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以前、亜夢が見た、超能力者だけに見える幻影を仕掛けて置き、カメラで反応を記録するのだ。非科学的潜在力があるかを知る手法であり、超能力者避けでもある。大型商業施設は干渉波だけではなく、そういう対策が併用されることが多いのだ。
「えっと……」
亜夢が説明すると、半ば聞いた時にアキナはホームセンターへ入っていった。
「アキナ、話は終わってないんだけど!」
「あたし調べたことあるから。それより、おトイレまにあわないのっ!」
あっという間に、アキナの姿が見えなくなってしまった。
亜夢は不安になった。
美優と亜夢もホームセンターに入り、ゆっくりと店内を回りながら、フードコートに近づくと、亜夢は天井からつるされている装置に気が付いた。
カメラもその装置から少しずれた位置から同じ方向を向いていて、間違いない、と亜夢は思った。亜夢は思い出したように、化粧室へ行くような独り言を言って、美優の手を引いて戻る。
「あそこ、あそのの天井にある。フードコートに入る時に油断する、と思っているのかしら」
亜夢は指を上に向けて美優に伝える。
「あれか…… 緊張する」
「問題は先に行っちゃったアキナよ。このことをアキナに伝えないと。アキナ、一番近いトイレににはいなかったし」
「メッセージ送っとく?」
「うん」
美優がスマフォでアキナに幻影装置の位置を知らせた。
「あっ、既読になった」
「どこにいんのよ、あいつ」
そのまま美優が入力して、アキナの居場所をといかける。
「1Fに降りるエスカレータだって。あそこじゃない?」
見ていると、アキナが降りてくる。
二人が駆け寄る。
「どうしたの? 亜夢も美優も」
さわやかな笑顔でそう言った。
「アキナが心配だったんだよ」
「え~ 大丈夫だよ? 何が見えても、怖がらなければいいんでしょ?」
「……簡単に言えばそうだけど」
亜夢は思念波世界を使って、以前見せられた足元がなくなるような幻影を、二人に伝えた。
「へぇ。こんなだったんだ」
「こわいね」
「まあ、何かくる、と思って準備しておくしかできないわ」
三人は互いにうなずいた。
「手をつないでいれば、どうかな」
「感覚から思念波世界を共有するの?」
「うん」
それなら矛盾した世界を送り込んでくれば互いに比較して、すぐわかるし、一人が実世界を認識できなくなっても、思念波世界で実際の風景を送って補完することも出来る。
「それ、いいね。やろう」
亜夢が先頭になって三人が手をつないでフードコートの入り口を通過する。
いきなり、亜夢にはホワイトアウトするようなブリザードが吹き始める。美優は、大きな隕石が正面衝突してくる状況に、アキナは床に大きな穴が開いてそこへ落ちていくイメージ……
『見えてる?』
『先進んで』
亜夢が一歩、一歩、自然な雰囲気で入っていく。
亜夢のブリザードはなくなって、クリアな世界が見え始めた。
亜夢が後ろを向いて、美優とアキナの周りの状況を思念波世界で送る。
『ありがと』
二人も表情を変えずにフードコートの中へ入ってきた。
「ふう……」
「さあ、なに食べようか」
「ラーメンかなー、ヒカジョの周りっておいしいラーメン食べれないし」
「私はミスバーガーがいいな。県内に一軒も無くて泣いたもん」
アキナがラーメン、美優がバーガー。亜夢もどちらかだとは思っていたのだが……
「じゃあ、私は両方食べる」
「えっ、結構量多いよ?」
美優が言う。
「けど、ミスバーガーはヘルシーだし」
「じゃ、ラーメンどうすんの?」
アキナの問いかけに、亜夢は固まる。
「いいの! 食べたいものを食べるの!」
軍の飛行場につくと、強烈な超能力干渉波で亜夢の顔が歪む。
「あ、キャンセラーは車から出る前に外してね」
「はい」
アキナも亜夢と同じぐらい、つらそうな顔になる。美優もはずすと、それなりに影響を受けたように目を閉じる。
車を止めると、中谷が先導してヘリの方に連れていく。
乗り込むと今度は、VRヘッドセットを着けさせられる。
「西園寺さんは初めてだっけ」
「?」
「えっと、航空機や相当の乗り物に超能力者を載せる場合、VRヘッドセットを着けてもらうことになっているんだ。航空法の……」
「わかりました」
美優はさっさとVRヘッドセットを付けた。
亜夢とアキナは、中谷に接続されないように余った接続端子に指を置くと、VRヘッドセットを着けた。
「あれ…… 俺、警戒されてるね」
亜夢たちは干渉波のノイズで苦しみながらも、楽しいVRの世界に入った。
そこは、いつもの何もない真夏の島、そして海だった。
準備が出来ると、ヘリは離陸し、ヒカジョのある場所までの飛行を始めた。
ヒカジョの校庭上空に来た時は、もう日が落ちていた。
さすがにVRのなかでも動きつかれた三人は、肩を寄せ合って眠っていた。
「乱橋くん、西園寺くん、森くん! 起きて!」
中谷が叫ぶ。
ヘリはすぐ引き返すつもりでプロペラを回している。
「起きて! 起きないと……」
その瞬間、電気が走ったように三人の体が震えて、ヘッドセットを外し始めた。
「?」
中谷は不思議そうな顔をする。
一番先にVR装置をはずした亜夢が言う。
「ダメですよ。変なこと考えたら。すぐわかりますからね」
「えっ、何もしてないよ?」
「しようとしたじゃないですか」
中谷は顔を真っ赤にした。
三人がヘリを降り、ヘリに残った中谷に手を振った。
「ありがとうございました」
「元気でね!」
中谷が扉を閉めると、三人は急いでヘリから離れた。
三人は小さくなっていくヘリに手を振っていた。
翌朝、アキナは寮監に呼び出された。
学校で美優と亜夢がしつこくたずねると、やっとアキナが口を開いた。
「子猫、つれてきちゃったの」
「え~」
亜夢はアキナのホームセンターでの行動からこんな事じゃないか思っていた。
やっぱりホームセンターに寄りたがったのは、子猫の為だったのだ。
「けど、個人で飼ったら両側に違反するからダメだって。だから寮監のところで飼ってもらうことになった……」
「そっか。けど、離れ離れにならなくてよかったね」
「うん」
アキナは笑った。
学校につくと、クラスの中で人だかりができていた。
亜夢が一人の肩を叩いてたずねる。
「新しい転校生だって」
「へぇ」
亜夢がそう言うと、さっと人が捌けて亜夢と転校生の目があった。
「!」
転校生はイスラムの女性のようで、黒い布を頭からかぶり、目だけが見えていた。
亜夢はイヤな予感がした。
テロに加担していた宮下加奈、三崎京子が『マスター』と呼んでいた目だけを見せている人物…… もしかして……
「……ニカーブっていうらしいよ」
「えっ?」
亜夢は何を言われたか分からなかった。
「あの頭から被っている布のこと。イスラムの女性は外に出るときはあんな恰好なんだって」
突然、その転校生と目があった。
『よろしく』
思念波でそう言われた。亜夢が思念波世界を覗くと、やはりそのニカーブを付けた姿が現れた。
『……』
返事をしないでいると、思念波世界からはじき出された。
転校生は亜夢を、じっと見つめていた。
この娘がマスターだとしたら……
亜夢も転校生をいつまでも見つめ返していた。
おわり




