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第二章 二十話


 「もうギリギリのようだな、大体、盾だけで持つわけないだろ、だがその盾、とても良い素材で出来ているな、それを上納すれば命だけは助けてやろう」


 「うるせえな、やるわけないだろ、盾を舐めると痛い目見るぞ、俺の手から離れた瞬間、お前らを永遠に襲い続けるからな」


 そう言いながらダークアナライザーは右腕の盾が固定されているバンドのような物を解いていく。


 「戯言を言うな!」


 「く、くらええ!」


 敵兵が一人そう怒鳴りつけ、銅の剣を振ろうとした瞬間、奇声を上げたダークアナライザーは左手で盾を持つと兵士に向かって投擲した。


 「がぁ!?」


 投擲した盾は敵兵の顔にぶつかると敵兵はその場で崩れ落ちた。盾は上空に一度うち上がるとダークアナライザーの手元に戻ってきた。


 「盾をそんな風に使うとは!」


 「これぞ映画のヒーローがやってた技! ………戻ってきたのは偶然だけど」


 最後の方を小さく言いながらダークアナライザーは盾を敵兵に向けた。敵兵たちは距離を保ちながらこちらにじりじり寄ってくる。彼らは盾を持っておらず防げないからだ。

 ダークアナライザーは内心、満面の笑みになった。作戦勝ちとはこういうことだ。


 「う、うおおおお!!」


 盾を振る素振りを見せながら敵兵たちを怯ませていく。だが、そんな事をし続けられるわけもなく、かなりの大きさの盾を振るう素振りだけでも疲れが溜まり、左腕を動かすのも億劫になる。


 「まだ捕まえてなかったのか!」


 そう言ってやってきたのは相変わらず薄い服のままのアビキダスだった。どうやらたった一人を捕らえるのにこんなに時間が掛かるとは思っておらず、わざわざ来たのだろう。だが、ダークアナライザーはアビキダスの到来よりも恐ろしいものがアビキダスの背後に居た。


 「仕方ない、卑怯なやつらには卑怯な手もやむなしだ、撃て!」


 「まじで勘弁!」


 アビキダスの号令と共に背後から撃ちだされたのは弓兵の矢だった。矢は一斉ではなく順番に撃たれていく。弓兵は森の中のためか五人ほどしか居なかったが五本の矢が迫ってくる恐怖はダークアナライザーを釘付けにした。


 「うっ!? がっ!? いっ!? だぁ!? ひっ!?」


 五本の矢は銀の盾に吸い込まれるように直撃するが盾の性能のおかげか全てを中折れさせ、地面に墜落させる。だが、ダークアナライザーは恐怖のせいか矢が当たるたびに情けない声を上げてしまう。


 「くそ、あの盾、銀製か! マスケット銃さえあれば……!」


 悔しそうに唸るアビキダスから出た銃という単語。そんなもんさすがに撃ち込まれたら泣くぞ、死ぬぞとダークアナライザーは涙目になる。取り囲む兵士は二十人、弓兵五人にアビキダス。すでに涙目になるのも無理は無いがダークアナライザーは覚悟を決めて、唸った。


 「うおおおおお!!!」


 「な、なんがぁっ!?」


 ダークアナライザーは盾を守るためではなく、攻撃をしようと平らな部分を持ち、敵兵の頭を殴りつけた。不意打ちを受けた敵兵は銀の塊で殴られ地面に倒れこんでいく。


 「こ、こいつ!?」


 「うおおおお!!」


 他の敵兵が剣を振り払ったがとっさに盾で防ぎ、弾かれた敵兵が無防備になったところを盾を構えた状態でタックルのように突っ込み、敵兵を押しつぶすように地面に押し付けた。


 「げはぁ!?」


 情けない声を上げて伸びる兵士。ダークアナライザーは息切れを起こしながらも立ち上がる。敵兵たちはダークアナライザーの一騎当千ぶりに驚き、近づくのを躊躇ってしまう。


 「くうっ!」


 息切れするダークアナライザーに止めを刺そうと矢が飛んでくるがダークアナライザーはなんとか盾で矢を弾きつつ、左手に力を入れて弓兵とアビキダスに向けて盾を投擲した。

 盾は真っすぐ、風を切る音を立てながらアビキダスたちの方に飛んでいく。アビキダスは瞬時に飛びのき、避けるが密集していた弓兵五人の内三人の身体に直撃させ、ダークアナライザーは三人が倒れた事で出来たスペースに向かって全速力で走った。立っていた兵士や弓兵は戻ってくる盾に警戒を示し、対応できずにアビキダスは飛びのいた際、瞬時に動けず、取り逃がしてしまう。ちなみに盾は戻ってくるはずがない。 ダークアナライザーさえ、どこに行ったのか分からない。

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