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悲劇と喜劇と
悲劇と喜劇と
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もうすぐお医者様が来ます、と告げられても何も言えず、ああ、とだけ答えた。私は撃たれたのだという。自分の国の軍人に首相が撃たれて、政治体制は絶対に変化する。だから死ぬわけにはいかないのに、医者が来る。おそらくこれで終わりだろう。
大戦が一度終わり、まだ何かが潜む。それは、悲劇とは似ても似つかぬ姿で同じことをするのかもしれない。悲劇ではない。喜劇。少しだけ角度を変えれば、この二つがすり替わる。自分の国で独裁者の映画を撮ると言っていたあの男を、喜劇の王とはよく言ったものだ。私がこれから死んでも、喜劇でしかないのだろう。やってきた医師に、私は言った。
「負けないよ」
お前の武器は、誰でも持っているものだ。だから皆に燃え広がり海を渡る。誰もが持っているのだから、自分で押し返すことができる。正しい者が正しく使えば、誰も負けることはない。だから負けない。私はこの想いが続いていくことを願って、一本の注射を受け入れた。




