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花屑  作者: 霧香 陸徒
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第8話「汝駆け抜ける風のように定めせし」

現れた強敵(?)との戦い決着。 

 敵のTAM―銀月はそれを逃げる事もせずに、迎え撃つつもりだ。


 舐められている!?


『何か知らんが全員捨て身とはっ! 失望したぞ!』


 銀月は動かずに、周囲に散っていた発射ポッドを自機の周りに集め、一斉に砲撃を開始した。


 突貫している私達はそれを避ける事もせずに・・・ただ敵を目掛けて前進する。


 数発食らって、魅夜、隊長、香具羅、ちゃーこの順番に流石に止められてしまった。


 だけど・・・まだ終わりじゃない!


『何っ!? 馬鹿なっ! 15のポッドを抜けてくるだとっ!?』


 驚愕しているがもう遅い。 私のTAM−07ヒナギクは銀月に接近する。


『―が、GーTAMを舐めるなぁ!』


 そう聞こえたと思うと、今一瞬前まで目の前まで迫っていた銀月が・・・消えた。


「え・・・・・・」


『後ろだ、小娘ぇ!』


「!?」


 なんと銀月は私の機体の後ろに回りこんでいた。 信じられない加速だった。


 やられる!


 銀月の振り下ろす手刀をスローモーションになるのを感じた。 それは最後の一瞬だったからか・・・。 この手刀が私の機体に到達すれば、私は堕ちるだろう。


 ごめん・・・隊長、ちゃーこ、魅夜、せん、香具羅・・・・・・。


 そして少尉っ!



 ・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・


 あれ?


 

 何も起こらなかった。



 目の前の銀月は振り下ろそうとした格好で動きを止めていた。


『ぐ・・・このタイ―ングで邪魔―入るとはっ!』


 銀月の外部スピーカーからくぐもった声が響く。 機体にダメージを受けたようで、その音声も若干飛んでいた。 良く見ると、銀月の肩にTAM用ナイフが刺さっていた。


 何が起こったのだろうか? 隊長達は先程のダメージでまだ動き出していない。


 なら・・・セン?


 そういえばセンは何処?


 

 彼女の黄色い機体をメインスクリーンで探すと、彼女のTAM−04キザクラは少し離れた場所で直立していた。 ・・・・・一緒に突っ込まなかったの?


 私の脳は少し混乱していたのかもしれない。


 だって、銀月の隣に・・・黒い機体が居たなんて信じられなかったから。


 

 TAM−06オニユリ


「少尉!!?」


「全部通信聞こえてたぞ? たくっ勝手に殺すな俺を!」


 やはり少尉だった。 彼は生きていた。 理由は分からないが、良かった・・・。


「どうして!? 少尉は食堂に残っていたんじゃ・・・」


「あぁ、話は後だ。 今は戦闘中だぞ軍曹! あぁ、そうそう、ちゃーこ、聞こえるか?」


 面倒くさそうに流して、少尉はちゃーこに、TAMー02へ通信する。


「こ・・・こちらちゃーこ! 少尉! 御無事で何より―」


 ちゃーこもなんとか無事だったようで通信に応えてきた。


「あぁ、そんな事はどうでもいいって言ってるだろう! ええとな、その・・・なんだ」


 やはり少し面倒臭そうにそれを流して、少し歯切れの悪い言葉を発した。


「はい」


 しかし、その後の一言だけはハッキリと言った。


「肉、美味かったぞ」


「!! 少尉! まさか残ったのって・・・」


「うるさい! 今は目の前の敵を殲滅するんだ!」


 少尉が照れくさそうに叫んでいた。 それを聞いたちゃーこは・・・


「はい!! 少尉! 愛してます!! 貴方の為に絶対に勝ちます!」


 ・・・・・・私は通信を切りたくなった。



『貴様ら! 俺を無視しているなっ!? 舐めるのも大概にしろっ!』


 あ・・・銀月を忘れていた。 どうも少し放っておかれて気分を害してしまったようだ。


 カルシウムが足りないのだろう。


 

 銀月は少尉の攻撃(?)で少しダメージを受けていたが、まだまだ動けるようで、すぐに発射ポッドを展開してきた。


「少尉気を付けて! あれは・・・」


「お〜流石未来。 ビットか。 相手はエースパイロットってやつか?」


 少尉は発射ボッドを見ても驚いた様子もなく、ただ感心していた。


 発射ポッドは新しく現れたTAMに狙いを定めて・・・撃った。


 実戦を経験した事が無い少尉にあれを避ける術は・・・


「おっと」


 ・・・避けていた。


 え・・・と?


