3・サクッと成人して18、旅立ちの時きたる
15歳くらい
「では、大人になる前の研究として、戦闘面におけるマナのことをまとめてみました」
マナは凶悪で獰猛、強靱な筋肉を持つ通常の人間では太刀打ちできないモンスターに対抗するための貴重な技術です。体内の魔力の素を内面と表面に向けて広げ、活性化させるんですね。魔力の素は正式にはファンタジーの素、だそうです。ファンタジー的超絶アクションバトルを起こすための素みたいな物でしょうか。
マナをまとう事によって身体能力は飛躍的に向上し、運動エネルギーをいい方向だけ増加させ悪い方は打ち消し、皮膚や鎧の強度を高めることが出来るんです。
「鎧で防御が上がった」のに雑魚から「皮膚を攻撃されてHP1しか食らわない」のはこのため。さすがにHPという存在はありませんけど。手から出血したらほっておけば失血で動けなくなります。
武器も極めて鋭くそして強固になり、ひのきのぼうやなまくら青銅の剣でオーガを一撃で殺すことも可能。すでに述べたように斬撃を衝撃波の様な形で飛ばすことも出来るようになります。
総じて接近戦は魔力の素を加工したマナが重要。マナがあるからゲーム的展開が起こせるんです。
弓や魔法も、的をターゲットして魔法弾や矢を誘導するのにマナを使います。乱戦時に正確に命中させるためにはマナの鍛錬は行った方が良いでしょう。
「以上です、ご清聴ありがとうございました。」
ぱちぱちぱち
「さすがだな。マナは戦闘以外にも肉体労働の時の身体能力向上なんかにも使われている。魔道設備のメンテナンスでもマナで全身を覆って魔道設備からの誘魔を防いでいたりもするぞ。使い方次第で色々と応用が利く。」
「さすがリンカだなー」
「これで身体が大きければねえ、顔も綺麗なのに。」
「聞こえる聞こえる」
きこえてるよー…身長はモンスター疾患のせい、かなあ…18までと24までに伸びれば良いけど。顔は…ありがと//
―頭が7つあるんだから栄養が持って行かれるのも無理ないかもねー―
―あんまり小さいと積載重量が減っちゃうじゃないですかやだー―
―あんたはなにと戦ってるの―
―TPRG的には30L程度のリュックサックが限界でしょうか。20kg持てれば良い方―
―ダンジョンで熟成させた魔法のリュックをもってこぉーい!!―
ま、まだ決まったわけじゃないから…
成人、そして18の卒業の時
「えーこれで諸君らは3歳から18までの一貫教育を終えることになる。ほとんどの者がこれから仕事をして生計を立てていくだろうー…」
「はーこれで華の学生生活も終わりかー」
「もっと制服を楽しんでおけば良かったね」
「しかしリンカが大学へ推薦されずに、スズカが推薦なんてねえ。あいつ金持ちじゃん自分の金でいけよー」
「リンカ潰しって噂があるわよ…」
「あはは、まあ私はここからは生計を立てないといけないしね、大学で自立はちょっと難しいんじゃないかな。」
「くっそー、俺たち私たちのリンカがなー」
「結局何に魔法を使いたいか決められずにここまで来ちゃったんだから、その差だよ。」
というわけでみんなが生まれながらに左手についてある「携帯情報端末」PDAをだして記念撮影をとったり、愛の告白大会などをして名残惜しみつつ解散となりました。
はい、
というわけでリンカです。これから自立して頑張っていきます。まずは家に帰って荷物整理、そして家を閉じて出立ですね。
家はここA8番学園島から4回渡って2回魔道船に乗った所にあります。E233番通常島に鎖で連結されている小島ですね。残ってると良いのですが。今はまだ学園生ということで船代がかからないので早く乗ってしまいましょう。
びゅーん
やってきました。お墓とぼろいバラック、畑だったもの。風化だけはしましたね。母に祈りを捧げてから家の中をさらって、放棄してしまいましょう。ここに戻ることは多分ないです。
…お母さん、私は無事に卒業できました。ここはもう離れますが、見守っていてください。
