断章 四話
話の出所をこれ以上、聞いても教えてくれないだろうと明人は分かっていたのでそこでその話は切り上げた。すると大八木は置いてある書類をペラペラとめくり、ある人物のプロフィールを置いた。
「それと不思議な事に、この失踪している社会人のおじさん、最初は社会人だから関係ないと思ってたんだけど、この男、この繁華街で援助交際をしていてうちの大学の学生ともしていたらしい」
虐待の次は援助交際。この男は失踪した方が世のためな気がした明人は嫌悪の目をその男の顔に向けた。男は社会人、浅場二郎と書かれており、中年太りした頭髪が後退しているどこにでもいる冴えないおっさんだった。だが、プロフィールには偉そうな肩書が並んでおり、そんな人物が偉いポストに居る会社は嫌だなと明人は思った。
「この男が失踪したのは一年前だし、関係ないって思ってたんだけど彼の失踪した時、捜査の中で浮かび上がった援助交際していた女性の中に先ほどの兄妹と共に居たという女の子らしき人物が居たんだ」
「少女が援助交際をしていたんですか?」
「住人が少女と思っただけで中身は十六、七ほどなのかもしれない、だが僕が決め手としたのは警察の聞き込みで分かった話で、この男が失踪の三日前に繁華街で銀髪で黒いジャンバーを着た少女と共にラブホテルに入ったという話なんだよ、この街にそんな銀髪で似たような少女が居る確率を求める方が馬鹿らしいだろ? つまりはこの少女と兄妹の前に現れた少女は同一人物と僕は考える」
「なるほど、ではその少女を探した方が良いと?」
「ああ、この繁華街に居るなら見つけやすいだろうしね、他にも長髪グラサンの男だとか黒髪長髪の貴婦人が失踪した人物の周りに居たという話を聞いているが一番場所が分かりやすいのはこの少女だ」
「……まさか幽霊話とかじゃないですよね?」
「ははっ、確かにこう聞くとまるでホラー映画みたいな展開だよね、でもその少女はこれだけ他人の目に触れられているから幽霊じゃない可能性もある」
「ぜひ、生きている人物を希望します……」
明人と大八木はその少女を探す事を第一目標に設定し、風見にかいつまんで説明をしてバーを後にした。店が終わり次第、風見も探すのを手伝ってくれるらしい。後は外にいる船見と三人で繁華街を探し回るしかない。そう思って船見の居る外へ出たが、船見の姿が見当たらなかった。
「あれ? 船見くん?」
大八木がキョロキョロと周りを探っているが船見の姿は見えなかった。明人も近くの店やコンビニを覗くが船見らしき人物は居なかった。スマホを耳に当て、大八木は少し焦ったような顔で早く出てくれと願いながら電話を鳴らし続けていた。
「出ないね、船見くんが約束を投げ出して帰るわけないんだけど……」
「電話に出ないのも不安ですしね……」
明人と大八木は船見の心配をし、手分けをして繁華街を歩き回り、風見を探した。だが、明人には見つけられず、大八木に合流しようとしたが大八木は街に居たキャッチのお兄さんと会話をしていた。
「船見さんならさっき大柄な男と歩いてましたよ、すげー怖い顔して歩いてたんだって声は掛けなかったっすけど、繁華街の南口に行きましたよ」
南口から出ると店がどんどんまばらになっていき、裕福層が住み住宅街が広がる場所に出る。大八木はその住宅街を思い出しながらキャッチに質問をしていく。
「どんな男だったか分かる?」
「馬鹿にしてるんすか? こんな昼間にあんな大きい外国人居たら嫌でも覚えますよー、えーと、オールバックの男であんなでかいスーツあるんだって思いましたね」
「ごめん、ありがとう、あ、女の子は居たかい?」
「いや、居なかったと思いますよ」
「そかそか、ありがとね」
「全然良いっすよー、あ、大八木さん、今度、風見さんと船見さん連れてうちの焼き肉屋来てくださいよ、安くしますから」
「僕は奢りが良いんだけどな」
「ぐえー、勘弁、それは勘弁です!」
「冗談だよ、今度行くよ」
大八木はそれだけ言うと眺める明人を見つけ、駆け寄ってきた。
「大島君、南口を出た住宅街に船見くんは居るそうだ、驚いたことにオールバックの外国人付きだ、君は無理して来なくていいがどうする?」
「いや、ここまで来たら付いていきますよ、なにかあったら見捨てても……なるべく見捨てないでください」
格好をつけられなかった明人に大八木はくすりと笑い、明人の同行を認め、繁華街の南口に向かった。
繁華街の南口に差し掛かった所で黒いワゴン車が二人の行き先を遮った。大八木が警戒したように大島の方に腕を伸ばし、後ろに下がるよう腕を振る。
「待ってください、大丈夫です、私は味方です」
すると中から女性の声が聞こえ、明人はその女性を見ると目を見開いた。




