最終話『花の屑は・・・』
未来へ飛ぶ決意をした芽衣と大尉。 そして花屑へと迫り来る敵の大軍。
二人は、花屑はどうなってしまうのか!?
大尉と芽衣の二人が去った後、花屑の隊員達は全部で4人。
TAM−01に乗る 樟葉 菜乃
TAM−02に乗る 久々知 智亜子
TAM−04に乗る 醍禅 千代
TAM−05に乗る 天宮院 香具羅
TAM−03とTAM−06とTAM−07は欠番となっていた。
4人は自分達の機体へ乗り込みながら、それぞれに表情は硬く、そして口数は少なくなっていた。
「せん。 さっき言っていた事は本当なの?」
花屑の隊長の菜乃は薄いピンク色の機体TAM−01ヒナギクからTAM-04キザクラへ乗っていた千代、通称「せん」に通信した。
「あ〜絶対に勝つって事ぉ? ごめん〜ホントは自信無い〜」
ごめんと言いながらも明るい声で答えるせん。 いつでも笑顔を忘れないという彼女の心情がそうさせるのだろうが、いささか今回ばかりは声に覇気が無かった。
「だろうなっ! だけど、大尉の期待に応えなくちゃならないからなっ! 私達は絶対に負けないぜ!」
「そうは言っても戦力がほぼ半減したっていうのはやっぱりツライわね・・・」
ちゃーこはそう言うが、香具羅も不安そうに声を上げていた。
「とにかくっ! やるしかないなの! 私達は無敗のウエストサン国最強の部隊「花屑」なの!」
隊長である菜乃の号令で各々の機体の駆動音が鳴り響く。
決戦が始まろうとしていた。
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木々が生い茂る森の上空に白と黒の機体が飛んでいた。
TAM-06オニユリとTAM−07ヒナギク。
その人型ロボットに乗っているのは芽衣と呼ばれる少女と、ジュンペイと呼ばれる青年だった。ジュンペイは階級が大尉なのでそのまま「大尉」と呼ばれる。
そんな二人は2機のTAMで基地から少し離れた森へとやってきていた。
この森の奥に「コールドスリープ装置」がある研究所跡があるというのだ。
「・・・・・・ジュン君、こっち?」
「あぁ、芽衣子。 この辺りだって思うぞ。 記憶が確かならな」
二人が注意しながら森を探していると、丁度森の中には似つかわしくない小さな鉄筋コンクリートの1階建ての建物があるのを発見した。
「!! あれだ!」
「・・・・・・分かった。 ジュン君降下して」
その建物の横にTAMを降ろして二人は「岩倉研究所」と書かれた看板がある建物へ入っていった。
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「やっぱり数が・・・! ちゃーこ! 香具羅! せんを守ってあげてなの!」
「そんな事言ったって!」
「くっそおぉぉぉ! てめえら邪魔なんだよ! どけぇぇぇ!」
「うわぁ〜・・・囲まれちゃったよぉ・・・」
花屑隊員達が敵の大群と対峙して数分で、その圧倒的数に押されようとしていた。
せんの乗るTAM-04キザクラは戦闘に特化してない工作用の機体なので囲まれては一たまりも無かった。 彼女の機体は数々のトラップ装置が内臓されているが、それも設置する暇が無ければ意味が無い。
奮闘するちゃーこのTAM-02ボダイジュや香具羅のTAM-05キキョウは一撃一撃で敵を確実に仕留めていたが、敵は湯水のように沸いて出て思うように動けなくなっていた。
隊長機のTAMー01ヒメユリは強力な兵器を搭載しているが、サポートするTAM−06オニユリが居なければ発射することは自爆行為に過ぎなかった。 元々の性能は悪くないのだが、いかんせん火力不足だった。
「不味いなの・・・。 リミッターが外れて運動性能も火力も上がっているけど・・・キリが無い!」
敵側の新型TAMも混じっていたのだが、それすらも雑魚のように個々を圧倒しているが、それでも敵はいくらでも次々に来る。 こちらのTAMの燃料が切れるのが先か、相手がこちらを打ち落とすのが先か・・・そんな状況だった。 勝ち目があるのかと言われれば、どう見ても未来が見えない。
だが・・・。
「くそう! 攻撃はたいしたこと無いってのに! 虫みたいに次から次へと!」
前方に対峙する3体のTAMを同時に蹴り倒してちゃーこは息を吐いた。
操縦技術と運動神経は花屑1なのだが、そんな彼女にもすでに疲れが出始めていた。
一瞬動きが止まってしまい、そこを狙って撃とうとしていたTAMを香具羅が打ち落とす。
「ちゃーこ! 油断しないで! まだ来るわ!」
助けてくれた香具羅に通信モニター越しにサムアップしてから、ちゃーこは自分の頬を両手で挟むように叩く。
「わかってら! おっしゃぁ! てめえらまとめてかかってこぉぉい!!」
「うんもぉ〜! 地面や海中だけが魚雷じゃないんだよぉ!」
そう言って敵から距離を取ったと思うとTAM−04キザクラは両手を左右に広げた。
そこから何か光るものが飛び出る。
しかし、それでは何も起こらなかった。
敵のTAMがこけおどしと思いキザクラに近づいた瞬間―
チュドーン!
