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花屑  作者: 霧香 陸徒
13/20

第13話「内部紛争勃発5」

全滅予定日まで後2日。 それまでの準備は少しづつ整ってきた。 後は、最終調整だけだ。

運命なんて俺が塗り替えてやる!



 深層心理とか良く言うヤツがいるが、それを自分で説明出来るようなのは実際は違う気がする。 無意識でやってしまう事と意識的にやってしまう事は実は同じ事だ。何故ならどちらも自分が行動してやった事には変わりが無いからだ。


 だから「無意識」を言い訳にするヤツは気を付けた方がいい。 もしそれが、身体が勝手に動いてしまったレベルでも、結果は同じなのだから、四の五言わずに謝るか挽回するべきなんだ。


 まぁ、それが単なる事故で済まされるような事なら笑って許せるんだがな…



―――――――――――――――――――――――



 一つ一つ装備を確認しながらTAMタムー01を起動させる。

 流石は隊長機というか、コックピット内部が他の機体には無いボタンやらレバーが幾つかあった。操縦桿等は変わらないが、その操縦桿の前部に『やっちゃえすいっち1』と白い文字で書かれた赤いボタンがあった。


 「……手書きかよ!」とか突っ込んだら負けなんだろうな。



 今更だが、俺は菜乃隊長の姫百合に乗り込んでいた。 もちろん隊長の残り香を嗅ぐ為だとかでは無い。

 まぁ、最終チェックみたいなもんだな。

 他の機体が問題無く動かせればいい。


 隊長曰く、機体それぞれに搭乗者の癖が付いてしまっている事もあるらしいが、姫百合は素直に指示を聞く。オペレーションシステムは変だったが…。

「ヒメユリ。 残り稼動時間は?」


「ハイ、大尉ィ。 ラストっ1500秒、ナノ」


 これである。オペレーションシステムの音声が菜乃隊長の音声を使っているようだ。 少し音の繋ぎが悪くて違和感があるが、気にしないでいると隊長が一緒に乗っているかのようで落ち着かない。

「音声編集ソフトの応用か…。 簡単に出来るっぽいな」


 ある一定の音域を登録するだけで後は自動で設定されるらしい。 だから、今流れてる音声は菜乃隊長が俺用に登録したのだろう。 遊び心が過ぎるんじゃないのか隊長?


 なんだか隊長の声は落ち着いているというか、緊張感が無い。 それだけで隊長として、上官としてはマイナスなんじゃないかと思う。 話を聞くと皆命令無視が多いらしいので間違いでも無いだろう。


 偉そうに言うつもりは無いのだが、それが文字通り命取りになってしまうかもしれないのならば仕方無い。調整させて貰おうと思う。


 上官やら、立場なんてのは知ったこっちゃない。 それより生きる事の方が大事なのだから、その後に処罰があるっていうならいくらでも受けてやる。


 俺はせんの行動や言動を観察して、自分なりの仮説を立ててみた。


 それは、彼女の能力が「真実」では無いという事と仮定した仮説だ。



 普通に考えれば「予言」なんてものはこの世に存在するわけが無い。


 だから、せんが考えた事が実際に起こるという事は・・・、それだけ彼女の頭脳が優れているというだけの話だった。彼女自身それを理解していない。それだけ頭の回転速度が速いのにも関わらず、それを自覚できないでいるというわけだ。

 そして、そんな事柄を事細かく覚えているという記憶力。 それだけ見ても常人とは言い難い。 

 ただ、そんな彼女の予想を上回るような事が起こらない程、正確な予言(予想)であるので、誰も疑問に思わないという事みたいだが・・・。 それを出し抜くのは簡単だった。


 彼女の予想不可能な事をすれば良い。


 俺はまず、TAMのパイロットの特徴に目をつけた。

 

