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花屑  作者: 霧香 陸徒
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第9話「内部紛争勃発1」

3日目。

雨が降った。

私達は野外訓練等も無く、室内でゆっくりする事にした。

昨日出撃したばかりだし疲れていたのかもしれない・・・


ジュンさんが大尉に昇格した次の日。


 私は昨日の事を考えていた。


 昨日、晩御飯が終わってから大尉と少し話をした。


 この世界の事、TAMの事、花屑の事、皆の事。 ・・・・・・本当は大尉の過去の事が聞きたかったのだけど、その話題になると彼はとても複雑な顔をしてしまうのでどうしても聞き出す事が出来なかった。 変わりに私の事もほとんど喋ってはいない。


 私は過去の記憶がとても曖昧だった。 自分の両親の事も朧気に覚えているだけで、実は両親の顔さえもハッキリと思い出せなかった。 だけど、良く歌ってくれた母や父の面影は覚えている。 思い出は・・・基本的にソレぐらいだった。


 何か・・・雨では無く、そういう雰囲気の事で何かあったような気がするのだが・・・。 ある時を境に思い出せなくなってしまった。


 痴呆症だろうか?


 ・・・・・降り続く・・・雨では無く・・・雨では無く・・・



 ザー・・・・。


 昨晩から雨が降り続いていた。 朝目が覚めても外が暗いとは思ったが・・・。


 ドスン!

 

 私はまどろむ目を擦りながらベットから滑り落ちていた。


 痛い・・・。


「何やってんだよ寝惚けてるのか? 芽衣」


 少・・・大尉が私を見下ろしながら歯を磨いていた。 部屋に簡単な洗面所があるが、そんな私物を「私の部屋」に持ち込まないで欲しい。


 大尉は昨晩も私の部屋に泊まった。


 もう魅夜の奇行はバレているのだが、大事を取って自室には向かわなかったのだ。


 いくら部屋に鍵を掛けても魅夜は簡単にピッキングしてしまうので意味が無い。 初日も勿論鍵を掛けていたのに・・・。


 大尉は昨日の作戦から皆からとても慕われた。 だから別に魅夜だけが危険だとは言えない。  ・・・昨日の様子だとちゃーこだってもしかしたら・・・。


 私は、そういう事とは無関係なので彼を受け入れたというだけの話だ。


 昨日は大尉は床で寝たようだし・・・。 私がどれだけベットで寝てと言っても聞かなかった。 なんと頑固な人だろう。


 それにしても・・・大尉は昨晩すぐに寝ずだったから、ちょっと心配だった。


「・・・・・大尉。 体は痛く無い?」


「ん〜昨日はやり過ぎて腰が痛いが、まぁ大丈夫だ」


「・・・・・無理するから」


「そう言ってもな? 俺も男だから頑張らないといけないと思ったんだよ」


「・・・・・・満足した?」


「まぁ・・・そこそこ満足したかな? 好きに出来たわけだし」


「・・・・・・ヤメテって言っても聞かないから大尉は」


「あぁ、寝不足にさせちまったかな? すまんすまん」


「ん・・・。別に嫌じゃなかった・・・・・」



「くぅうぅぅらぁぁぁ!! アンタ達何やってたんだぁぁぁ!!」


 そこに魅夜が現れた。 勿論鍵は掛けていたハズだ。


「・・・魅夜。 セキュリティロック解除した?」


「そんなもの2秒ぉ! それより何? やったの!? ねえやったの!?」


 何か興奮しながら私に詰め寄って来る魅夜。

 

「?? 何を言っているの? 魅夜?」


「ん・・・昨晩の事か? やったぞ? 力いっぱい」


 大尉がそれに答えると、魅夜は大袈裟に頭を抱えて仰け反って叫ぶ。


「ガーン!! やったのね!? 私でもまだなのに! 芽衣・・・恐ろしい子」


 ?? 何を言っているのだろう魅夜は・・・。


「? やったのは大尉・・・」


「何言ってるの! 二人とも共犯でしょう!? 一人で出来るわけでも無いんだから!」


 頭を狂ったようにブンブン振りながら拳を握って上下させる。 「そんなの関係無い」とでも言いたいのだろうか?


「・・・・・・腹筋は一人で出来ないか? 芽衣」


「ううん。出来る」


 魅夜の動きがピタリと止まる。 


「・・・・・・・は? 腹筋?」


「ああ。 体力作りしたくてな。 寝る前にやったんだが、背筋やってなかったからか腰が痛くて仕方ないんだ」


「あ〜・・・そうなの? あぁ〜・・・・・・・・・い、いやぁ〜お、お邪魔しましたっ!」


 バタン!


「? なんなんだアイツ?」


「・・・・・知らない」


 何か魅夜は顔を赤くして飛び出るようにして行ってしまったけど・・・。 どうしたんだろう?


 私と大尉は二人で首を傾げるが答えも出ずに困惑するだけだった。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 基地内食堂にて


「ゆーつねー」


「YOU TUNE? ツネさんって誰ぇ? シャクシャク」


「あほー。 ゆ う う つ って言ったのよ〜。 昨晩からずっと雨だから外で走り回ることも出来ないじゃない〜・・・」

 

 そう言いながらテーブルに突っ伏すようにダレているのはちゃーこだった。 その対面にセンが座ってリンゴを齧っていた。


「ふ〜ん。 ちゃーこってワンちゃんみたいだねぇ〜♪ ワンワン♪」


 降って喜ぶのは確か雪じゃなかった? そんな突っ込みをするわけでもなく、ちゃーこは犬歯を立てて唸った。


「・・・・・ガルルルルル」


「キャー♪ たべられる〜♪」


 その時の台詞はセンのいつもの通りの馬鹿な台詞だったのだが、その後のちゃーこの言葉が後に災いの元となる。


「そんな幼児体型誰も食べないわよ」


 ちゃーこは何気なしに言ったつもりだった。だが・・・


「むーそんな事無いもん〜。 だったら大尉に食べて貰う〜」


 センが頬を膨らませてとんでも無い事を言い出した。


「!? セン!? 意味分かって言ってる!?」


「勿論だよぉ〜。 ちゃーこよりは絶対に大丈夫だもん」


「・・・・・セン・・・。 良く言った・・・。 良く言ったぜ!! 勝負だセン! てめえっほえ面かくなよ!!」


「受けて立つよぉぉぉ!」


 ・・・・・大尉。 グッドラック。


 センの意図は分からないが、ここにちゃーことせんの大尉争奪戦が始まろうとしていたのだった。



「・・・・・・馬鹿ばっかり」


 私はそれを半眼になって眺めて、淹れたてのミルクティーをノンビリと飲んで過ごす事にした。


 彼は誰にでも優しすぎる節があるから、自分の蒔いた種というやつだ。


 大尉は一度自分の軽率さを知るといい。


 そう思いながら。


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