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第二章 一話


 道下総馬は砂漠を歩き続け、その際、巨大な蟻に襲われつつも、凛としたくさい匂いのした女性の言う事を信じ、歩き続けた結果、すぐに着くと言われた街には一切、着かず、やっと着いたと思えばそこはゴーストタウンだったという踏んだり蹴ったりな状況だったが、この街でようやく一人の少女と出会った。


 総馬と少女は自己紹介交わした。少女はレイリ―と言い、服装のことやレイリ―こそなぜここにと聞こうとも思ったが、そんなこより水だと総馬はなるべく穏やかに聞いた。レイリーも総馬の服装を見て何か言いたそうにしていたが、我慢したのかキョロキョロと周りを見渡した。


 「水は残念ながら私は持っていないのですが、この村のどこかに水場があるはずですよ」


 「どこ? なぁ!? それはどこだ!?」


 「あ、あのですね、えっと、この村の魔法源は……」


 天から降ってきた蜘蛛の糸を手繰りよせんばかりの勢いでレイリ―に迫る総馬。貴族のような顔から出るガラガラの声、さらにはその焦りっぷりにレイリーは狼狽しつつも両手を砂漠の上に置いた。


 「見つかりました! あの住宅街の奥の一軒にありますね! たぶん、この村の魔術―――あ! お兄さん!」


 少女の説明を半分まで聞いた総馬は居ても立っても居られず、そそくさと反対方向を向き、その指定された家に何度目かの最後の力を振り絞った駆け足で向かっていく。少女は追いかけようとするが、足が異常に早い総馬はすでに廃墟と化した商店街には居らず、住宅街にまで入り込んでいた。


 「あの人、早すぎです!」


 レイリーはそう文句を吐くとと後を追うように走り出したが、少女が住宅街に入った頃には総馬は一番奥の家屋に入ろうとしていた。


 総馬がどうしてこんなにも足が速いのか疑問に思うレイリーは武器を持っていないことを確認するため、ローブを上げてもらった際に見えた貴族のような恰好を思い出した。

神聖王国の貴族が調子に乗って偵察に出てきて、供回りとはぐれでもしたのかと少し呆れも出ていたが、あの男の口調や態度、そして、何日も水を飲まずとも行動できる体力。神聖王国騎士団のグレヴィレアの騎士の様な貴族と騎士を兼ねている男かもしれないとレイリ―は想像したが、やはり態度と口調が粗暴なせいでなかなか断定は出来ない。


 少女は男を疑問視しながらも、不意にどこか明人に似た雰囲気というか匂いがする気もした。というかあの男はあの格好と名乗った道下総馬という名前、飛ばされた場所に居合わせた結果から考えて――――レイリーは考えを巡らせ、ある答えを導きだそうとした瞬間、信じられない物が目の前に映った。


 「げぼおおおおお!!」


 突然、総馬が家の中から弾き飛ばされた様に屋外の地面に叩きつけられていた。ただ、不思議なことに、大量の水と共に飛び出したのだ。総馬のローブは背中の布部分が水で固まった砂がべっとりと付き、悲惨な状況になっている。

 そんな状態になった総馬は口から水を零しながら自分の喉に押し込み、泥と水に濡れたローブを脱ぎ捨てると屋内を睨みつけながら叫んだ。


 「水をくださいって言っただけだろうが!」


 「あげたじゃない!」


 総馬の文句に答えるように屋内から出てきたのは白いローブを肩まで被った緑髪の女性だった。年は十六から十八くらいで片手持ち用のロングソードを差した鞘が腰からローブを突き抜けて見える。ローブの隙間から見えるのは銀の胸当て、その下に赤いシャツのような服が見える。それに下半身は硬そうなスカート、足は銀の長い靴で隠されていた。


 「ふざけんな! 確かに飲めたよ!? でも飲んだっていうか開いてた口に流し込まれたんですけど!」


 確かに総馬の喉は潤いを取り戻し、ガラガラの声は普通の声に戻っていた。だが、やはり声は戻っても言動と顔が不釣り合いだ。険しい顔で女性を非難する総馬に女性は顔を歪め、総馬を睨む。


 「あんたが水をくれって突然入ってきたから、様子見てもおかしいから急いであげないと思ったらあれしかなかったのよ!」


 「嘘つけ! 水をくれって言った瞬間、あいよってすげえ適当な返事しながら水出したよな!? しかもこっち見ずに腕だけ向けて! あんた寝転がってじゃないか!」


 「もう! 細かい男は嫌われるわよ! それにこっちだって疲れてんのよ! 村人攫われてどう助けようか悩んでたんだから!」


 「攫われた!?」


 そう驚いたのはレイリーだった。レイリーは総馬と女性が言いあっている中に割り込み、女性の方を向いた。女性はしまったと言わんばかりに口を押さえたが、諦めたように口を開いた。


 「まぁ、いいわ、まず、自己紹介ね、私はイントラル王国のアイン・クローバー」


 「私はレントの村のレイリーと言います」


 「レントの村って神聖王国のと獣心共和国のちょうど境にある村よね、中立の街の近くの」


 「はい、ほとんどの村人は獣心共和国を贔屓しているのでここは獣心共和国だと言い張りたいとおばあちゃんは言っておられましたが」


 「ええ、十年前まではそれを主張する運動が盛んだったわね、まとまりかけていたという話も聞いたわ」


 「ですが、今の神聖王国のせいで……」


 「あー、ごほん」


 「なによあなた」


 「いや、あの、今は村人の誘拐の……」


 「ああ、そうだったわね!」


 そうだったわねで済ませていいのか!? しかもこの会話まったく理解できない! ゲームプレイヤー放置のゲームすぎないか!? と総馬は心の中でシャウトする。総馬に理解出来たことはレイリーという少女の村が奪いあいの目当てになっているということだ。

 だが、今は村人の安否の事を話した方が良いはずだ。目先の事からコツコツが大事とは言わないが今はそうした方が良いと感じ、二人の会話を断ち切ったが正解だったと総馬は安堵した。断ち切られた二人も本題の話をしないとと思ったのだろう。さきほどの話をやめ、村の話に戻し始めた。

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