 芽衣は長距離射撃が得意なのに、彼女の機体はその専用の機体では無いという事。


 香具羅の機体は長距離射撃用ではあるが、彼女の性格上、それよりは接近戦の方が良いという事。


 ちゃーこは性格と機体の相性は良さそうだが、どうも突貫する癖があるようなので、少し後ろに下がっていた方がいいだろうと思う。


 せんは、そのままでいい。 むしろ、そのままで無いと出し抜けない。


 魅夜は・・・、ある意味オールマイティな感じがするのでどこにでも配置できるだろう。


 一番重要なのは隊長と俺だ。 隊長機に俺が乗る事により、戦況を操作させてもらおうかと思ったのだが、何分実戦はまだ1度きりで、今日動かしてみてどうなるかという問題がある。

 ついでに、それを隊長が承認するかという事もあるので、とりあえず今日中になんとかしたいと思う。



 ビーンビーンビーン!


【緊急指令緊急指令! 本基地に未確認の機体が10機接近中! 敵国の物の可能性が高い! 各TAM搭乗者は出撃してください。 繰り返す―】



「な・・・!? 襲撃の予定は明日じゃなかったのか!?」


 警報が鳴り響くのを聞きながら、内心少し喜んでしまっている俺が居た。 その時点でせんの予想は裏切られてしまったのだ。 こちらが何もしなくても、運命は変わったらしい。


 ・・・後はこれを殲滅すれば・・・!



 暫くすると格納庫にみんながやってきてTAMに乗り込む。


 それを確認してから俺は隊長機に乗ったままスピーカーを使って号令した。


「皆! 敵は正体不明なの! 気をつけて行くなの!」


『了解!』


 ・・・先程の音声編集ソフトの応用で、俺の声を菜乃隊長の声に変えてみた。 乗る機体が無くて俺のTAM−06に乗ったハズの菜乃隊長が吹き出してなければいいが・・・。


 ちなみに、次に出撃がある場合は各自乗る機体を変えて欲しいと言ってある。


 だから多分


 TAM−02には香具羅が、TAM−03にはちゃーこが、TAM−04はそのまませんが、TAM−05には芽衣が、TAM−06には隊長が、TAM−07には魅夜が乗っているハズだ。


 それと、各自には通信をする場合はバレないようにして欲しいとは言ってある。・・・そこは演技力だが、別に期待していない。 出撃してしまえば後はそれで良いと思っているからだ。


「芽衣、大丈夫なの?」


 隊長の音声で"07ヒナギク"の機体に乗る魅夜に話しかける。


「・・・問題無い」


 その返答が「問題有り」だが、良い演技だ。 これでこれを聞いた他の者は07ヒナギクには芽衣が乗っていると思うだろう。


「あっれぇ〜? ヒナギクはそのままなの?」


 03モクレンに乗るちゃーこがそんな事を口走った。 コイツ・・・空気んでくれよ・・・。


「・・・・・・魅夜。 モクレンに乗りながらそんな事言ってもすぐバレる・・・」


「あ、あはは〜そうだね。 これは私とした事が失敗したみたいだよぉ〜」


 魅夜、ナイスフォロー。 すぐ様ちゃーこも魅夜の音声に切り替えて言い直した。


 ・・・まったく、先が思いやられるぞ。



 そうして暫く7機まとまって編制しながら飛んでいると、未確認の機体がこちらに接近してきた。

 未確認機なのは、新型だからだ。 オペレーションシステムのデーターには無いので、敵の出方を知る必要がある。


「05、03機は牽制で射撃を開始。 他の機体はその援護をしてなの!」


『了解』


 中距離の03機と長距離の05機に牽制でどう動くか見ようと思った。


 敵は10体、適当に撃てばどれかに当たるかもしれない。


 だが、敵は素早くそれを避けて、すぐに進撃して来た。 


 運動性能が格段に違う。 前回の戦闘で敵の新型機が現れた事が布石になっていたのか、それと同等か、それ以上・・・。そんな敵が10体も現れた事になる。


 戦力差が違いすぎる!?