「少尉!? 昨晩操作習ったなの!?」


 流石に隊長も驚いていた。 ううん。 昨晩はただ動力系の簡単な説明をしただけ・・・。


 何故動かせる!?


「ん? 隊長か? いんやぁ? それよりあのビット邪魔だな。 芽衣打ち落とせるか?」


 しかも、初めての戦場だというのにとても落ち着いていた。 これは・・・誰だ?


「・・・・ダメ。 狙ってもすぐ避ける」


「ほう・・・? じゃあ、手動で撃てばいいだろ。 そういうの無いの?」


「・・・・・・え?」


 少尉の口からまたそんな台詞が出た。 そんなに詳しく説明をした覚えは無い。


 確かに今の設定は自動で照準と索敵をするようにしてあるが・・・。


「いいから。 俺を信じろ」


 不思議とその少尉の言葉には力強さと安心感があった。


「・・・・・・ヒナギク。 オート射撃からマニュアル射撃に変更。 照準自動補正カット」


「ラジャー。 マニュアルON」


 オペレーターシステムがオートモードからマニュアルモードに変更する。 これで実際に機体の腕を動かして照準を合わせなくてはならなくなった。


「おし、適当に目標を外して乱射しろ」


「・・・・・・了解」


 良く分からなかったが、私は言われた通りに何も無い場所へと発砲した。


 

 チョドーン!


 ・・・・・・HIT。


「よし、思ったとおり♪ ちゃーこ! 憂いは無いぞ! 存分に暴れろ!」


「了解少尉! 久々知 智亜子、突貫しまーす!」


 少尉の号令でちゃーこが白銀のTAM目掛けて突撃する。 発射ポッドは引き続き私が打ち落としていく・・・。 面白いぐらいに落ちていく発射ポッド。


『馬鹿な!? 自動回避システムを上回る射撃だとぉ!?』


 銀月のスピーカーから驚愕した声が響く。 なるほど。 自動で避けていたのか。 という事はある程度自動で射撃もしていたのかもしれない。


 人の思考で操作しているなら、そこまで早く反応出来るわけが無いと思っていたが・・・。


 ・・・それを少尉は見抜いた?


 一瞬現状を見ただけで??


「シルバーさんよぉ! お前の相手はこの私だぁ! 受けろ! 烈火豪襲拳!!」


『何!? うわぁぁぁ!!』


 ガキィンッ!


 冷静さを取り戻したちゃーこの速度に着いて行けず、TAM-02の燃える拳をまともに食らう銀月。 ちゃーこの叫んでいるのは彼女が勝手に付けた技名で、実際に燃えているわけではないのだが・・・。


 その衝撃で数100m程吹っ飛ぶが、すぐに立ち上がってくる。

 

 まともに食らってまだ動けるっ!?


「菜乃隊長! トドメだ! アレを!」


「え・・・少尉!? そんな事まで!? でも、アレは・・・」


「大丈夫! 説明を受けた!」


「・・・分かったなの! ヒメユリ! グラビティブラストウェーブ発射準備!」


「ラジャー、マスター」


 隊長のオペレーターシステムがTAM-01の「切り札」を承認した。


「皆! 俺の機体の後ろに着けぇぇぇ!!」


「なになに? 少尉いったいなに〜!?」


「・・・・・・えっと、了解」


「あっはっは〜とどめとどめ〜♪」


「もう、なんなのよ!? OK、着いたわよ」


 登場してからまるで隊長のように号令を下し続ける少尉。


 本当になんなのだろう。


『く・・・この私が・・・負けるわけが無い!』


 銀月が吼えながら隊長の機体に突進する。 ダメージがあったので、その速度は先程より遅かったが、まだ十分動けるようだった。


 隊長!


