第二章 四話
クローバーは王城を後にし、家族と従者、更にはその武門の子弟関係にある者たち、街の人々とお祭りを開き、クローバーは従者三人と馬二頭に食料や水、地図などの必要な物を入れた袋を結び付け、自分たちは歩きながらの移動を選んだクローバーは国を出て、二日後、ようやく遥か遠くの砂漠に足を踏み入れた。だが、突如クローバーに災難が降りかかった。
まず、砂漠に行くための森に入り、そろそろ砂漠に出ようとした頃、一人の従者が金を持ってとんずらをした。
スキンヘッドが目立つ男の従者だったが昔からサボり魔で、めんどくさい事をクローバーに任せるという従者としてはあるまじき行為を平然とする男だったが、戦闘能力は高かったので許していた。だが、今回ばかりはクローバーも怒りに燃え、ロングソードを八つ当たりの様に砂漠に叩きつける。
「あの髪無し野郎! 国に帰ったら殺してやる! 絶対殺す!」
「まぁまぁ、クローバー様? どうせ砂漠でお金を使う事なんてありませんよ、きっと」
「……ふう、それもそうね、水や食料もこの馬に積んでるわけだし」
「はい! まだ私や彼が付いていますから!」
と言ってくれた女従者は、残った男従者と恋に落ちたという理由で目的の砂漠にある村に着く前になぜか馬二頭を持ち去り、逃げて行った。かくして、クローバーは身に着けていた装備以外を失いつつも、村に入村した。
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「私、めちゃくちゃ可哀想じゃない!?」
自身の生い立ちを思い出し、泣きながら叫ぶクローバー。彼女の話をボロい家の中で謎の緑の液体が入った鍋を囲んで藁の山に座りながら聞いていた総馬は納得したようにうんうん頷いた。
「ああ、なんか、ちょくちょく脚色が入ってたけど、なるほどな、そんな世界観なんだな」
「脚色なんか入れてないわよ!」
「お前が勇者なのは認めるが、人望が厚いは嘘だな、死にかけてるやつに水ぶっかけたり、そんだけ裏切られてるやつが人望が厚いとは思えん」
「あんた話聞いてた? 私は辛い仕打ちを受け続けて人に気を遣ってる余裕なんか無かったのよ、それに裏切られた件については私が悪いとは思えないわ」
「ていうか、お前の従者の行動のせいでなかなか荒んだ国なんじゃないかと邪推するんだが」
「あいつらは甘やかしすぎたのよ! 帰って見つけたら海に沈めるわ! うちの国の海は凍ってるからすぐには出れないんだから!」
この時、総馬は少し目をそらしていた。その逃げた二人の行方を知っているような気がするからだ。あれは確か、蟻の少女に言われたセリフだ。
『お前のその畏まった態度に興味が湧いたけど、途中でやめるなんて興覚めね! でも私に興味を沸かせた褒美として、命は救ってあげる! さっきの馬に乗った男と女のように何も言わずに逃げ続けて文句を言ってくるようなら瞬殺だったけど、今回はそこで私の軍勢が通り過ぎるまでその恰好で居るなら許してあげるわ!』
ここのセリフだ。ここのセリフに二人の所在が……。総馬はセリフ一つ一つを丁寧に呼び起こしていく。
『さっきの馬に乗った男と女のように何も言わずに逃げ続けて文句を言ってくるようなら瞬殺だった』
うん、でも関係は無い気がする。ちょっと確かめてみるか。総馬は少し疑問をぶつける。
「ちなみに居なくなったのは?」
「え? 男は四日前、忌々しいゴミ男女は二日前かしら」
「俺が出会ったのは二日前だけど、まぁ、気のせいか」
「どうしたの? 何か知って―――」
「知らん」
「そ、そう」
こういうのは黙っていた方が良い。無駄に悲しみにくれることなど無いのだ。総馬はそう思い、心の中に押しとどめていく。今頃その二人は雪国で綺麗な雪原に囲まれているはず。きっとそうだ。そういうことにしておこう。そう、決めつけ、クローバーを見つめる。
「ていうか、その話だとまだ今日に繋がらないんだが」
「それは今から話すのよ」
「長いな」
「旅の話なんだから短い方でしょ!」
クローバーは文句を言う総馬を叱りつけるとコホンと一度咳き込むと話始めようとしたが、クローバーはある事に気づく。もう一人の存在だ。ここにはもう一人居るはずだ。
「そういえばレイリーちゃんは?」
「そこで寝てるぞ」
「え!?」
すると、クローバーは辺りを見渡してレイリーを発見する。レイリーは藁の束の上に寝転がり、スース―と寝息を立てながら眠っていた。クローバーは起こそうとも考えたが寝顔が天使のような顔で起こしづらく、諦めて総馬の方を向いた。
「だから長いから」
「あんただけでも聞きなさいよね!」
「そんな事よりこの緑色は食えるのか?」
「一応、味は美味しかったわよ」
「はぁ、さいですか」
誘拐されている村人が居るにもかかわらず本当にこんなことをしてていいのか疑問だったが、クローバーの話としては放っといても平気そうなので彼女の話を聞きながら少し仮眠でもしようかと考える総馬だった。




