第二章 十九話
銀色に光るその刃は容赦なく、クローバーに襲い掛かった。クローバーはその曲がった刃から身を守るため、斬撃をロングソードで弾いていく。だがロングソードの耐久力は微々たるもので受け止めるたびに刃こぼれが頻発していたが善戦していると言っていいだろう。
一方、左手の水の剣でラフィールの機械の鎧に傷を付けようと水をの塊をぶつけていく。ところがダメージはあまり通ってないように思えた。確かに揺らいだり、後ずさりはするが明確なダメージを与えられていないからだ。
ダークアナライザーとにゃんにゃんねこは他の兵士を相手に乱取りを決めていた。にゃんにゃんねこは逃げ回っているうちにまたもや木の上で退避していたが兵士たちは子どもを殺す気はないのだろう。木の下に十人くらいが監視しているだけだ。
ラフィールの助けに行こうとしない兵士たちを見る限り、ラフィールの信頼度は高いことがダークアナライザーは分かった。
「うおっ!? あぶ! ない!?」
余計な事を考えているうちに五、六人の兵士たちに追われ、森の中で木や岩など障害物を利用したレースのようなものが始まっていた。だが、にゃんにゃんねこのように木の上に逃げれるほど身軽ではないし、巨大蟻の時とは違い、アビキダスから盗んだ鎧のせいでかなり重い。追われているせいか脱ぐ余裕もない。これでは捕まってしまうと頭の中では理解していたがダークアナライザーに打開できる策は無かった。
「たぁ!!」
「うおおぉおおぉお!?」
木の茂みから突然槍が飛びしてきた。ダークアナライザーはなんとか避ける。避ける。避け続けて何とか槍のフルコースが終わると茂みの中から十人ほどが現れ、追ってきている連中に加わった。
「なんと素早い奴だ!」
敵の悔しがる声が聞こえる。確かにこの世界に来てから足が早くなっていると実感した事が多い。兵士たちも鎧を付けているダークアナライザーに追いつける気配がない。
だが、余裕ぶれないのも事実。疲労度はどんどん溜まっていく一方だ。
「な、なんか身を守れるものとかあれば!!」
ダークアナライザーは天に向かって叫ぶ。だが蜘蛛の糸が垂れてくることは無い。ただ、ダークアナライザーは切に願った。武器さえあれば戦えるし、身を守れるものでも良い、ほしいと。
すると、ダークアナライザーの右手が重くなった。
「な、なんだ!? 腕首になんか! 重い!」
ダークアナライザーは走りながら慌てて右手を見るとそこにはなぜか丸い銀の盾が右腕に装着されていた。
「いつまにこんな!? でもありがたい!」
盾はかなりの大きさでダークアナライザーの上半身を覆い隠すほどだった。良いことを思いついたダークアナライザーは瞬時に方向転換し、大きい木に背を預け、その盾を敵の方向へ向けた。
「おらっ! どうだ!」
「おお、なんだこいつ! 盾なんかどこに隠してやがったんだ!」
追いついた敵兵士たちは、突然変なテンションになり、盾で威嚇しだしたダークアナライザーに一瞬、驚いたが別にそれで敵兵士が諦めるわけではなく、追いついた兵士たちは腰から剣を抜いていく。
「かかってこいや!」
「盾だけでこの人数を捌けると本気で思ってんのか!?」
「馬鹿なやつだ! 死ね!」
一人の兵士が銅の剣でダークアナライザーに斬り掛かる。とっさに盾でその剣を防ぐと鈍い音を立てて攻撃を弾いた。
「か、硬い!」
「いってえ」
弾いたものは良いがダメージを受けたのはダークアナライザーだった。弾いた時の衝撃が思った以上で腕が少しじんじんしだしたのだ。
「うおお!」
「くらええ!」
威勢の良い敵の攻撃がダークアナライザーに降り注ぐが銀の盾は傷つかずに銅の剣を弾いていく。弾かれ敵は後ろに態勢を崩して倒れるがすぐに立ち上がり、距離を取る。ただ、そのたびに腕が痺れ、ダークアナライザーは腕の内側の皮膚を摩る。
「いや、これ持たない、腕が限界だ、これがクソゲーってやつか」
盾を手に入れ、威勢が良くなったのも束の間、思った以上に蓄積されるダメージにダークアナライザーは息切れを起こした。