「遅いっ! 合わせろよ隊長! グリーンインバリットシステム展 開!」


「うん! グラビティブラストウェーブ・・・発射!!!」


 銀月が隊長の機体に到達する前に、隊長の超兵器が発動する。


 ドゴォォォォォォォオン!!


 TAMー01を中心に絶望的な爆発が起こった。


「!!・・・あれ?」


 その衝撃波は私達の機体にも・・・来ない?


 良く見ると私達の前に緑色の薄い膜のような物が展開していた。 それが衝撃波を防いでいた。


『な・・・なんだこれはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 銀月のスピーカーから断末魔が聞こえてきた。


 アレは昔100ものTAMをも殲滅させたような兵器だ。 まともに食らって無事では済まないハズだ。



 ・・・・


 数分後。


 爆発の砂塵が収まると、辺りには動く物が無かった。


 私達7体のTAM以外は・・・。




「・・・色々と聞きたい事があるだろうが、とりあえず帰還しようぜ。 ちなみに基地に飛んできた銃弾は食堂の隣に被爆しただけで大した事は無かった。 もちろん菊池女史も無事だ」


「・・・・・・そう。 了解」


 もちろんそれで済ましたくは無かったのだが、今回の功労者は誰が見ても少尉なのだから素直に聞くしかない。


「それと隊長。 色々偉そうな事言っちまってすまなかった。 状況が状況だったから勝手に指揮したぞ?」


「あ、うん。 け、結果オーライなの。 少尉、お・・・お疲れ様なの」


 隊長でさえ、先程の夢のような状況を理解するには時間がかかっているようだ。



 色々と分からない事ばかりだったが、私達は全員無事に基地へと帰還した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 食堂に戻った私達は、全員困惑顔のままだった。


 なにせ、先日入隊したばかりの少尉が、TAMを難なく動かして、しかも的確な助言までしたのだから・・・。


 種明かしをしてほしかった。



 食堂は出撃前より酷い状況だった。 テーブルは倒れ、その上に乗っていたゴローさん(牛の名前)の追悼料理は床に散らばってしまっていた。


 それを一切れ少尉は拾い上げた。


「ん・・・流石に硬くなったな。 まぁ・・・食べれないことも無い」


 そう言って少尉はその肉を食べてしまった。


「少尉!? 肉ならまだあるからそんなのを食べなくても・・・」


 ちゃーこが慌てて止めるが、少尉は気にした様子も無く、更に落ちている肉を拾っていく。


「汚かろうが、これは大尉の大事な物だろ? ちょっとぐらい汚れても人間大丈夫に出来てるからな」


「・・・少尉・・・」


 ・・・ちゃーこの目がハートだった。


 何故かそれを見ると気分が悪くなってくるのだが、何故だろう?


「そ、それよりも少尉〜。 どうしちゃったのだぁ? イキナリ現れて何処のヒーロー漫画かと思ったぞ〜?」


 魅夜が誰もが聞きたい質問をすると、少尉は肉を拾うのをやめて私達に向き直った。


「あ〜・・・長くなりそうだが、いいか?」


「・・・はい」


「うんうん」


「だいじょうぶで〜す♪」


「少尉お願い、話して。私気味が悪いわ」


「聞かせて欲しいなの」


「うふふ。 二人の夜は長いから大丈夫よ〜」


 スパーン!


「みゃぅ〜ん!?」


 全員即座に頷いた。 最後の魅夜の台詞に少尉は何処からかハリセンを取り出していたが、そんな事より早く話して欲しい。


「・・・コホン。 まぁ、俺自身驚いているのだけどな。 俺は時間を飛んだってのは皆知ってるんだよな?」


「はいなの。 それは全員に話してあるなの」


 隊長が代表して答えた。 全員が話すと話が進まないと考慮したのだろう。


「そうか。 それなら俺の体は・・・なんとかって少尉の物だってのは知ってるか? あぁ、答えなくていい。 この体は俺であって、俺でないんだ。 元々誰かの体だったらしくてな。 その体に俺が入っているって事らしいんだが・・・」