敵のTAMが爆発。
「空中魚雷だよぉ〜♪ 近付けるものなら近付いてよぉ♪」
「超兵器だけがヒメユリじゃないなの! ブレイズブレードぉ!」
TAM−01ヒメユリは光状の剣のような武器を取り出し振り回す。 一太刀する毎に真っ二つになっていく敵TAM。
皆、各個撃破ならば負けはしなかった。
しかし―
「あはははは! やりますわね! 花屑! だけどこのG−TAMには勝てませんわよ!」
敵のTAMから外部スピーカーにてそんな笑い声が聞こえてきた。
その音声の出所には金色に光ったTAMが一体。
この大群を率いていたTAMだった。
「私の金月がお相手いたしますわ! 銀月の仇・・・取らせて頂きます!」
超スピードで迫り来る敵の隊長機。
「な、なんだ前の馬鹿みたいなのが居るぜ!?」
ちゃーこはそれを見つけて挑みかかる。 彼女の性格上強そうな相手がいると真っ先に飛び出してしまうのだが・・・。
「遅いですわ! ・・・・・・・まず一体」
ドゴーン!!
金色のTAMがちゃーこのTAM−02と交差したと思うとTAM−02はそのまま地面に倒れてしまった。
「ちゃーこ!?」
「ちゃーこ! 大丈夫なの!?」
「ちゃーこぉ! 反応してっ!」
赤いペインティングのTAM−02は通信を返してこなかった。
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岩倉研究所。
「・・・・・」
そこには何度も来た事があった彼は、その内部で懐かしさと同時に何か焦燥感にかられていた。
「・・・・・・ジュン君・・・この奥がそうだったね」
安息室と書かれたプレートが掛かっていた部屋を指して芽衣が言った。
「安息」という文字にちょっと不謹慎な気がしたが、眠るのには変わりは無い。
だが・・・
「なぁ・・・芽衣子。 このまま本当に眠ってしまっていいのか?」
「・・・・・・」
芽衣は答えなかった。 その手が安息室の扉の取っ手を握る。
「さっきせんは大丈夫って言ったが・・・。 大丈夫なら俺達が飛ぶ必要なんて無いだろ? そうじゃないのか?」
「・・・・・・ジュン君・・・」
「俺は確かに幸せな世界で暮らしたい。 だけど、このま飛んで・・・逃げたら絶対に後悔すると思うんだ。 魅夜が体を張ってくれた事、皆が逃がしてくれた事・・・それを後悔すると思うんだ」
「・・・・・でも、それは・・・皆の意志・・・」
弱々しく芽衣は言いながら、ドアノブを回す。
「だったら! 俺達の意志は!?」
芽衣の肩がピクンと震えた。
「俺達は・・・いや、芽衣は皆を見捨てていいのかよ? お前は―」
大尉の言葉はそこで止まった。
止められた。
芽衣がドアノブを握る反対の手でハンドガンをこちらに構えていた。
「ジュン君・・・。 もう手遅れ。 私と一緒に飛んで・・・」
「芽衣・・・子・・・お前・・・」
「このままもし戻っても・・・多分無駄。 私はジュン君に死んで欲しくない。 だから戻るって言うなら・・・ジュン君を撃って私も死ぬ」
銃口は間違いなく大尉の胸元を捉えていた。 後は引き金を引くだけで済んでしまう。
彼女は中途半端な気持ちで此処まで来たわけでは無い。 その意志の強さがそのまま行動に現れていた。
「・・・・・」
「・・・・・大尉。 よしと言って欲しい・・・。 私は撃ちたくない」
芽衣の銃を握る手が震えている。 その瞳にも涙が零れていた。
そんな芽衣を見て、大尉は一呼吸してからまっすぐに芽衣の目を見て言った。
「撃てよ。 芽衣」
「!?」
「今、大尉って言ったな? お前だってやっぱりこのまま飛ぶのを躊躇っているんだよ。 だったら、撃って二人で此処で死ぬか、戻って玉砕するかどちらでも同じ事だろう?」
