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憂いっ子メグと幽霊ネコたち  作者: 瀬賀 王詞
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今村沙也加との対決


 大滝議員の騒ぎがあったものの、淀川中学校は復活することが議会で決まった。ショッピングモールも場所を変えて建設されることになった。メグとネコたちは、とりあえずホッとした。


 そんなある日、今村沙也加が淀川中学校のグラウンドに現れた。


「あいつがきたよ!」とジュンがタケシに報告した。


 ツトムが臭い息を吹きかけても無駄だった。


「倉内メグ!」と沙也加は叫んだ。


 沙也加は、何度かメグの名を呼んだ。


「まだ来てないけど、メグちゃん・・・。」とユウ。


「俺たちで相手してやろう。」


 タケシたちは、グラウンドに出て沙也加の前に姿を現した。


「ずいぶんいるじゃない、野良猫ちゃんたち。」と沙也加はネコたちを見回した。「あなたがボスなの?」


 タケシをまっすぐ見つめている。


「メグちゃんはまだ来てない。」


「そう・・・。それは残念ね。今日は、友達を連れてきたんだ。メグにあんたたちがいるように、わたしにもいいお友達できないかなーって思ってさ。陰陽師とかいう怪しい人に聞いてさ、祈祷とかめんどくせーのをしてさ、そしたらこんな友達が現れたんだ。」


 沙也加の横で小さな渦巻きが起こり、黒い煙がうねりだした。そこから現れたのは、鋭い目と牙を持ったオオカミだった。ネコたちは背中の毛を逆立て、一斉に威嚇のうめき声を上げる。タケシは危険を感じ、ネコたちを一カ所に集める。


「抵抗しても無駄だよ。この友達は幽霊ネコが大好物だってさ。」


「ツトム、メグちゃんを呼んできてくれ!」とタケシは叫んだ。


 ツトムが走り出すと同時に、オオカミが襲いかかってきた。



 弱いネコは逃げた。


 追いつかれた者は首を一撃でかまれ、息絶えた。タケシとシゲルはオオカミの尻尾に食らいつき、弱いネコをかばう。


 ネコバズーカ砲を打つが、オオカミは平然としている。十数匹でオオカミを囲み、一斉に攻撃をするがすぐに振り払われた。ネコの犠牲は膨らみ、タケシも前足にケガをした。


「もういいよ!」と沙也加が叫ぶ。


 オオカミは赤く染まった牙を舐めながら、沙也加の元に戻った。


「メグに言っといてよ。あんたのおかげで、本当のわたしが目覚めたってね。」



「その必要はないわ!」


 金網を飛び越えたメグは、倒れたネコたちを抱き上げた。メグが頭を撫でると、ネコは息を吹き返し、目を開けるとメグを見てにっこりと笑った。


「メグちゃん!」


 ネコたちはメグの周りに集まった。メグは、死んでしまったネコを生き返らせ、ケガをしたネコの傷を消した。


「おまえ、何者なんだ?」と沙也加は目を丸くする。


「沙也加さん、わたしも、あなたのおかげで、本当のわたしに目覚めたの。わたしは、小さいころから、悲しみを敏感に感じてしまって、なにもできなかった。でも、今は違う。悲しみを怒りに変えて、怒りを愛に変えて、わたしには不思議な力が宿った。わたしが太陽だとすれば、あなたは月・・・。いわば陽と陰。あなたとは、生涯、戦う運命にあるようね。」


 沙也加の目が光ると、オオカミが走り出した。メグはオオカミの牙を避ける。


「メグちゃん!」


 ネコたちは、懸命に声援を送る。


「おい! 俺たちもあいつをやってけるぞ!」とシゲルが叫ぶと、ネコたちは沙也加を目がけて突進する。


 強力なネコバズーカをお見舞いすると、オオカミが戻って来て沙也加を庇う。


「シゲルくん! 変身するよ!」とメグ。


「よしきた!」


 両手を広げたメグにシゲルが飛び込むと、メスネコ・メグに変身。


「ネコバズーカ、もう一回ね!」


 メグを先頭に、オオカミ目がけて突進。ネコたちはひとつの巨大なネコ玉になった。オオカミも突進したが、あまりにも巨大なネコ玉に恐れをなしたが、時は既に遅く、オオカミはネコ玉に飲まれた。



 オオカミの姿は次第に薄れ、やがて消えた。後には、黒い煙が渦を巻いたが、それもついに風に流された。



 人間に戻ったメグが、座り込んだ沙也加の背後から声をかけた。


「憎しみだけでは、大きなパワーは生まれない。現実の世界も、漫画やドラマと同じように、愛が勝つし、正義が勝つの。もしそれがあなたにわかるのなら・・・わたしと友達になってください。」


 振り返ってメグの瞳を見つめる沙也加の瞳から、憎しみの光が少しずつ消えていく。


 沙也加の頬から大粒の涙が流れた。


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