 だが、戦力の差が戦局を左右するわけでは無い事を教えてやる。 ・・・ゲームのやりすぎだが、ゲームも、現実も戦術さえしっかりしていれば覆すことが出来るはずだ。

 後は、それをどう実行するかだが・・・。


「空中戦は不利なの! 各自地上に降りて障害物の陰へ隠れて! 捕捉されたら全機でそちらへフォロー! それまでは牽制を続けてなの!」


『了解』


 相手のサーチ能力がどれほどなのか分からないが、物影に隠れて奇襲するのは常套手段だ。


 全機が地上へ降り、岩陰等に身を潜めると、敵も地上へ降りてきた。


「ワイドスラスター・・・シュート!」


 05キキョウに乗る芽衣がそこへ発砲する。 一筋の光線が途中で幾本の光線に分かれ、数機を襲う。


 油断したのかその攻撃で4体の敵が撃墜された。


 一気に物量ではこちらが勝った。 だが、敵の機体の方が性能は上なので油断はまだ出来ない。


 前回の戦闘のような馬鹿が乗っていれば話は早いのだが、今回はそういう相手ではないらしい。 黙々と徐々に距離を詰めて来ている。


 

「――! 不味い!? 大尉!」


 02ボダイジュから香具羅の通信。 この場合06オニユリへの通信かと思ったが、咄嗟の事なのでどうやらこちらへの通信らしい。


 シュボッ!!


「!?」


 一瞬何が起こったのか分からなかった。


 俺の隠れていた岩壁が一瞬にして根こそぎ無くなっていた。 高出力の砲撃だったらしい。


 幸い機体にはダメージは無かったが、次に同じ攻撃を食らったら無事では済まないだろう。


 ・・・なんて反則な攻撃だよまったく・・・。


 それにしても、こちらに向かって「大尉」なんて言ったら駄目だろ香具羅・・・。


 まぁ、そろそろ潮時か。


「こちらは大丈夫だ! もういいぞ! 各自好きに発言しよう。 あんまり悠長な事を言ってられないらしいからな」


『了解!』


「え・・・? 大尉!? 隊長機に乗ってるのぉ!?」


 バレて無かったらしく、せんが驚いたような声を上げた。

 

「そういう事だ。 未来は変わっただろ? せん」


「え・・・と・・・。 分からないよぉ・・・」


 せんの口から「不明」と出た。 それだけで未来は変わっている。


 なら・・・後はがんばり次第さ。


「って事で菜乃隊長! 後は指揮権を任せるぞ! 花屑の本領発揮させてくれ!」


「了解なの! ・・・と言いたい所だけど、辞退するなの。 指揮は引き続き大尉がやってほしいなの」


 オニユリに乗る隊長がとんでも無い事を言い出した。 俺がそのまま指揮!?


「さっきまでの指示は的確だったの。 私より上手く皆を使えてるなの。 嫌だって言うなら命令なの。 指揮してなの!」


「・・・隊長・・・。 くそっ! どうなっても知らないぞ!?」


 俺はそう言いながら意味を無くした岩壁から出る。 そうすると敵から丸見えになってしまうが、それは誘いだ。 乗ってくれよ・・・。


「大尉! 出ちゃ駄目だよぉ!」


 せんが叫ぶ。 ・・・ここでせんがそんな事を言うのはとっても不吉なんだが・・・。


 だが、俺は俺自身に誓っていた。


 運命なんて塗り替えてやる!


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 俺が現れた事で敵の6機が一斉に俺に狙いを定めてくる。 後数秒で俺は消し炭になっているだろう。


