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噂が噂を

噂が噂を


「火星人よ!地球の終わりよ!」


 ……オレのお袋は、そう叫んで若い頃大騒ぎしたらしい。私ってバカよね、とティーンだったオレを連れて警察から帰るとき、話していた。若いときは、なんでも思うしなんでもするし、全部疑問に思う。これから気をつけてね、と穏やかに話した。きつく言っておく、と警察に言っていたのに、舌の根も乾かぬうちにこのザマ。それを口に出すと、若いときはなんでもするの、母さん若いからね!と話をはぐらかした。


 お袋が若い頃に、ラジオを聞いていた。宇宙人の襲来、人類滅亡!なんてバカみたいなラジオドラマを聞いて、本気にしたのだそうだ。たくさんの人が同じように騒いでいると、思っていた。警察に駆け込む人がたくさんいて、もうお終いだと、思っていた。後から報道があって、そんな事実はなかったらしい、とずっと後で知った。私が騒いでいただけだと思って、恥ずかしくなって、今はあまり人には言わない。伝えた方がいいとは、滅多に思わないらしい。


 空飛ぶ円盤なんてバカみたいな話で大騒ぎしたのは、オレと同じくらいの年齢の頃だという。いくらなんでもバカすぎるだろう、とオレが悪態をつくと、そうね、あんたみたい!なんてくだらないことを言う。活動写真やレコードに夢中になって、全然目を離さない。そんな息子を見ると、私ってバカだなあっていつも思う。家に帰って、もっとこういうの読みなさい、と一冊の本を取り出した。


 海底二万哩?なんだこれ、と聞いても、お袋は答えない。とってもおもしろくて、あんたの人生が変わるかもしれないよ。ウチのお袋は、今もバカなのだろう。おかげでオレは、いい年になった今も未来の科学について考えている。

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