くどい感情
どくどくとした心の中のしこり。
それを何度も何度も取り払おうとしたが、なかなか消えずそこにい座っているしこり。
あいつを見るたびどくどくとした黒いものへと変化し、そして最後には綺麗にキラキラ光るものになる。
あいつが笑うたび、話すたびに全身からそのしこりが飛び出し、あいつにぶつかる。
でも、あいつはそれに気づくことはこれからも無いのだろう。
伝えなければいけない言葉があるのに、あいつを前にすると素直に言えず、ただ笑って口を閉ざしてしまう。
けれど、今日こそは、今日こそ笑顔で笑って言わなければいけない。
俺はゆっくりと幼馴染のあいつの肩を叩き、そして花が咲いているあいつの顔に見た。
今、俺はちゃんと笑っているだろうか。
「結婚おめでとう」
するとあいつはいつも以上に笑顔の花を咲かせ、元気いっぱいに「ありがとう!」と叫ぶ。
綺麗におめかしした花嫁もにこにこと照れたように笑っている。
幸せというたくさんの感情がそこに存在していた。
俺の入る隙間なんか、どこにも無い。
そこから離れ、遠くから二人を見た。
俺は今、笑っているだろうか。
幼馴染で親友で初恋相手の結婚式で哀しみにくれること無く、心からお祝いの言葉を届けることはできただろうか。
一筋の涙が頬を伝い、重力に任せて地面に落ちる。
そして、それは留まることなくどんどん溢れ出てきた。
俺が女だったら、もっと積極的にいっていたらこの未来は無かったのかもしれない。
けれど俺は男で、自他ともに認める奥手な奴で、どう足掻いたってあいつが俺を好きになる確率なんて少しも無いし、いまさら後悔しても何も起こらない。
涙を拭き、笑顔を浮かべているあいつと花嫁を見る。
俺が離れたことあいつは気づかず、花嫁や友人たちと楽しそうに話している。
”ずっとずっと、愛しています”
伝えることが出来なかった悲しい言葉を心で何回も呟いた。
それはいつものように届くことは無く、より大きなしこりとなった。
「おーい!」
あいつの声が遠くから聞こえた。
「写真撮るから早く来いよー」
後悔としこりを心の中に隠し、笑顔を作る。
「今行く!」
俺は今、ちゃんと笑っているだろうか。