 だが・・・


「今だ! 芽衣、香具羅!ちゃーこ!魅夜!」


「・・・・・・了解」

「分かったわ! 大尉!」

「おぉぉし! いくぜぇぇ!」

「うっふふ〜♪ チェックメイトぉ♪」


 こっそり移動していた4機が側面から奇襲をかける。


 俺に注意を逸らされていた敵はその奇襲に反応できずに各自直撃を食らって撃沈した。


 残りは後2機になった。


「よし! 後は・・・任せた!」


 だが、残り2機は無傷で俺へ攻撃して来ていたので・・・。 俺はそれを避ける事も出来そうもなかった。


 これだけ減れば、後は大丈夫だろう。 ここで俺は退場させてもらおうかな。


「そんな事! 許さないなのっ!」


 06オニユリのグリーンインバリットシステムを使って隊長は俺と敵の間に割って入ってきた。

 グリーンインバリットシステムはその緑の膜による絶対防御が出来るが、こんな使い方が出来るのは熟練の者である隊長ぐらいかもしれない。


「勿体無い・・・。 有効利用しようか! 皆後ろへ着けぇ!! グラビティブラストウェーブ発射!」


 グリーンイッバリットシステムの効果が残っている間に俺は超兵器を発動する。


 効果が現れる間までに芽衣達が後ろへ下がるのを確認してから「やっちゃえボタン」をぶん殴る。


 そして、その絶望的爆発は敵の機体を捉えて殲滅。


 ・・・・・とか、そう簡単には済まなかった。


「何!?」


 芽衣達が下がった事を察してそちらに敵も着いて来ていたようだった。


 そして、敵の攻撃が芽衣達へ向けられた。


「きゃ!? 何よコイツ! あっち行きなさいよ!」


 近くまで接近してきた敵へ近距離専用機体の02ボダイジュが応戦するが、その攻撃を敵は難なく避けてしまう。


「香具羅! こっちに任せろぉ!」


 そこへちゃーこが加勢するが、それも予期していたのか一気に距離を取って牽制射撃して逃げられてしまう。


「くそっ! 後2体なのにちょこまかとぉ!」


 こちらが完全に戦力で勝っているのだが、動きが早すぎてまともに戦うと全く攻撃が当たらない。


「・・・大尉ぃ〜」


「ん? なんだ? せん・・・か?」


 そんな状況でせんが話しかけてきた。


「恥ずかしいんだけど、やっと分かったよぉ〜。 この戦闘、私達の勝ちだよぉ♪」


「お・・・・・勝利の女神さんのお墨付きか!」


 最初に否定していたが、せんが言う台詞にはそれだけの力がある。 物理的に可能でなければせんは「全滅」と言っていたハズなのだから。


 そういえば、せんの機体の性能って良く知らなかったのだが、この後にそれを知る事になる。



 チュドーン!



 急に敵の1体が爆発した。


 誰かが攻撃したわけでは無い。 ただ、回避運動をして地上へ着地しただけだ。


 着地して爆発・・・地雷か!


「私の機体は、トラップ専門だよぉぉ♪」


「・・・お前がそんな機体に乗ってたら最強だろうがオイ・・・」


 先を読む事に長けたせんが設置するトラップなのだ。 それを避けるには常識で考え得ない行動でもしない限り回避不可能だろう。


 残り1体になった敵はその事で動揺したのか、動く事が出来ないでいるようだった。


 チェックメイト。


「よし! 皆 集中攻撃ぃ〜!」


『了解!!』




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 後は動けなくなった敵には可哀相だが手加減無しにリンチで終了だった。 いくら動きが早くても全員の攻撃をまともに食らって耐えれるなんて事は無かったようだった。



「・・・なんとかなったな」


 01ヒメユリのコックピットで仰け反って大きく息を吐いた。


 急な戦闘だったが、結果は全員無事に帰還。


 せんが予言した運命に打ち勝てたようだ。



 俺達は勝利を噛み締めるように喜びながらはしゃぎ通信をしながら基地へと帰還するのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それにしても、最初話を聞いた時はどういう事かと思ったらそういう事だったのね」