「・・・・・そんな・・・。 私は・・・私はやっとジュン君を思い出して・・・」
「・・・だからって花屑での事は忘れてしまうのか?」
「!! そんな事無い!」
「だったら・・・。 やっぱり答えは始めから決まってたんじゃねえか。 時間を無駄にしたな」
「・・・・・・・・・ジュン君・・・・ううん大尉。 ごめんなさい」
「いや、俺も此処に来るまで決心が付かなかったんだ。 良かったよ。 最後に此処が見れて」
「・・・・・・最後じゃない。 私は死ぬつもりは無い」
親指を立ててサムアップしてくる芽衣。
それに大尉も応えるように親指を立てる。
「おっ! そうだよな! 俺達で全部ぶった倒してやろうぜ!」
「うん!」
数分後、白と黒の機体は最大全速で戦場へと向かうのだった。
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「あはははははははははは! 弱い! こんなヤツラに私達が負けていたなんてちゃんちゃら可笑しいですわ!」
「くぅぅ・・・頭悪そうなのにあの機体の運動性能ってヤバイんだけど・・・」
「確かに前の銀月並みの脳細胞っぽいの。 だけど、実力が裏付けされてるから余計に悔しいなの」
「・・・リミッター外して動いている分こっちの機体はもう持たないよー」
花屑隊員はちゃーこを失って更に戦況が苦しくなっていた。 ちゃーこの機体は不時着していて、その機体自体は攻撃を受け無かった事が幸いして形は保っていたが、香具羅、せん、菜乃隊長に守られながらやっと無事でいるというだけという状況だった。
生死は分からないが、まだ大破したわけじゃない。
「せめて援軍が来てくれれば・・・本国に援軍要請はしたなの。 だけど・・・いつ到着するか・・・」
「はぁ!? 今まで私達だけを戦わせてた本国に何が出来るってのよ! 当てになんないじゃない!」
「! ううん! そんな事無いよぉ! こちらに接近してくる機体があるよ!」
せんのTAM-04キザクラが索敵範囲に新しい反応があるのを発見した。
皆は一瞬味方の援軍かと思ったが―
「!? 敵のTAMの反応だよぉ! まだ来るのぉ!?」
味方のTAMならデーターがあるのですぐに分かるのだが、飛んで来たTAMは識別不能の機体だった。 という事は敵の新型の可能性が強かった。
「・・・でも、たった1体? ? まって! 反対方向から2体のTAMが・・・これはっ!?」
「大尉と芽衣なの!!」
香具羅と菜乃隊長の策敵レーダーに味方機の反応。
TAM−06とTAM-07だった。
「待たせたな隊長! 派手にやってるみたいだな!」
「・・・・・ただいま。 皆」
「芽衣! 大尉! 貴方達なんで戻ってきたなの! ・・・そう言ってる場合じゃないの! もう、後でお説教なの!」
「了解だ!」
「了解」
そう言いながらも菜乃隊長の声は震えていた。
本国の援軍よりも心強い援軍だったのかもしれない。
「大尉! ちゃーこが墜ちたなの! 守りながらだけど頑張ってなの!」
「ちっ! また特攻しやがったな!? 世話の焼けるやつだ」
その時、動かなかったTAM−02が静かに駆動音を鳴らしだした。
「ん・・・。 あれ? 私・・・げっ!? 墜ちたのか!?」
「お目覚めか? お姫様。 早く体勢を立て直せ馬鹿!」
「お、おう! って大尉!? ・・・・・ちっくしょう! かっこ悪いところ見せちまったぜ! 名誉挽回といきますか!」
ちゃーこの機体はダメージを受けていたが、まだ動けるようだった。
そこに寄って来る敵TAMをまた次々に蹴散らし始める。
「皆、少し伏せて・・・ リミッターキャンセル確認。 ライトブラストウェーブ発射」
芽衣の機体のヒナギクから高出力のビーム兵器が飛び出した。
