第二章 三十話
「こんな砂漠と森の境目からおばあちゃんのとこに戻れるのか?」
「はい、一応、魔力の流れが分かる魔法も使えますから、特におばあちゃんなんかは一緒にずっと居たので魔力が色濃く分かるのでどこに居るのかすぐにわかります」
「便利だな、初めて会ったときにクローバーの居た家に魔力があるのが分かったのはそのためか―――そういえば、クローバーはどうした?」
「あ、クローバーさん……」
レイリーの声のトーンが落ちた。総馬は嫌な予感がしつつ周りを見渡すと緑色の何かが砂に埋もれていた。総馬は一瞬、草かと思い無視したが砂漠にあんな色濃い草が生えているわけがないと急いでその埋もれた場所にレイリーと共に行くと案の定、埋もれて死にかけているクローバーが居た。未だに気絶していたが命には別状はないようだった。
引き出すと見事に砂が身体中から溢れ出してきて、下手したら死んでいたなと反省しつつ、レイリーに放置はダメだぞと注意を促した。
「ダークさん助けるのに夢中で放置してしまいました……」
「ま、まぁ本人気絶してるし、大丈夫だよ、俺とレイリーの秘密な」
「だ、大丈夫なんでしょうか」
「バレなきゃどうのこうのだよ」
総馬はおどけた風にそう言うとクローバーを背中で背負う。クローバーの体重がいかほどはわからないが鎧込みのせいか重く感じる。
「ダークさん、足が震えてますよ」
「結構こいつ重くて……」
「悪かったわね……」
「え!? お、起きてる!?」
急に話始めたクローバーに驚いた総馬は振り向いて確認するが目を閉じたままで起きたとは思えなかった。総馬は安堵の息を漏らした。
「じゃあレイリーのおばあさんの家に行くか」
「え? 付いてくるんですか?」
レイリーはここで別れるつもりだったらしい。総馬の言葉に目を見開いて驚いた。
「当たり前だろ、レイリーみたいな子どもを一人でこんなやばそうな場所に置いていけるかよ」
「ほんとですか!? ありがとうございます!」
「おいおい、まさか一人で帰るつもりだったのか? レイリーには無理だろ」
「むっ、私も魔術師の端くれです、一人でも帰ってました!」
レイリーは総馬の何気ない冗談に頬を膨らませ、ふくれっ面をしてそう強がりだした。それを見て面白いと思った総馬はニヤニヤと表情を変えた。
「じゃあやっぱり一人で帰るか?」
「うっ」
レイリーの表情が固まった。事実、レイリーは魔術師だが攻撃専門では無いという感じだ。総馬の知識的に魔術師はどんな魔法でも出来るという認識だがレイリーは探知と回復しか使えないのだろう。魔法なんて使えるとは一切思っていない総馬からしたら充分凄い。
「大島ぁの友人の割に意地悪ですよね、ダークさん」
「俺は大島ぁの友人であって、大島ぁではないからな」
「言い方をマネしないでください!」
「お、おい! 今、クローバー背負ってるから! 無抵抗の人間を―――いてえ!?」
レイリーは意地悪をされた恨みを晴らすべく、総馬の足を思いきり踏んづけるが総馬は怒りではなく、楽しいと思えた。