 基地に戻って香具羅達に事情を説明すると、皆すぐに納得したように頷いてくれた。


「私は、最初から大尉を信頼してたのだよ。 香具羅ちゃんはまだまだ愛が足りないのだねぇホホホのホ〜」


 魅夜は香具羅にチョークスリーパーを決めるように後ろから羽交い絞めにして―実際は抱き着いているだけだが―自慢気にいっている。


「だけど、大尉も水臭いよな。 そんな事なら最初から言ってくれれば良かったのに」


 ちゃーこがそんな事を言うが、ちゃーこの性格上隠すような器用な事は出来るとは思ってなかったからなんだが・・・。 それは言わないでおいてやろう。 怒られそうだし。


「大尉には大尉の考えがあったなの。 分かってあげてちゃーこ」


 事情を知る一人の隊長がフォローしてくれる。 隊長機を譲ってくれただけで無く、そんな事まで言ってくれるなんて隊長は出来た人だなまったく・・・。


「結局・・・私には予知能力は無かったんだねぇ〜♪ ふふぅ〜♪ そうだったんだぁ〜♪ ふふぅ〜♪」


 せんは帰ってきてからずっと笑顔だった。 自分の予知が間違っていた事にショックを受けるかと思ったら、どうやら逆だったようだ。 後で聞いた話によると、彼女はその力から忌み嫌われていたらしい。 彼女自身もそんな力を嫌って花屑ではずっと秘密にしていたらしい。 自分が予知した結果が良い結果ならまだいいが、今回下した予知のように「全滅」なんて言われて本当に全滅してしまったら、そりゃ忌み嫌われるだろうが・・・。 実際はそういう事では無く、ただ先見能力が人並みはずれているだけだったというわけだ。


 それも今回までは無自覚だったのが、今回の作戦で自分の能力に気付いてそれを使うという事を覚えた彼女は、もはや無敵かもしれない。


 そういう意味で戦力は大幅にUPしたんだと思う。



 良かった良かった・・・。 これで終わればな。


「・・・・・・そういえば大尉。 今回の戦闘が終わったら、好きな人に告白するって言ってた」


「いぃぃ!?」


『!?』


 芽衣の呟きに俺と他の一同が騒然とする。


「あ・・・えーと・・・」


「何、何!? どういう事!?」

「大尉好きな人が居るなの!?」

「ちょ・・・そんな話聞いてないよ!」

「もしかして・・・私かなぁ?」

「絶対違うわよ! で、でも・・・私じゃないわよね?」

「・・・・・・大尉。 誰?」


「う・・・・」


 まさか口から出任せなんて言える雰囲気じゃなかった。


 ここは嘘でも誰かの名前を言わないと・・・。


 ・・・・・いや、昨日芽衣が「責任を取って」と言ってなかったか?


 軽はずみな発言は出来ない。


 となると、少なくとも一番好きだと言える奴の名前を言わなければならない。


 俺もこんな事をふざけて言いたくないしな。


 ・・・・・・


 隊長は・・・、いい人だけど、そういう相手では無いと思う。


 ちゃーこも同じだ。


 魅夜は・・・どちらかと言えば男友達に近いイメージだしな。


 香具羅は、・・・違うな。


 せんは、俺はロリコンじゃないから論外だ。 ・・・一応な。


 芽衣は・・・なんとなく好かれている気がしないからなぁ・・・。


 

 やっぱりよく考えたら俺自身にそういう感情が芽生えてないんだからどうしょうも無い。



 ここは・・・仕方無い。 お茶を濁すか。


「俺が好きなのは・・・・・・芽衣だよ」


 ・・・・は?


 自分で自分の言葉に突っ込みを入れたかった。 今・・・なんて言った?


「えぇーーーー!?」

「芽衣ちゃんかえ! やっぱり大尉は大人しい方が好きだったのねぇ〜ガクーン!」

「・・・・・・残念なの」

「うわ〜ん芽衣きらい〜」

「・・・・・・芽衣、恐ろしい子」


 残った5人が各々に騒いでいる。 しかし、言われた芽衣は・・・


「・・・・・・・・・」


 何も言わずに俯いていた。


「あ、いや・・・芽衣。 今のは冗談だ。すまん」


 すぐに謝罪するが・・・


「あ、やっぱり嘘だったんだ〜」


 と他の5人だけ反応した。


 芽衣は・・・動かない。


「芽衣? 芽衣??」


「あら? フリーズしてるわこの子」


 魅夜が芽衣を覗き込むと真っ赤な顔のまま固まっていた。 どうやらオーバーロードしてしまっているらしい。


「それじゃ、やっぱり大尉は誰が好きだとか無いのよねぇ?」


 魅夜が率先してそんな事を聞いてきた。 他の4人もそれに従うように聞き耳を立てている。


「あ、まぁ・・・そうなるな」


『オッケェェー!』


 芽衣を覗く全員が何故かガッツポーズをして叫んでいた。


 ・・・・・・芽衣。 確かにこれは・・・責任取る必要あるみたいだな・・・。


 魅夜やちゃーこだけかと思ったら香具羅も隊長もせんも同じようにしているって事は・・・。


 俺は・・・もしかしてファイナルジャッジの時を迎えなくてはならない?