「菊池女史と同じなの」


「そうらしいな。 で、菊池女史の場合、元の体が軍医だったらしくてそのままその技術を使えたと言っていたんだが・・・。 それは俺もそうだったらしい」


「・・・どういう事なの?」


「つまりだ。 前の体の少尉はTAMの操縦が出来たみたいだな。 俺がオニユリに乗り込んだら懐かしい感じがして、後は適当に動かせた」


「て・・・適当で動かせたら世話ないわよっ!」


 香具羅が堪らずに声を上げる。 うん。 その気持ちは良く分かる。 私も同じ事が言いたかった。


「いや、それ以外にもな。 操縦系統が・・・その、なんだ・・・。 昔ゲーセンでやったゲームにそっくりだったんだ」


「は?」


「いや、多分設計した奴がそれを真似たのかどうか知らないが・・・、ほぼ同じようなもんだったぞ。 二つある操縦桿を同時に前に倒すと前進。前と後ろに倒すと旋回。 左右に広げると飛び上がった時には吹き出しそうになったぞ」


 少尉の言っている操作は、実はその通りだった。 操縦席の前に二つの操縦桿が伸びていて、それを少尉の言ったように操作すると、そんな動きをする。 後は色々とボタンが付いているのでそれを押したりするのだが、それは分からなくてもそれだけ分かっていれば十分動かせる。

 ・・・しかし、ゲーム?


 そんな事で!?


「攻撃方法とか若干分からなかったから芽衣とかに任せたが、それは仕方ないよな? あぁ、後、ビット・・・でいいのかな? 空を飛び回ってたヤツ。 あれって昔やってたアニメであるようなヤツだったからな。 驚きより感動したぞアレには♪」


『・・・・・・』


 私達は沈黙するしかなかった。


 話を聞いているとゲーム? アニメ?


 ふざけ過ぎている!


「そのアニメには打ち落とし方もやってたが、それよりどうせコンピューターで制御してるような物だと思ったからな。 適当に・・・予測不可能な撃ち方すれば騙しで当たるんじゃないかと思ったんだ。 まさか本当に落とせるとは思わなかったがな♪ 要するに芽衣の射撃が正確過ぎたって事だ」


 しかも、私にそんな駄目出しまでしてくる・・・。


 今まで真面目に訓練してきた私達はなんなのだ・・・。


「そ・・・それにしても少尉落ち着いていたなの。 初めての実戦は怖くなかったなの?」


「・・・そりゃ怖いだろ普通。 だけど、昨日から異常な事ばかりの連続だったからな・・・。 そういう感覚がマヒしたのかもしれない。 要は慣れってやつか?」


 少尉はウソを言っているのでは無いのだろうが、私にはどうしてもまだ信じられなかった。


 昨日まで一般人で・・・ただの高校生だった者がどうしてそこまで達観出来てしまうのだろう? 彼は・・・何者なのだ?