母は私を産んだときに、モンスターを出産するときに確率で起こるモンスターアナフィラキシーショックでなくなってしまいました。父は直後に失踪。そこから在籍中は保護される学園に入れたのは奇跡ですね。
私はモンスター疾患でも重く、発狂してしまう人が多い「複数思考併存」で、しかも前代未聞の7つが並列して動いてます。7人でわいわい騒げるので結構楽しいんですよ。
話がそれた。それでは家をさらっていきましょう。見事にぼろい家具しかありません。ありませんが…このど真ん中の床下には…地下へ続く階段があって…そこには…
最小限度の旅立つセットが置かれていました。誰がこうしてくれたのかはわからないのですが、こうしてくれた人がいて、3歳前の記憶なんですけどはっきりと覚えてるんですよね。不思議。
まず、リュック。身体が大して伸びなかったのでちょっと大きいですね、中身は救急キットに少々のコッヘルもあります。魔道チェーンソーの刃の部分をワイヤーで連結させた、ワイヤーソーもありますね。15cm各の金属板もありました。ストーブ兼焚き火台というらしい。ふーん?これにコッヘルを置いて調理するのかな?枝とかに火をつけるための小型のファイアスターターなるものもついてきました。火花の魔法じゃ駄目なのかな?
このポーチは…なんでしょう、液体と…丸い物体、それにかぶせるような設置物。説明書がありますね。えーと…アルコールストーブ…何でも燃えるように設計してあるけど、推奨はメタノールかエタノールだそうです。ど、どこで燃料入手しましょう…
これ入るのかな…ああ、リュックの横にスナップボタンで止めるんですね、止め方も書いてあった。左利きだから右にくくりつけよう。使うかわかりませんが、ここ廃棄するので持ち出せるのはみんな持ち出しておかないと。
これは…小型の手斧?楔と軽めのハンマーもある。…森の中の行動+薪割り?危ないからリュックの中に入れておこう。
折りたたみナイフもある。凄い頑丈で凄い切れそう。腰に忍ばせておこう。食器は…多分ユロルが間に合うはず。
なんかこう、キャンプしなさいっていわんばかりの品揃えだね。助けて貰った人の好みかな。
これが例の武器と持ち運びセット。これはナイフですね。これなら携帯を許されているサイズかな。刃渡り18cm、20cm超えていないしダガーじゃない。切れそうだなあ、ああ砥石もある。至れり尽くせりだ。
そしてこれがPDWってやつですか…おもちゃの銃みたい。本島に記憶通りに凄いのかな。そもそも銃は大して凄くない、飛ぶ速度が遅いし防御魔法で簡単に遮断できる。接近しての暗殺用の武器だしなあ。ま、細部を手入れしてから使ってみよう。通常時はリュックかなー。
持ち運びセットは、腰ベルトに大きめのポーチがついてるもので、ヒップに大きなカバン。サイドに回しても支障が無さそうです。
な、何を入れれば良いんでしょうか。これまた説明書が、
ナイフ、水筒、ライト、ピストル、カートリッジが必要なものはそのカートリッジ、救急キット、投擲物など。
なるほど、ピストルってありましたっけ…これかな。PDWってやつと似てますね。片手で持てるようになった感じ。
また説明書が。良くこういうの朽ち果てませんねえ。
えーと、
PDWとピストルは、単発、3点射、フルオートが選べるので状況に応じて使い分けること。
セーフティを外さないと撃てないので気をつけること。
自分の魔素を高速で射出するため、魔素が勢いよく減るので注意すること。
救出時の能力を素に作ったので、最初は弱い。改良して使って欲しい。
直射エネルギー砲もしくは曲線榴弾砲は基部だけ作ったがそこまでしかできず、故障してるのでどちらかに改良して使って欲しい。
ふーん。理解は後にして、基部を探しましょう。見たことないのにわかるのかな。
これ、ですかね、グリップ。ぐいっと握ると…あばばばばば私の魔素を吸いました危ない!!!………何もおこりませんね、助かった。これが基部で間違いなさそうです。
後は…ないかな。…この使わなかった200ユロル、きっとこの人が入れてくれたんだろうな。本当に、ありがとうございます!行って参ります!!
