等しく彼は私であるからだ。
彼と私はいつも一緒にいる。朝も昼も夜も、私達は常に行動を共にしていた。
だからか、ほとんどの人は彼を私の‘恋人’だと思っている。そしてよく少しだけ僻みの混じったからかいの言葉を投げかけてくるのだ。
彼はそれを否定するどころか嬉々として逐一報告してくる。
私はただただ「ふぅん、良かったね」「そうなんだ」と欠片も興味がないので棒読みの返事を返す。
なのに私が反応を示すだけで彼はいつも満足そうに笑った。小さな頃から相変わらず思考の読めない人だと思う。
「ね、今日昼休みにどこ行ってたの」
ココアを飲みながら面白くもないお笑い番組を見ていた私に彼が後ろから抱き着いてきた。
間にソファーがあるから、彼は私の首に腕を回して肩口に頭を擦り寄せてくる。
昼休み?今日は何かしてたっけ?朧げな記憶を探って思い出す。
「あぁ、たいしたことじゃないよ。告白されただけ」
回された腕に力が少しだけこもった。苦しさは、ない。
「何それ。俺がいるのに告ってくるとか。…なんて返事したの?」
「あなたのこと知らないし、今話してみても興味は湧かないから付き合う気はありません」
「ははっ、いい気味!」
一言一句間違えずに言うと彼は嬉しそうに体を震わせて笑った。タイミングよくテレビの中でも笑いの渦が広がっていた。
笑いが収まった彼が縋るように呟く。
「俺がいるんだから、俺以外に興味持つなよ」
嫉妬深いのか、自信がないのかよく分からない声音に私は視線をテレビに向けたまま頷く。もともと私は他人に対して興味や関心など一ミリも持っていない。
彼と一緒にいるのは、彼は他人ではないからだ。むしろ彼は私に最も近い存在である。
だからこそ私は彼の傍にいて、彼は私に執着を示す。
「持たないよ。多分、子供を産んだとしても興味は湧かないと思う」
自分が産んだ子供であっても、その子は彼ほど私に等しくないから。私の言葉に安心した様子で「そっか」と返事をする。
そんな彼は私の双子の弟だ。
姉に異常な執着を示す双子弟と、唯一血の繋がりがある弟以外には興味のない双子姉のお話。
双子は生まれすぐに両親を亡くして別々の家に引き取られたが、偶然幼少期に出会った。
どちらの家族も周囲も双子姉(双子弟)の恋人が血を分けた姉弟であることには気付いていない。
弟は嫉妬深い微ヤンデレ。姉は弟のみに包容の無関心。