十二日目
こんにちは。また来てくれましたね。
どうも、支配人の様子がおかしいのです。
今日のお話に変なところがあれば、すぐに語り場を出て、あの場所へ向かってください。
やあ、今日も来てくれましたね。あの異世界の語り部ですか? ああ、彼、まだ来てないんですよぉ。
本日も私がお相手しましょうか ? いやいや遠慮なく。あの語り部よりも上手く物語を語ってみせましょう。
…きっと明日も私の話を聞きたくなるに違いありませんからねぇ。
あるところに、一人の男がいました。彼の名前は翔。彼は所謂、殺し屋です。
そんな彼にも、一つの楽しみがありました。それは、物語を語ることです。ある時、見知らぬ男に誘われて始めた、語り部という副業。儲かるわけではない。しかし、聞いてくれる人がいる。それだけが、その仕事のやりがいでした。
そんなある日、いつもの語り場に向かうと、突然、後ろから知らない男に拘束され、動けないようにされてしまいました。
気配は常に警戒していたはずだった。だのに、捕まってしまったのです。
彼が力ずくで拘束を解こうとすると、彼を捕まえた男は、スタンガンを取り出しました。
彼が気絶すると、男は立ち上がり、語り場へ向かいました。
これで、彼の客を奪うことができる。
え、あ、ちょっと、どこ行くんですか!? まだ途中!!
話の途中で立ち上がり、裏路地のゴミ捨て場へ向かった。
そこには、縛られて倒れている、あの異世界の語り部がいた。
「よっ。久しぶり」
語り部は呑気に声をかけてきた。
支配人の話が本当ならば、もう何日もこのままだったはずだ。
「おい、何してる!!」
支配人が追ってきたようだ。




