一日目
ようこそお越しくださいました。
ここは、裏路地にある秘密の語り場。
一つ、異世界ものの話を聞いて行きませんか?
とっておきを用意してありますよ。
「他人の不幸は蜜の味」とはよく言ったものですが、これ実際、性格の悪い言葉だと思いませんか?
ここに、一人の男がいます。これは、私が知る限りのあの人の物語。
彼の名前は代木葵。この世界にごまんといる魔術師の一人です。
凄腕かと言われればそうじゃないし、かといって下手くそかと言われれば、そうじゃない。
本当、普通の、何の面白みもない、ただの魔術師。……え? 異世界の魔術師にしては、名前が日本人すぎるって?
ちゃんと順を追って説明するからちょっと待ちなって。…で、どこまで話したっけ。
あ、そうそう。今となっては彼は、見向きもされないただの魔術師。
彼は日本において、本当にごく一般的な学生でした。ええ、彼が超能力者であることを除けば。彼の親は俗に言う、毒親というやつで、彼の能力を利用して、不当に大儲けしていました。……どんな風に儲けたか?
それはここで話すにはふさわしくないな。
で、彼はもうそんな生活に疲れてしまいまして、ある夜中に家を抜け出し、車の行き交う道路に身を投げました。
目を覚ますと…死んだのに目を覚ましたというのも変な話ですが、とにかく目覚めたんです。
彼が目を覚ますと、そこはお城の大広間でした。
突然のことに戸惑っていると、王座に座っていた王様が言いました。
「この者こそ、異世界より使わされし伝説の魔術師に違いない」と。
彼は理解しました。ここは異世界で、自分が死んだと同時に転移してしまったのだと。…しかし、伝説の魔術師とは一体どういうことやら。
しばらく考えた末、魔術とは超能力のことではないかと考えつきました。
試しにその場で空中浮遊すると、王様は感嘆の声を上げました。
「転移したばかりでもう飛べるとは素晴らしい! 」
彼は伝説の魔術師として優遇を受けることになりました。
……おっと、誰か来たみたいだ。今日のところはこれでおしまい。続きが気になるならまたここへ来ると良い。
それじゃ、また。
また明日、お待ちしています。




