大滝議員の正体
大滝議員の家は、もちろん、淀川中学校、つまり幽霊ネコ学校だ。
大滝議員の頭部を担当したのはユウだった。タケシたちは、今村都議会議員に対抗する議員を、議会に送り込むことに成功したのだった。
「第一段階は成功だ。」とタケシが言った。
夕暮れ時には、このところ毎日会議が開かれるようになっていた。
「しかしユウ、『よろしくお願いしますにゃー』は、お前らしくないな。」
ユウが照れ笑いをすると他のネコが笑い出す。
「まあ、そんなこともあるよ。長時間人間に化けるのも大変なんだ。それにさ、政治家なんて今まで話したこともないしね。」
そう言ってユウはため息をついた。
「確かに、ストレスはあるな。ユウ、もう少し頑張ってくれ。」とタケシが優しい口調で言った。
メグがやって来て話し合いに加わった。
「莉子さんにもこの話をしたの。」とメグは言った。「この地域のみなさんに話をして、ショッピングモール建設に反対する組織を作ることにした。」
「それはもうできてるよ。」とツトムが言った。
「それなら、中学生もそれに参加して、もっと反対運動を活発にする。」
「やっぱり、ショッピングモールに賛成する人が多いだろうなあ。」
チョークで遊んでいたソウスケが言った。
「そこなんだ。」とタケシ。「大滝議員に化けて都議会に潜り込んだところまではうまくいったが、問題はその先だ。ショッピングモール建設は、一度議会で可決・・・、つまり、作ることが決まってる。これをひっくかえすには、まず住民の反対運動だ。」
「署名活動だね。」とアキラが言った。
「ショッピングモール建設賛成派が多いだろうから、なかなか大変だね。とにかく、反対派をどれだけ増やせるかだよ。淀川中学校の卒業生に呼びかけるのもいいね、タケシさん。」
「シンジ、いいアイデアだ。幽霊ネコ総出で、人間に化けてくれ。人間の反対派に合流して、人間と一緒に反対活動をする。ユウ、大滝議員は、明日、田沼啓一と会うんだったな。」
ユウは、両手に頭を乗せて寝ていたが、ゆっくりと顔を上げた。
「なにを話せばいいんだろ、タケシさん。」
「そうだな・・・。」とタケシも後の言葉が続かない。「メグちゃん、なにか考えがあるかい?」
ぼうっと考え事をしていたメグの髪の毛を、夕陽が赤く染めている。
「そうね。」
メグは立ち上がると、疲れているユウを膝に抱いて、頭を撫でた。
「田沼啓一がどんな人かわからないから、明日は面接のつもりでいきましょう。いい人で切れそうな人物だったら、秘書にしましょうよ。」
「ユウが疲れてるから、もうひとりくらい補助をつけるか。どうだ、ツトム、大滝議院の秘書は?」
「ええ? やだぜ! 国会なんてさ。」
「国会じゃないよ、都庁だよ。」とユウ。
「わたしが行くわ。」とメグがさらっと言った。
「でも、メグちゃん、どう化粧したって中学生にしか見えないよ。」
メグはアキラを抱きかかえて言った。
「童顔だっていいたいわけ?」
「ちがう! 身長、体重、バスト、ヒップ!」
メグは、自分の身体をよく見てから言った。
「変身するわ。シゲルちゃんと合体してから、みんなと合体すれば大人の女性に化けられる。」
ネコたちは全員うなずいた。
その夜、メグと合体するネコの抽選会が行われた。




