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花屑  作者: 霧香 陸徒
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第7話「汝愛を叫ぶ友と共に斗う」

お昼にしようとしていた私達の基地に敵襲。 少尉は・・・動けないようなので食堂に待機だ。 だから・・・絶対に私達が守り切る!

「最近接近を許しすぎじゃない!? どうなってんのよセキュリティは!」


「あー・・・そういえば私、昨晩切って、セキュリティ起動させるの忘れてたわ」


「お前のせいかーー! 馬鹿ぁぁぁ!」


 紫の魅夜の機体と緑の香具羅の機体が揉み合いながら飛んでいる。 ・・・漫才は後にして欲しい。


 今は戦闘中なのだから。


 彼女の性格のような黄色い機体に乗るセンは・・・。


「あっはは〜敵さんどこかなぁ〜?」


 まるっきり緊張感が無い。 いつも思うのだけど、どうしてセンはTAM搭乗者なのだろう・・・。特別操縦が上手いというわけでもなく、いつも敵が出てきても大半は逃げ回っていたりしているだけ・・・遊んでいるだけだった。


 

 敵の数は検索結果から「旧式TAMが20体と新型が1体」らしい。


 旧型は物の数では無いが・・・その新型というのは・・・。 実は前に戦った事がある機体だった。


 その時の結果は・・・引き分け。 これは衝撃的な事だった。 


 私達は6体。 相手はたったの1体だ。 それが・・・引き分けるという事は相当のスペック機体と操縦スキルがあると思って間違いない。


 そんな相手に、先程牛のゴローさん(全部名前がついているらしい)の追悼晩餐会を滅茶苦茶にされたちゃーこは、その傷心のままに出撃して大丈夫なんだろうか・・・。


「ぜぇぇぇぇぇぇいんかかってこぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぃいっ!!」


 ・・・大丈夫のようだ。 怒りがMAXになっている。 彼女の赤い機体TAM−02が更に真っ赤に燃えているように見えてしまった。 ただ、怒りに我を忘れてミスをするとマズイので援護射撃の準備はしておかないと・・・。


 隊長は、反則的な兵器を使わずに普通に格闘戦をしていた。 菜乃隊長の機体は超兵器を装備しているが、それは使用すると味方にも甚大な被害が出てしまうはた迷惑な装備だったから「切り札」にしかならない。


 ここで少しTAMについて説明すると、TAMは人型の兵器で、各TAMには専用の装備等がある。 例えば私のTAM−01ヒナギクだと射撃用のライフル等が2丁。 短銃が1丁。 それと接近戦用のナイフ状の装備が一つあったりする。 後、全機共通で頭部付近にバルカンや、腰の辺りに反応弾が装備されていたりする。

 後、動力は基本的に電力だが、このTAMには人の感情を糧にするという困ったシステムが組み込まれている。

 今のちゃーこのような状態だと怒りがそのままパワーになって機動力等は上がる。 他にもそんな迷惑なシステムがあるらしいが、詳細はブラックボックスの様に詳しく分かっていないらしい。

 さっきから困った、とか迷惑なとかいう表現をしているのはそれが「意図的では無いのに発動してしまう」からだ。

 だから、私のように感情を制御するのは良い事らしい。


 ・・・・・制御してるんですよ?


「オラオラオラぁ! このククチチャーコ様が相手してやるっ! 尋常に勝負しやがれぇぇぇ!!」


 ・・・・・・


 ちゃーこは熱くなると男言葉になる。 それは彼女が「キレている」証拠であり、あまりよろしくない状況だった。


「ちゃーこ。 冷静になって。 あの白銀の機体が居る」


「うるさい芽衣! 私はゴローさんの仇を討つんだーーーーーー!!」


 ・・・聞いてくれない。 まぁ、その勢いに任せて次々と相手のTAMを撃墜しているから別にいいのだけど・・・。 あ、危ない。 ちゃーこの死角に1体居る。


「ちゃーこちょっと右によって。 ヒナギク、前方11時の方角にステルススラスターをシュート」


「ラジャー。 ステルススラスター発射」


 私の乗るTAM−01ヒナギクのオペレーションシステムが軌道を自動で修正して特殊弾を発射する。 弾自体にステルス迷彩処理が施してあるので、相手からはその音ぐらいでしか反応できないような物だ。


 チュドーン!


 弾は難なく敵に命中したようで撃破成功した。 間近で爆発が起こった事にちゃーこは一瞬我に返ったように辺りを見渡すが、すぐにまた飛び回り出した。


 ・・・はぁ・・・。 ちゃーこの危機だから、高価な弾を使ったのに・・・。


 それに・・・爆破してしまった・・・。 今回は仕方ない。 それに、すでに私の手は汚れている。 最低限気をつける事にしよう。


「ちゃーこぉ! 出過ぎなの! 一旦戻って!」


 流石に隊長が悲鳴の様にちゃーこに向かって声を上げる。


 その声にも応えずにちゃーこは前進を続けるが・・・


「こちらちゃーこ! へっ! コイツら口程にもねえ! ドンドンいくぜ・・・・・・うわっ!? な、なんだ!? 何処から撃ってきやがった!」


 暴走を続けるちゃーこを止めたのは敵の銃弾だった。 それを受けたちゃーこの機体はその衝撃で止まったが、ちゃーこの周りに敵は居なかった。


「くそにゃろ・・・前のシルバーさんか!!」


 ちゃーこが吼えると物陰から白銀の機体が現れた。 敵国の新型で、遠距離射撃が得意な機体のようだった。 しかし、その機体の手には銃は握られてない。 機体に砲撃用の穴が開いているわけでもない。 では、何処から撃って来るのか? 答えは簡単で最悪だ。