「・・・・・・少尉。 アナタは本当にただの高校生だったの?」


「・・・・・・」


 私が聞くと、少尉は少し考えるように眉間に手を当てて、そうして肩を竦めてみせた。


「俺自身そうだと思ってたんだがな? 元々の世界じゃ色々と嫌な事もあったし・・・そのせいかもな」


「・・・・・・嫌な思い出は思い出さなくていい。 ごめんなさい」


 私は少尉の目が一瞬生気を無くした様に見えてしまってそれ以上聞けなかった。 嫌な思い出・・・。 私にもあるから分かるつもりだ。


「まぁまぁ。 とりあえず少尉は即戦力って事なのだよ芽衣♪」


 魅夜が笑いながらそんな事を言う。


 確かに・・・少尉の機体は隊長の超兵器を使う事が出来るように補助する機体だから、戦力は大幅にUPしたと言える。

 今の所少尉は基本動作が感覚で分かっている程度のようなので、本当に混戦等になると分からないが・・・とても心強い戦力になったのは確かだった。


「あ、そうそう。 その事なの。 少尉はこれでおしまいなの」


「!?」


 隊長が急に言い出した台詞は流石に驚いた。 しかし、すぐにそれは杞憂と分かるが。


「あ。 別に退隊ってわけじゃないの。 今回の作戦で少尉は大尉にしようと思うの」


「おー! イキナリ昇格ですか♪ 流石少尉! って少尉じゃないのか、よっ大尉!」


「おぉ〜、なら私と一緒って事ね」


 ちゃーこが嬉しそうに少尉の手を取って喜んでいた。


 ・・・・・・何か発砲したくなった。 何故だか分からないけど。


「あ〜ちゃーこ? 貴女はこれから中尉なの。 今回の命令無視には久しぶりにトサカに来たなの」


「えぇ〜〜!? 菜乃〜〜それって横暴よぉ〜」


「黙れなの! 貴女のおかげで皆がどれだけ危険な目にあったのか思い出すなの!」


「あぅ・・・・分かりましたぁ」


 ごめんちゃーこ。 何故かいい気味だと思ってしまった。 中尉降格おめでとう。


「え〜とぉ〜。 階級がどうってのはいいんだが・・・。 隊長を抜きにしたら俺が一番階級が高くなるぞソレ?」


 少尉・・・いや、大尉も流石にこの急展開に着いて行けずに困ったようにするが、菜乃隊長は笑顔でとんでもない事を言う。


「ううん大尉〜。 今回の作戦で貴方の指揮はとても良かったの。 むしろ隊長を変わって欲しいぐらいだったの♪ 適材適所だと思うなの〜皆はどう思う?」


 ここまで来ると答えなど求めなくてもいいとは思うが、隊長は一応聞いてきた。


「♪ 私はもちろん賛成〜」


 魅夜、賛成。


「うんうん♪ カッコよかったからOKだよぉ♪」


 せんも賛成。


「・・・いいと思うわ」


 香具羅も少し考えたが賛成だった。


「う〜・・・あぁん! もう! 分かった賛成賛成!」


 哀れなちゃーこも渋々賛成したようだ。


「・・・・・・」


 私は・・・。


「芽衣ももちろん賛成なの?」


 隊長は妙に笑顔で言ってくる。


 コクン。


 思うところはあるが、認めないわけにもいかない。


 ・・・あの時、助けてくれたし。


「うん♪ じゃあ今日は大尉就任祝いとちゃーこの中尉降格祝いにゴロー君を食べつくしましょうなの♪」


『はぁぁぁい♪』


 

 こうして、少尉はたった二日目にして大尉へと昇格した。


 彼が乗ることになったTAM−06オニユリの事など色々と不安はあったが・・・。


 今日は色々と疲れたのでそれはとりあえず置いておくことにしようと思う。


「あ、そうだ芽衣。 祝いっていうなら昼間歌った歌を皆に聞かせてやったらどうだ?」


 大尉は唐突に無茶な事を言い出した。 皆の前で歌うなんて恥ずかしい事を私にしろと?


「嫌か? 上官命令だぞ芽衣軍曹♪」


 昇格してイキナリ職権乱用する大尉。 まぁ、元々少尉であっても上官なのだが・・・。


「め、芽衣が歌うの!?」


「た、大尉! やめた方がいいの! 芽衣は―」


 ちゃーこと隊長が何故か必死に止めようとする。 私は所持している短銃のセキュリティロックを外そうかと一瞬考えてしまった。


「おっ? なんだ隊長もちゃーこも聞いた事無いんだな? 普段音痴みたいだが、今から歌うのは一味違うぞ? 芽衣、聞かせてやれ」


 ハッキリ音痴と言った大尉。


 ・・・・・しかたない。 今回だけという事で納得しよう。


「・・・・・・大尉。 一緒にお願い」


「分かってる。 元々デュエット曲だからなアレは」


 歌う曲の名前は「風と森のロンド」。 私が幼い頃に聞いた歌だった。 大尉の知っている世界では有名だったのだろうか? 私は、その曲を母が歌っていたのを思い出しながら・・・ビブラートを紡ぐ。


『〜〜♪』


 歌声が流れ出すと、隊長もちゃーこも一瞬ビックリしたように顔を見合わせるが、すぐに目を細めて謹聴してくれた。


 「風と森のロンド」は、とある青年と少女の物語を歌にした物らしい。


 その歌詞は私は好きだったから覚えていたのかもしれない。



 「花屑」基地内食堂に二人の歌声が響き渡る・・・。


 それはゴロー君のレクイエムであり、私達の勝利の賛美歌となった。


 

 そうして、大尉の花屑での二日目が暮れていった。




第2話的な話終わりです。

次の展開は軽いお話ですので気楽に見てくださいね〜。

http://9922.at.webry.info/ にて芽衣のメイド服が見れます(何)

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