莉子の仲間
タケシとツトムは駅のコインロッカーを探したが、それらしいモノは見つからなかった。
「タケシさん、あれ・・・。」とツトムが言う。
ツトムの視線の先を辿ると、防犯カメラが見える。
「防犯カメラか・・・。」
駅の警備会社に入り、防犯カメラ制御室に行ってみる。二十を越えるモニターテレビに、構内の様子がリアルタイムで映し出されている。そのひとつに、コインロッカーに向けられたカメラがある。
「ビンゴっ!」とツトムが言った。
「コインロッカーだから、あるに決まってる。どうやってビデオを見るかだな。」
制御室にはふたり警備員がいる。勝手に機械を操作するわけにはいかない。
「夜まで待つか。」とツトム。
「だって、夜もいるだろ、ひとりくらい。」
「ダメか・・・。」
「成りすまし作戦でいこう。」
「だって、シンジたち、『主任』になってるよ。」
「夜まで『主任』をやらんでもいいだろ。主任さんが独身だったのはほんとに不幸中の幸いだった。」
「親も亡くなってたしね。考えてみたら、ちょっとかわいそうな人だよね。」
「もうその話はよしてくれ。ツトム、今日の夜勤の人を調べよう。顔写真はないかな。」
その夜、シンジたちは中田という警備員になりすまし、防犯カメラ制御室に潜入した。木曜日の夜から金曜日の朝まで、録画されたビデオを再生する。倍速で見るにしてもけっこう時間がかかった。
「木曜日の夜じゃないね。深夜は飛ばしていいんじゃない?」とツトム。
他の警備員も時々出入りするから、姿は消したままだ。
「待て、わからんぞ。四倍速で見よう。シンジ、頼む。」
眠そうな目でタケシが言った。
中田警備員は、周囲に気を配りながら機械を操作する。
「タケシさん、ユウたちを連れてくるぜ。交替でチェックしよ。寝ちゃいそうだぜ。」
「そうしてくれ。」
夜だから、メグはいない。録画ビデオをチェックすることだけ伝えておいた。
ツトムがユウとソウスケを連れてきたとき、タケシは寝ていた。
「まったくもう!」とツトムが言った。「シンジたち、不良少女を知らないんだからさあ。シンジも、起こせばいいのにい。」
「そんな、無理だよ。タケシさん、気持ちよさそうに寝てるのにさ。わかるよ、だいたい。不審なやつっていうのは。」
明け方、結局全員寝てしまっていた。中田警備員は同僚から突然起こされ、危なくネコに分解するところだった。
「なにやってんだよ、もう!」とお互いに文句を言い合う。
中田警備員の勤務は七時までだった。
「時間がない。十六倍速でみんなで見よう。」
金曜日の明け方で間違いないだろうと推測し、六時から七時を二倍速で見る。
「いた! あれだ!」とツトムが叫んだ。
女子生徒の制服が二つ見える。
「取り巻きは三人いたけどな。ふたりか。」
ひとりがコインロッカーの鍵を取り出し、お金を入れ、紙袋を取り出した。
「間違いないな、あのなかに、お金が入ってる。シンジ、顔を大きくできないか?」とタケシ。
中田警備員はビデオレコーダーを操作する。
「このふたり、昨日学校にはいなかったよね。」とツトム。
「お金を持って逃げたとか。」
コインローカーから制服が遠ざかる。その行く先を確かめようとするが、はっきりとはわからない。
「もういいだろ。もうすぐ七時だ。」とタケシが言う。
中田警備員の勤務は終了した。シンジたちは分解し、ネコに戻って部屋を出た。