「・・・・・・・・大尉」


「お。 気がついたか芽衣。 あのな、さっきのはな・・・」


 芽衣が気がついたのでさっきの発言を取り消そうとするが、芽衣の目が何故か潤んでいた。


 嫌な予感がしてしまった。


「・・・・・・私も・・・好きです」


「ういぃ!?」



 その後、花屑内に、俺を取り巻いての内部紛争勃発。


 渦中の人である俺は・・・。


「ハーレムハーレム・・・なんて言えるレベルじゃねえぞ!」


 魅夜はどうか知らないが、全員が真剣に慕ってくれているようだったから、俺はそれにどう答えて言いか分からなかった。


 自分の気持ちがどうなのかと言われれば、皆嫌いじゃない。


 だから・・・、どういう結果であっても傷つけてしまうのではないかと思ってしまって余計に答えを出せないでいた。


 それにしても・・・。どうしてあの時俺は「芽衣」の名前を言ったのだろう・・・。


 一番冗談にしても良いと思ったから?


 そうじゃない。 そんな酷い事をしたいとは思わないハズだ。 無意識でも・・・。


 無意識という言葉を俺は嫌いだった。 どんな行動も自分の思っている事で説明出来ないだけなんだ。


 なら、答えは・・・。


 ・・・・・・・


「菊池女史に相談してみるか・・・」


 俺は渦中では無い唯一の女性の菊池女史に話を聞く事にした。


 そして有難い言葉を頂いた。


「知らんわ。 自業自得じゃろぅが」


 一言で切り捨てられた。


 俺が多分同じ立場でも同じ事を言ったとは思うが・・・。 菊池女史厳しいっス。


 それでも、菊池女史はそう言いながらも話を聞いてくれた。


 そして、最後に「お前さんの中で決まっとるんじゃろうが。 なら、どんな結果でも誰も文句言わんわい。 そんな奴等じゃ皆」と言ってくれた。 それがどんな言葉より嬉しく思ったのは俺の今までの環境がそうじゃなかったからだろう。



 俺は家で家族とあまり話をしない奴だった。


 学校には・・・実は行ってなかった。 在籍はしていたが、自主不登校・・・まぁ、引きこもりってやつだ。


 学校に友達も居なかった。 ただ、灰色の毎日を過ごしていただけで、そんな毎日が嫌になって俺は自分の部屋に篭っていた。


 何が悪いわけじゃない。 俺が悪いというのは分かっていたのだが、そんな現実に目を向ける事が出来なかった。


 両親もそんな俺を叱る事も無く、多分諦めていたんだと思う。 毎日食事が俺の部屋の前に置かれ、それを摂取してインターネットの世界へ遊びに行く毎日だった。


 そんな俺にも幼馴染が居た。


 そういえば、名前・・・なんだったっけな・・・。


 思い出せないが、確か俺がこの世界に来る前の日に会っていたような・・・・・。



 あぁ、そうか。


 だから俺はあんな事を・・・・・。


 

 俺の幼馴染の名前。


 岩倉 芽衣子。


 そう。 芽衣だ。


 今までずっと芽衣の苗字を知らなかったから考えもしなかったが・・・。


 同じ名前だったから咄嗟に名前が出てしまったんだな。



 そう納得して俺はその日、そのまま床へ就いたのだが・・・。


 自己満足しただけで、なんの解決にもなっていなかったのを失念していたんだ。

内部紛争勃発の最終話です。

次回から話が段々核心へと向かっていくのか、それとも全くゆるい展開になるのか・・・それは作者にも分からないです(ぉぃ)

次回も大尉のハリセンがうなります(違)

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