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月からのお迎え

月からのお迎え


「かぐや姫って、本当にいたの!?」


 そんなことを息子に聞かれて、私は戸惑った。小学校に入ったらさすがにわかりそうなものだ。でも学校で、聞いたのだそうだ。誰かに。かぐや姫というのは、本当にあったことかもしれないという人がいるらしい。そういえば聞いたことが、あるようなないような……そんな眉唾物の話だった。


 天文学なんて言葉もなかった当時、空から人がやってきて娘を連れ去っていく、という発想自体が奇抜すぎて、宇宙人の誘拐事件と印象が似る。宇宙人による誘拐が、当時もあったのではないか?ならばこの話は、事実が語り継がれたのではないか?……そんなネット上の記事を、後から調べた。そういう話、あることはあるんだ。でもこれだと宇宙人の誘拐はあるという話になってしまうから、息子にそれとなく教えないといけない。そんなわけないって。そのときの話し相手は、大学の同級生。ゼミで一緒だった友人は、たまに会う程度の間柄だった。


「しない方がいいぜ?」


 ……何をかと思えば、妙なことをしない方がいいという。かぐや姫実在説を、子どもが考えているなら邪魔をするな、というのが友人の意見。考古学を専攻して卒業せずに中退した友人は、好きに考えるといい、と言っていた。子どもの夢を壊すなっていうの?周りから浮いて人生踏み外したら、どうするのよ!たかが御伽噺で!八つ当たり気味に言ったんだけど、かぐや姫実在説なんて馬鹿げたことを言うつもりは、友人にはないらしい。それどころか宇宙人もどこぞの誰かの作り話で間違いない、一致する理由はあたりがつくと知った顔をする。じゃあ言ってみなさいよ、とけしかけると、ホントに言った。


「考え方があるんだ」


 老人が竹を割る。光、娘。美しく育つ。空を見て泣き、娘は去る。見送る。空の果てに。ストーリーテリングの絶対原則、過不足なくかき集めればこうなる。どこからでも見える遠くのものとなれば空くらいしかなく、人のイメージを空の彼方へ送る。大昔も現代も、上手いヤツは同じ答えを出す。オレもそれくらい上手かったら、左団扇なんだがな。友人が当たり前に言っていたことが全然わからなくて、わかったような顔をしていたからどういうことか聞けなかった。何を言ってたんだろう。家に帰ると息子は、押し入れの奥からヒーローの人形を取り出して、何かを考えていた。

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