ということで地下室を完全に封鎖し、家を壊して学園等島までもどって魔術師派遣組合にお邪魔しました。
「こんにちはー初めての利用なんですけれども。」
「おお、リンカちゃんか、私は受付のザッピーよ 。今日はどうしたんだい。」
「ええ、路銀がないので派遣組合に登録して生計を立てようと思いまして。」
「ええ!リンカちゃんが!?なにかあったのかい?」
「うーん、大学に推薦が通らなかったのと、やることが見つからなかったから仕事にたどり着けなかった、ですかね。」
「そうかそうか…派遣組合は場所によって当たり外れはあるけど、大半の魔術使いがここで食っていくんだ、リンカちゃんも食っていけるさ。じゃあ登録をするかい。」
「はい、お願いします。」
簡易PDAにPDAをかざして、ぴろーん
「よし、これで組合員だよ。組合は実績が物を言うからね。あまりにも酷いと見せしめとして島制圧作戦に強制参加させられるから気をつけるんだよ。」
「はい。ええと、今受けられる派遣先はありますか?」
「そうだねえ………いきなりCは荷が重いしDだよねえ………Eじゃ劣悪すぎるなあ………お、ここだ。D163 番開拓島。派遣額はつき100ユロルだけど、色々さっ引かれて75ユロルって所。開拓村だから悪いようにはされないさ、常に人手が必要だからね。」
のうないかいぎいいいいいい
―よくね?―
―田舎もんの排他意識が怖い―
―他にはないの?―
「ええと、他もみさせてもらえますか?」
「んーとね、他は…モンスター疾患不可なんだよ。後はEやFそれ以下になっちゃう。ここもモンスター疾患可だから、厳しいとは思うんだけど…研究とかは実績が全然足りないからね。」
―ここ―
―しか―
―ない―
―TPRG的にイベントが起きそうです―
「わかりました、ではそのD163番島に派遣してください。D開拓島に合う洋服はどこで買えますか?」
「はーい、登録するねっ。ぴっぴー、これでよしっ、服はB2番標準島で売ってるよ。あそこは元々は低ランクの島だったからねっ!」
というわけでそろそろ切れる学園特権を利用してD開拓島に合う洋服を買い、D163番開拓島に向かう魔道飛行船を待っていました。
するとそこにとても優雅な赤髪美女が
「あらーこれはリンカさんではありませんか。どうしたんですかここで。」
「あ、-えーと、スズカさん、こんにちは。派遣先のD163番開拓島にいく時間待ちをしているんですよ。」
「ま!さ!か!学園!出身の!!天才の!!あなたが!!魔術師派遣組合などという!!!雑魚が集まる所で!!!はたらくのですか!!!!!」
目が笑ってる……
「ええ、稼ぐ当てがなかったもので。出だしとしては順調ですよ。受け入れてくれるまでに時間はかかりそうですが。」
「ああ、そうでしたね、あなたは!も!ん!す!たー!でしたわねー!」
ぐ、ぐさっとくる…学園の外はこういう人多いよね…
「私は生きていければ。スズカさんのその羽根は疾患としてみられないんですか?」
「わーーーーーーたーーーーーーーくーーーーーーーしーーーーーのーーーーー羽根は天使!天使の!羽根なんでございますの!!!モンスターとは違って神の恩恵!!!汚らしい疾患とは同一視しないでもらえますか!!」
「す、すいません」
「わかれば良いんですの、わ・た・し・の・ほ・う・が・う・え・ということをくれぐれも忘れないように。ではごめん遊ばせ―おほほほほほほほほほほほほほほほほ」
嵐のような人でしたね…あってる部分もあるので完全否定がしにくい所もなんとも…
―処す?―
―処す?処す?―
―処す―
やめてー殺伐な方向に思考を進めないでー。
というところでD163行きに連絡する魔道飛行船が来たのでのり、どっきどきの初派遣が始まるのでした。