 空中からだ。


 空中に無数の発射ポッドが浮かんでいる。 それがどういう原理でか、動き回って、狙い撃ちしてくるのだ。


 相手は確かに一体だが、私達はその発射ポッドの数だけ相手しなくてはならない。


「芽衣! 援護して!」


 隊長が私に命令する。 それを聞くまでも無く、発射ポッドを探してそれに数発打ち込んでやる。


 ・・・しかし、発射ポッドはそれに反応して避けてしまう。 


 反則だ。


 ならば本体を狙おうとすると、すぐに物陰から物陰に隠れてしまってサーチシステムも追いつかない程の敏捷速度だった。


 機動力なら、ちゃーこの機体も負けてはいないのだが、彼女は今冷静さを失っている。 逆に堕とされないようにするのがやっとだろう。


 そういえば、魅夜達は・・・。


「ほら! 白銀の! 来たわよ!?」


「ん〜香具羅たんは私が守ってあげるからねぇ〜」


「たぁぁぁ! もう! 離れて飛びなさいよ!!」


 ・・・・・隊長。 私、あっちを撃ちたいです。


 センは・・・。


「わ〜! くるよくるよ〜撃ってくるよ〜 きゃっほぉぉい♪」


 発射ポッドに追われて逃げ回っている。 幸い一発も被弾してないようだが・・・。 戦力外だった。 ・・・いや、センの避けた弾が敵の他のTAMに命中したりしているので実質的には頑張っているのだろうか・・・。


 まともに戦っているのは私と隊長だけ?


「・・・隊長! このままでは・・・」


「魅夜! 香具羅! 千代! 遊んでないで真面目にやりなさい! さもないと帰ったらお仕置きですよ!」



『い、イエッサー・ボス!』


 流石に一喝されて3人は命令に従った。 隊長は怒ると怖い。


 そう言っても、魅夜や香具羅はじゃれ合いながらも他のTAMを殲滅していたようで、残っているのは後、敵の新型TAMだけだったようだが。


『はっはっはっは〜花屑の皆さん流石にやりますねぇ! ですが、私のG−TAM銀月には敵うまい!!』


 ・・・アホが居る。


 敵の白銀の機体は何を考えているのか外部スピーカーで話しかけてきた。 お互い敵同士なので、通信は出来ないから仕方ないのだろうが・・・。


 どれだけ傲慢なのだろう。 いや、ただの馬鹿だ。


「何なの? あの機体・・・。G-TAM? ギンツキ? 名乗りたかっただけなの?」


 隊長も流石に困惑してしまったようだ。 私もこんなのを相手してると思うと頭が痛い。


 それでも、そう言うだけの実力があれば、話は別だ。


『隊長機はそっちの赤いのだな? その命貰ったぁ!!』


 「赤は隊長機」などというレトロな考え方をされても困るのだけど・・・。


 いや、それより発射ポッドが全部ちゃーこに向かって居る!


「ちゃーこ! 危ないなの!」


「どわぁ!!」


 発射ポッドが弾を打ち出すよりも早く、隊長の機体がちゃーこの機体を突き飛ばす。


 発射ポッドから打ち出された弾はその両方を何とか外れたようだった。


 しかし―


「!? マズイ! あっちは・・・!」


 その流れ弾の一つが・・・基地のある方角に向かって飛んでいった!


「・・・少尉! 菊池女史!」


 なんと愚かだろう。 私や隊長はちゃーこに釣られて前に出すぎていたのでそれを止められない。 魅夜と香具羅はその事に気付いていないし、気付いても遅い。彼女達の反応速度より弾の方が早い! センは!?


「わわっ! そっち行っちゃだめぇ!」


 上手く軌道上にセンの黄色い機体が居た! お願いセン! 止めて!



 しかし、その想いも空しく、黄色い機体はその弾道を止める事は出来なかった。



 ドォォォォンッ!!



 基地の一角がそれによって炎上する。


 少尉! 菊池女史!


「「「「少尉ィィィィぃーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」


 皆が絶叫した。


 まだ着任2日目でこれだけ思われるもの、彼の人柄のせいかもしれない。


 センや香具羅はどうか分からないが、隊長や魅夜、ちゃーこは彼をすぐに認めてしまったから。

 それだけ、慕われていたらしい。


 私も・・・彼がやられて悲しい。


 それは今センが止めてくれなかったからだとかでは無く、私達全員のせいであるからとても悔しかった。


「ジュン少尉・・・。 貴方の事は忘れない・・・」


 私は昨日の事や今日の事を思い出しながら一瞬だけ黙祷した。 


 今は戦闘中だ。


 これ以上の哀悼は自分の身までも滅ぼす。


「皆! 少尉の弔い合戦なの!! 全装備を尽くして一斉にかかれなのぉぉぉぉ!!」


 隊長が命令を下す。


「おぉぉぉぉぉぉ!!」


 ちゃーこが先程の比で無い程の怒りを爆発させている。


「少尉の仇ーー!って私も少尉だけどねぇー! いくぞぉっ!」


 魅夜は、彼女なりに怒っているんだろう。 口調がハッキリしている。


「あの方は・・・とても良い人だったのにっ!」


 香具羅は・・・意外にもそんな事を叫んでいた。 初日に何か険悪な事になったと聞いたけど・・・。 見直していたらしい。


「あはは〜♪ とむらいとむらい〜♪」


 ・・・センはいつもと変わらない。 いや、もしかしたらこの子も・・・。


 少尉は・・・凄いな。 たった一日でこんな・・・。


 私は・・・出会って間もない彼をそういう信頼関係にあったかどうかと言えば疑問だけど・・・、守れなかった事は確かだ。


 相手のTAM・・・・・絶対に許さない!


 私達は発射ポッドに構わずに本体の白銀のTAM目掛けて突貫した。

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