二次元の向こう側に
試験作「二次元の向こうに」
X、Y、Z。三つの軸が示す座標の計算は……。あーあ、数学なんて受験に必要ないなら教科書ごとぶん投げるのに、俺は自分の真面目さに腹が立つ。大学に入れたらバンドを始めて遅めの青春を謳歌し、あわよくばスターに……そんな人生設計のために必死こいて勉強していた。人気者になって、金持ちになって……それを、音楽でやりたい。他には特に興味ないしな。だから名前だけの大学にギリギリで入って、名前だけの大学生になる。それしか考えはなかった。その後どこに分かれ道があるかは、入ってみたことがないからわかんねえ。
だけど模試の成績がここまで悪いとそんなことは言っていられない。問題用紙を見た瞬間、何から何まで意味わかんねえ。もちろんデタラメのマークシートは点数が地の底だから、片っ端から覚えたという馬鹿より馬鹿の扱いを受ける。最低でもこれくらい点数にならないと受かるものも受からない、と言われて頑張っているのに、クラスの端っこにいた奴が「難しいに決まってるだろ」とちょっかいを出してきた。だからやってるんじゃねえかと怒ったのに、そうじゃないと言いやがる。何がそうじゃないのかって、聞いてやった。
俺のやっている三つの軸を使った座標の計算は、理に適っていないらしい。面倒くさくてややこしいばかり、そんなことを考えていたらわかるものもわからない、といちゃもんをつけてくる。お前は理科と数学ばっかりやってるから人の気持ちがわかんねえんだと止めてるのに、さっぱりわかっていないようで次から次へと押し付ける。どこの世界であろうと有用なのは極座標表示、中心点と距離、方向で示すのが……。ええい、わかった。もう黙れ。もちろんわかっていないのにそうやって黙らせようとしたら、そいつは余計なことを言って立ち去った。何をするにしても、どこの世界に行っても、わかってた方がいいよ。あーあ、あいつのせいでやる気がなくなったと人のせいにして家に帰ってテレビを見る。バカやってら、何が厚切りだよ。テレビという箱の奥、紙の中の漫画の世界。その奥行きを、俺はまだ知らない。