その光線に触れた敵は次々に爆砕していく。
「おぉ〜バスター!って感じだな♪ 俺も俺も!」
芽衣の攻勢に嬉々としながらTAM-06オニユリも発砲する。 一発一発は他の機体よりは弱かったが、その射撃は的確に敵を捉えていた。
「ガンシューティングワンコインクリアの実力なんだよ実は♪」
この時代の人間の菜乃隊長達には分からなかったが、芽衣には分かったようでクスリと笑うのが聞こえてきた。
「ええい! 2体増えただけで何を押されているんですの! あんなのは一捻りなんですわよ!」
外部スピーカーを最大音量にして叫ぶ金色のTAM。
「なんだ? 前の銀月って馬鹿みたいなヤツみたいなのが居るな?」
「そうなの! 他のTAMとは比べ物にならないの! 大尉、芽衣! 気を付けてなの!」
「ラジャった!」
「了解」
「こっちは数で勝ってるのよ! 押して押して押しまりなさいですわ! キャ!?」
大声で叫び続ける金月は急に衝撃を受けたように前のめりになった。
大尉や花屑誰も金月を狙って居ない。
金月の後ろからの発砲だった。
「何ですの!? どこの馬鹿が間違えましたの!?」
外部スピーカーのままそんな事を叫ぶ金月のパイロット。 やはり頭は悪そうだった。
「間違えてないよ〜。 狙っ た の よ ウフフ」
金月の後ろから一体のTAM。 それは先程飛んで来た敵の援軍だと思っていた機体だった。 金月と同じように外部スピーカーを使って答えていた。
「・・・・・・おいおい。 隊長あれって・・・」
「ええ、間違いないなの・・・」
ちゃーこと隊長は呆然とそれを見ていた。
金月に反抗したTAMの外部スピーカーから流れた音声に聞き覚えがあった。
「・・・あの馬鹿・・・。 まぁ最高の援軍って事なのは確かだな」
「わぁ〜い♪援軍援軍♪」
「・・・・・・馬鹿・・・」
そのTAMに乗っていた者を皆が確信して同時にその者の名前を呼ぶ。
『魅夜!!』
「はぁぁ〜い♪ 皆元気だったかなぁ?」
外部スピーカーから聞こえてくる声は死んだと思っていた魅夜の声だった。
その後金月のパイロットと魅夜の口論が始まった。
「き、貴様! お前はあの特攻してきたTAMのパイロットですわね!? 捕まえておいたハズなのにどうやって・・・」
「あ〜ら、レイラ少将? あの程度の牢が破れない私だと思ってたのかなぁ? 舐められたもんだわ。私も」
「き、気安くわたくしの名を呼ばないで頂戴! 名乗った覚えはありませんわよ!?」
「だから舐めないでってば〜。 貴女を舐めさせてくれるなら別にそれはそれでいいけどねぇ〜♪ そうそう。 TAMの制御システムに穴があるなんて知ってた?」
「制御システムに穴ぁ!? 何を言ってますの!? 誰か早くコイツを落しなさい!」
「もう遅いのだよレイラちゃん〜。 ほぉら、ポチッと」
「な・・・何をしたの!?」
「全TAMの活動停止&脱出不能ボタン押しただけなのだよ レ イ ラ」
「むきーーー! そんなものがあるなんて聞いてませんわ!?」
なにやら次々に動きを止める敵TAM達。
戦場は一気に静寂に包まれていった。
「もちろん。私の乗せて貰ってるヤツにはそのシステムは適応されないけどね。 後、この機能は敵味方関係なくTAMって形式の兵器は全部動かなくなるのだよ。 まぁ、ウチの花屑の機体は元々改造してあるから大丈夫だけど」
魅夜の言葉通り、こちらの機体はどれも動きを止める機体は無かった。
それより魅夜がここまでTAMについて詳しい事に驚いたが、それと同時に込みあがってくる感情を大尉は自覚した。
「・・・・・・魅夜っていいとこ取りし過ぎだよな」
「・・・・・・うん」
・・・・・・・・・・・・
