第1話 僕の知らない人生
どうでもいい毎日が嫌だった。世界なんてなくなればいいと思っていた。自分だけが人生を全うするなんて反吐が出る。それならこの世から消えたかった。
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大体にして僕は幽霊よりも存在がない人間だった。それで十分だったし、主役なんて真っ平御免だった。そうやって僕を知る者を最小限にして生きていく筈だったんだ。だから今目の前にいる死神のような怪物がいたって死期が来たんだと納得できた。それでよかったのに。
「大丈夫かい?」
突如上空から降ってきた槍が怪物を突き刺した。槍の傍らにいた金髪に話しかけられる。体格からして人間で、顔は目の部分だけ黒く覆われていて金髪男だという事以外分からなかった。その間怪物は生きる為に必死にもがいていた。無駄だというのになぜ足掻くのか。
「そのままでよかったのに…。」
憎しみを込めて言ってやった。あと少しだったのに。
「だったらサッサと殺されれば良かったろ?君の事情なんて俺は知らないね。」
金髪は怪物に手を伸ばすと宝石のような者を取り出した。怪物はピタリと動きを止める。そして宝石を握り潰した。それはキラキラと散って、地面につく前に消えた。怪物の姿も塵のように無くなった。金髪は僕を見て言った。
「アリウラの世界へようこそ。」
僕の知らない人生が始まった瞬間だった。