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第二章 二十八話


 総馬は自身の足の感覚が無くなっており忘れていたが右足は酷く裂傷しており、見ているのも痛々しかったがレイリーが触れるとどんどん感覚が戻ってくるような感覚になり、総馬は安心すると切り取った布部分をポケットに入れた。


 「ちょっ! ちょ!」


 「ど、どうした!?」


 「いや、なんで私の切り取った服を懐に入れたんですか!?」


 「ん? 懐じゃない、ポケットだ」


 「そんなこと聞いてるんじゃないんです! まさか私の事が好きなんですか!?」


 「暑さで頭がやられたのか? 毒か? 毒のせいか?」


 「いえ、大島ぁが見ているアニメで好きな子の持ち物を隠すのがその好き同士になる秘訣だと言っていました!」


 「聞こうと思って忘れてたんだがその大島ってのは大島明人のことか?」


 そう、聞いた瞬間、レイリーは戸惑いの表情を浮かべたがすぐに口を開き、説明をしだした。明人とどこで出会い、どう生活していたのかを。ただ、どうして明人の前に居たのかとどうしてこの世界に来たのかだけはどうしても教えくれなかった。きっと何かを知っているだろうがもう総馬にとってこ・の・世・界・は・ゲ・ー・ム・で・は・な・い・ということだけが理解できただけで満足しようとあまりしつこく聞くのはやめた。


 この世界は自分たちの居た世界とは違う世界で、自身の姿や武器を出す能力、こうなることを分かっていてあのゲームを彼女の未市光が知っていて渡した可能性。謎は多くあれど、この世界で生まれた彼女は総馬の世界の明人と一か月も交流していた。その事実がこれはゲームじゃないと明確に総馬に打ち付けてきた。


 「あの時も居たとはな、明人に変な事されてないか? いや、されてても気づかない?」


 「い、いえ! 大島ぁには色々教えてもらい、師匠のようなものなのです! ですが私も無知ではありません! 男性のいやらしい目くらい区別が付きます! 大島ぁはそういう目をしていませんでした、逆にさきほどダークさんが私の服をポケットに入れたのがとても恥ずかしかったです」


 「あれは後で毒の成分を調べるのとこんなところで捨てられないからだ! 明人は、まぁ、趣味は趣味だろうし、俺もそんな事しないやつってのは知ってるよ」


 「はい! とても良いかたです!」


 「そうか」


 レイリーの素直な返事に総馬は自身の友が褒められた喜びも入り、明人を通報する考えを捨て、今はなるようになれと思い、ラフィールたちの方を見た。だが、心配することはなく、もうすでに一匹がラフィールの大鎌で首をはねられていた。兵士たちは液を受けないようにきちんと離れており、やはり掛かっているのはラフィールのみだった。

この世界は現実である。アビキダスのリアルな死や自身を襲う痛み、吐き気、体調不良。さらにはどんな会話もリアルタイムで想像もしない答えで返してくる人たち。これは現実だ。ゲームじゃない。

 道下総馬は自身の元の現実から居なくなり、この現実に送られた。その原因は今、考えられるだけで一つ。道下総馬が交際しており、クリスマスの日にゲームを一緒にやる約束をしていた彼女、見市光。彼女が自身を嵌めた。そう思わざるをえない。だが、総馬は光を信じた。彼女のせいじゃない。知っていたとしても何か事情があったのだと。そう、思う事を決めた。


 「――――――――――――――――――!!!???」


 甲高い奇声。地中を這う巨大な虫を老人はアリジゴクと呼んでいた。そのアリジゴクの死骸の二つ目が出来た合図が今の奇声だ。


 死骸にしたのは既に虫の体液が身体を覆いつくした機械の鎧で身を包んだラフィールだった。レイリーが自身の足を治療中にレイリーと相談し、確信したことはこの世界が現実であるという事とあのアリジゴクたちの毒は素肌じゃないと毒を回らせれないということだ。そう分かれば機械の鎧で素肌が一切見えないラフィールは無敵だ。総馬との戦闘で左腕を無くしてはいたが毒を怖がらなくていい彼女は容赦なくアリジゴクを大鎌で斬り裂いた。


 「ダークさん、治りましたよ、ついで腕を出してください、血は止まっているようですが傷をを治します」


 「そ、そこまで? ありがとう、レイリー、でもダークさんって」


 右足の傷があった場所を見ると多少、跡のような噛み跡が残っていたが後は完璧に治っており、足の感覚も戻ってきていた。だが、ダークさんっていうとあの機械の女もそう呼んでいたなと総馬はダークアナライザーというヘンテコな名前からかっこよく略された名前にむずがゆさを覚えた。


 「さっきあの人がそう、呼んでいたので……ダメですか?」


 眉を下げて許可を求めるレイリーにダメとは言えず、総馬は頭を掻いて恥ずかしさを消し飛ばすと納得したように了承した。


 「いや、確かに長いからな、分かったよ、ダークさんで良いよ」


 「ではダークさんって呼びますね! 腕の傷も治りました!」


 「ああ、ほんとにありがとう、あっちも戦闘は終わったようだな」


 総馬は立ち上がるとレイリーと共にラフィールの元へ向かう。ラフィールたちは虫の死骸を調べているようだ。感覚を取り戻したばかりで歩きが少し変になったがラフィールたちの元へ無事辿り着いた。すでにラフィールは機械の鎧を外し、元の黒い鎧に戻っていた。

 

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