さよなら、ティアドロップ
「もしもしあかり…ちゃんと留守番してる?」
「もうすぐ帰るからな。お前の好きなケーキも…危なっ。」
ガッシャン
「⁉」
「お父さん!お母さん!」
がばっ
「はーっはー。」
私は浅野あかり、17歳。
「雨のせいか。またあの時の夢を見るなんて。」
小学生の時両親が死んだ事故の日を思い出すから雨は嫌い。
「ん?あ…!もうこんな時間…⁉」
でも…
ばさっ
雨は…
「雨なんか嫌い。」
「え?」
「えっ。あっ…傘忘れちゃって。」
バサ
「雨が嫌いなら青空をあげるよ。」
黒い傘の内側に青空ー⁉
好きな人と出会えた日も雨だった。
あれから今も大好きな…
「樹!」
「おはよう。あかり。」
私の彼氏。
「ごめんね。遅くなっちゃって。」
「ううん。それより、はい、タオル。濡れたままじゃ風邪ひくぞ。走ってきたのか?」
「あっうん。ありがとう。」
本当樹は優しいな…
「遊園地行こうと思ってたけど雨だし来週にしよっか?」
「ごめん樹。来週は両親の命日だからお墓参りに行くの。」
「あっそうか!ごめん…っ」
「ううん。あれからもう10年経つんだよね…。あの事故の日もこんな雨の降る一日で、隣町の交差点で飛び出してきた男の子をよけようとしてお父さんたちの車はスリップしちゃって。」
「え…。…そうだったんだ。」
「うん…。ってデートなのにしんみりさせちゃってごめんね!次はもっと明るい話を…」
「あ、いや。悪い。このあと用事あるの忘れてた。」
「!え⁉あっ樹?行っちゃった…。」
どうしたんだろう?いつもはこんたことないのにな…。
「あかりごめん…。一緒に帰れない。」
「え?どっか寄るの?それなら私もー…。」
「違うんだ。あかり。そうじゃなくて。俺があかりの両親、殺してしまったから。」
「え?」
「あの雨の日、道路に飛び出したのは俺なんだよ。」
ザァー
え…。
「うそ。」
「うそじゃない。」
「うそでしょ⁉」
「うそじゃないんだ。」
「そんな冗談いくら樹でも…っ。」
「ごめんあかり…。」
「!」
そん…な…。
「俺ずっと後悔してたんだ。あの時俺が飛び出さなければって…。ごめん。本当にごめん…っっ。」
「謝られたってお父さんたちは戻ってこない…⁉」
「あかり…。」
いくら…いくら樹でも…許せないよ…。
「ごめん…。別れよう。」
ザァー
「ごめんね。お父さん。お母さん。私樹があの時の子供だっめ知らなくて…。2人の命を奪った人を好きになるなんてね…。お父さん、本当に樹があの時の子供なの?お母さんっ、ちがうって言ってよ。ねぇっ。お願い。ねぇ…」
どうして樹なの…?
「おはよー」
「…」
あっ…
「「!」」
スッ
「!」
樹はいつも優しかった…。きっと本当に苦しんで来たんだ。わかってる。わかってるけど…!やっぱり許せない。
ザーッ
「やだ…。また雨!朝晴れてたから傘持って来てないのに…。」
バサっ
えっ…。
「樹っ⁉」
あっちがっ…
「ごめんなさい!」
「?」
「何やってんだろ私…。」
また樹のこと思い出すなんて…。
時が経てば忘れられるよね。樹と出会う前の毎日に戻るだけ…。
どんっ
パサッ
「あっすみません…!」
「気をつけろよ!」
「やだ、私。全部落としちゃっ…。あっ…。ははっ…。私の手帳樹の事ばっかり。明日樹の誕生日だ…。本当なら一緒にお祝いしてたのかな…。……っ。」
忘れるなんてできない…。やっぱり私樹が大好きだよ。
「ハッピーバースデー樹。」
「なっあかり⁉」
「はい。プレゼント。」
「何言って…。俺たちはもう別れたんだ!それに俺はあかりの…。」
「樹だって1人で苦しんできたんでしょ?たくさん悔やんできたよね?それでもう十分だから…。」
「あかり…。あかりは本当に俺の誕生日を祝えるのか?ご両親が生きられなかった年月なのに命をうばった俺はあれからもこうして年を重ねてる。」
「祝えるよ。好きな人の誕生日だもん。」
「!」
ばしっ
え…
ザーッ
「じゃぁ雨だってもう平気なんだな?」
樹…。
「うん。平気だよ。」
「あかり…。やっぱり俺たちは一緒にいちゃいけないんだよ。」
「えっ。私泣いて…⁉」
「これも返す。」
ドサッ
「待って樹。行かないで!私本当に樹のことが好きなの…!」
スタスタ
「…」
「!?」
ベシャ
「樹ー…!」
ザァー
「…そんなのいやだよ。!樹からもらった傘が‼」
これまでなくなったら私…。
「!」
キキキキキーッ
ドンッ
え…。
「おいあんたたちっ。大丈夫か…⁉」
樹⁉私を助けに戻って…⁉
「樹…。大丈…っ。」
「あかり…。あかり、無事なのか…?」
「私は大丈夫だけど樹が…。」
「いいんだ俺は…‼」
樹……?
「俺の命はあかりのご両親にもらった物だから。あかりが無事ならそれでいい。」
「!何言って…。そんなことしなくても樹はもう十分苦しんできたじゃない‼もう十分っ…。」
「いや。だって俺は…あかりと恋をして幸せだったから。」
えっ…。
「俺なんか幸せになっちゃいけない。一生罪を償っていくって思ってたのに…。あかりを好きな気持ちだけは抑えきれなかったんだ…。」
樹…。
「…そうだね。樹は私の大切な人をうばったのに…。でも、また大切な人をうばうつもり?」
ぎゅっ
「あかり…?」
「絶対死んじゃやだからねっ…。もう大切な人を失うのはいや‼」
「あかり…。」
お父さん、お母さん。樹をつれてかないで。 …。
あれから数ヶ月経った…。
「樹っ。退院おめでとう樹。」
「あかり…。本当に俺でいいのか?」
「うん…。それにね、お父さんやお母さんも樹のこと許してくれてると思うんだ。」
「え?」
「だってほら…。こんなに晴れた。」
「キレイな青空…。」