を分断したかのような石畳の道を悠々と歩いていった。


 「まじかよ、本気でオカルトじゃねえか」


 船見の言葉通り、そこは他の住宅街の家とは比べ物にならないほどのボロ屋だった。確かに洋風の家で大きいし、庭も広い。だが、家の外装はボロボロで屋根も何枚か屋根の板が剥がれていたり、庭には雑草がかなり生えていた。


 「こっちです」


 止まっている船見に男は声を掛ける。船見は慌てることなく、男の方に歩いていく。たまに雑草が足を舐めるようにまとわりついたがそれだけでもかなりの不快感を船見に与えた。

 やっと家の近くまで行くと窓ガラスに板が打ち付けられているが分かり、船見の中で不気味な感触がまとわりついた。それを船見は払拭しようとした。


 「こんなとこに人が住んでんのかよ」


 「ええ、住んでいますよ、昔からの家柄でかなりの高貴な人物です」


 「悪いが俺は偉い人が好きじゃない、あ、昔の偉人は別な」


 「昔の偉人みたいなものですよ、ここに住んでいる人も」


 「生きているくせに世界の偉人伝に載ろうなんて贅沢なお方だな」


 「アメリカンジョーク似合いませんよ」


 「……そりゃどうも」


 そんなトークをしつつ、男は玄関にあるベルを鳴らした。間抜けな低いブザー音が鳴る。すると中から音が聞こえ、船見はどんなお偉いかたが出るのか玄関を見つめた。玄関のドアが開き、ある女性が顔を見せた。


 「この家に住んでるとは思えないな」


 そう呟いた船見の方を見た女性が軽く笑う。女性はウェーブの掛かった金髪の女性でまるで海外女優のような女性が全体的に薄い赤で染められた貴婦人が着るようなベロアドレスを着こなしていた。


 「どうも、私はケイトよ」


 綺麗な声だった。まるで母親の様だと船見は感じた。それにやはり日本語が上手い。船見はケイトを見ても男を見た時同様に国籍が分からなかった。それがやはり気味の悪い。


 「あの国籍は?」


 「そうね、どこだと思う?」


 「分からないんだ、名前はアメリカ人が使う名前だが、どうにもアメリカ人と断定したくない、仕事柄色んな国籍と会ったがあんたたちは謎なんだ」


 「そうね、そうでしょうね、とりあえず中に入りなさい? ほら、あなたもよ、サイファー」


 「ええ、お邪魔します」


 「お邪魔します」


 外国人の男はサイファーというらしい。かっこいい名前だなとだけ船見は思った。だが、それ以上は何も考えず、目の前の麗しい女性にのみ目線がいった。まるで操られている気分になっていた。

 まるで蜘蛛の巣に誘われるように船見がその家に足を踏み入れようとしたその瞬間。


 ――――――――――何かが割れる音と轟音、何かが肌を軽くあぶった。


 「うおお!? なんだ!?」


 「ケイト! あのクソ女だ!」


 サイファーが叫ぶ。サイファーの頭上の二階があるであろう家の部分が炎上していた。火炎瓶だと船見は理解したがここは日本かと自分の目を疑った。サイファーはケイトの家に入り、二階へ上ったのか階段のきしむ音が玄関まで響いた。船見が戸惑っていると突如、知らない女性の声が聞こえた。


 「そこの日本人! こっちよ!」


 住宅街の通りに黒いワゴン車が駐車しており、窓の外から女の子が叫んでいた。黒髪の清楚的な女性だった。船見は自分が呼ばれていると理解した。日本人は船見だけだ。

 船見はなぜかその女性の元へ行くのにためらいが無かく、雑草が生えた庭を駆けだそうとした。


 「あなた、恋人は良いの?」


 ケイトは火が家を巡っているにも関わらず、冷静に船見に問いかける。船見は一瞬、足を止めたがすぐに動き出し、黒いワゴン車まで駆けた。

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