その後、動く事が出来ず、脱出も出来ない敵TAMを大量に戦地に残したまま、花屑隊員達は無事に基地に戻る事が出来た。
その後現れた本国の援軍により敵のTAM達は、解体され、全員捕虜となったらしい。
大将格のレイラ少将はイーストサン、ウエストサン両国により裁判にかけられるらしい。
だが、そんな事は花屑・・・彼等にはどうでも良い事だった。
皆が無事に生き残ることが出来た。
それだけが大事だったから・・・。
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花屑基地内にて―――
「ウチの司令室のコンピューターに岩倉モンジって人のデーターベースが残ってたのだよ」
「は?」
「それを解析したら色々分かってね〜。 で、今回の行動に出たわけ」
「・・・特攻したってウソついてまで?」
「いや、それはウソじゃないのだよ〜。 脱出装置が働くとは思わなかったのだ。 で、敵国に捕まったんだけど、敵国の方にもデーターベースがあって、そっちにはより詳しい情報があったので利用させて貰ったよ。 ほら、最後に発動したアレね。 アレって二度と解除出来ないタイプらしいよ」
「じゃあ・・・もう戦争は終わったの?」
「いやぁ〜。 私達みたいにあっちも改造してくるだろうね〜。 暫くは開発とかで無理だろうけど・・・」
「それまでは、休戦って事だぁ♪ やったぁ♪」
「はいはい。 でも、今回の事で最前線から本国を防衛する方へ編成されるような通達があったなの」
「え〜。 本国嫌い〜」
「うん。 そういうと思ったなの。 キッパリお断りしたなの」
「さっすが隊長♪ んで、大尉、芽衣はこのまま残るって?」
「さあ? それは二人に聞いてみたいと・・・」
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基地付近の荒野――
「まったく・・・。 あのまま戻らなくてもなんとかなったんじゃないか・・・」
大尉はうなだれたように呟いた。 それに同意するように頷いて芽衣は微笑んだ。
「・・・・・・うん。 だけど、私達が戻った時皆嬉しそうだったね」
「・・・・・・だな」
「・・・これからどうしよう?」
「そうだな・・・。 しばらく戦闘も無いだろうからこのままこの時代に居てもいいかもしれないが・・・」
「時間はたっぷりある」
「そうそう。 ゆっくり答えを出せばいいんじゃないかと思うんだ。 紋治さんが「平和に暮らせるように」ってあのTAM停止機能をつけてくれたけど、それは解決策になってないからなぁ・・・」
「うん・・・」
「それに・・・」
「?」
「芽衣に言ってなかった事があるしな」
「?? 何を・・・?」
「いや・・・改めて言ってなかったって事で・・・。一度は言ったんだが・・・あの・・・そのな?」
言いよどんで何度も咳払いをしながら大尉は顔を赤くして芽衣から視線を逸らした。
「うん。 何?」
その視線を追いかけるように芽衣が大尉の周りを回る。
そうされて観念したように大尉は芽衣に向き直ると、真剣な眼差しを向けて呟いた。
「芽衣・・・、あの・・・。 俺はお前を――」
一陣の風が吹いた。
その風が何処からか花びらを携えて宙を舞わせていた。
その花は桜の花。
それを昔の人は花屑と呼んだ・・・。
これにして「花屑」は終了です。
これまで呼んでくださった方々、本当にありがとうございました。
文法や色々なところに至らない所はあったと思いますが、それでも応援してくださった多数の方々に感謝したいと思います。
次回があるか分かりませんが、その時がありましたらよろしくお願いします。
では、お疲れ様でした。
花屑 作者:霧香 陸徒
実はエピローグがありますがこちらでは公開しません。 ご了承下さい。