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侍女に恋を知り、国に挑む。末っ子王子の夜と昼  作者: 沢鴨ゆうま


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13 Fabula 忠誠の絆と隠された才能

 リルヴァナク修道院を訪れ、山岳地帯と森林地帯との境界ならではの雄大な景色を堪能した。

 そして、ザルク講師との対談は、互いの能力について共有する場となった。

 俺の能力に驚いていたザルク講師は、侍女たち一人一人と話してさらに仰天した。

 彼女らは、それぞれまったく違う能力を持っていたからだ。

 ただでさえ少ないフォルシエールと呼ばれる能力者――他国では魔法使いとされる人物――八人と出会ったのだから当然だろう。

 ただ残念なことに、シルヴァーヴィスタ離宮に戻らねばならなかった。

 元々、長時間の外出をする予定ではなかったため、使用人たちに迷惑をかけているのは明白だ。

 やむを得ず帰る話を振ろうとしたとき、突然ザルク講師が慌て出した――王家の方を長く引き留めてしまったと。

 俺たちから城の気配を感じ取ったのかもしれないが、盛り上がっていた話は中断された。

 そしてリルヴァナク修道院には、改めて訪れることを約束して帰城した。


「――理由はどうあれ、帰城があまりにも遅くなってしまったことは謝る……申し訳ない」


 心配をそのまま怒気の仮面に変えたような表情で立つヴォルフガングに、俺はまず謝罪を告げた。

 ヴォルフガングの頭の中は、俺が不在だった離宮の様子や、こちらに対して思う気持ちなどを畳みかけるようにぶちまけている。

 赤子の時から俺のことを知り尽くしている彼ならば、直接文句を言ったってかまわない。

 いつも俺はヴォルフガングにそう伝えているが、彼は決して立場を超えた行動をしない。

 俺が謝ると、ヴォルフガングは姿勢を正して頭を下げた。


「閣下、わたくしなどに対して安易に頭を下げないよう、お気をつけください。あなた様は、我々離宮に仕える者の長でございます。何があっても頭を下げない、それぐらいのお気持ちで接していただかないと、統率を取ることは難しいでしょう……申し訳ございません、出過ぎたことを口走ってしまいました」


 まったく、ヴォルフガングという男は。こういうことをするから自然と頭を下げもするんだ。

 俺が謝ったことを打ち消すために、自ら目上に対して出過ぎた態度をとるいう茶番をして、頭を下げ返してきた。

 これだけ俺のために動いてくれる人だ。感謝ぐらいさせてくれたっていいだろうに。


「ヴォルフガング、僕の完敗だよ。これからも変わらず、僕の下で支えていてくれ」

「勿体ないお言葉でございます。私などでも使えるのならば存分にお使いください。そもそも、シルヴァーヴィスタ離宮の使用人ですので」


 腹に手をやって抱え込むようにし、軽いボウ・アンド・スクレープをしてみせる。どうやら彼は、茶番を楽しんでいるようだ。

 そんな遊びができる仲であると、普段のやり取りから確かめ合えるのは幸せなことだと思う。


「それにしても、ザルク名誉講師に会われるのが思いのほかお早かったですな。先生はとてもお喜びになられたのではないですか?」

「ちょっと待て……名誉講師?」

「おやおや、あの方もお人が悪い。閣下にお伝えしていなかったのですね。ザルク・ミスティフラ――リルヴァナク修道院の名誉講師であり、リルヴァナク修道院最高位のアストラグナ。ご本人は、アストラグナの称号授与を辞退したそうですが……。それでも修道院関係者の間では、名誉講師としてはもちろん、アストラグナとしても認識しているとか。どちらにせよ、修道院の最高位に属する方であります」


 俺は、ヴォルフガングの話を聞いて、ザルク講師という人物を改めて気に入った。

 ただ者ではないと知られても、決して立場を振りかざさない姿勢は最低限必要だと思うんだ。

 相手に妙な警戒心を持たせないことは、互いに得るものをより多くすることができる。

 ザルク講師が、俺と同じ考えを持っているかもしれない……いや、裏付けもなしに思い込むのは危険、か。

 俺の管轄がダルクヴァルトである以上、リルヴァナク修道院との連携は欠かせない。

 関係を維持するには、焦らず一つ一つ確実な情報だけを得るようにすればいい。

 修道院長の付き添い役をこなしている修道女も気になる……。


「リルヴァナク修道院には、また訪れる約束をしているんだ。まだ修道院長にも会えていないし、ザルク講師のことは追々知ることができる。ところでヴォルフガング、初めの話が僕についてということは、不在中に問題はなかったと捉えていいのかな?」


 ヴォルフガングは、俺が執務室に入ったのを見届けてから扉を閉めた。

 慣れ親しんだ調度品が目に入る。質素なものだが、ほぼ離宮しか知らずに過ごした俺にとって、心地よい空間を作り出すだけの価値は十分にある。

 さりげなく椅子を引いてくれたヴォルフガングに笑みを向け、ゆっくりと腰を下ろした。


「はい。気になる第二王妃派に動きはありません。やはり閣下のお考え通り、ゼフィラ様とベリス様に指示を出した件には触れないようにしているのでしょう」

「そうか……僕の様子は把握したいだろうに、案外頑張るね。任務を遂行している証として、そろそろ城門から出入りしようと考えていたのだけど、まだ城壁からにしておこうかな」

「よろしいのではないでしょうか。閣下のことを軽んじているという体裁である以上、他の方々も動きづらいと考えます。気にされないのなら、こちらも自由に動くことができるというものです」


 ヴォルフガングの言う通りだ。何か動きがあるまでは、静かな出入りを続けておこう。


「ところで、お話しを変えて恐縮ですが、セルヴィン様が帰国なされたそうです。講義を再開するという意向を伝えましょうか?」

「セルヴィンが!? それはぜひとも会いたい! 話したいことがいっぱいあるんだ。でも、帰国して間もないのなら無理をさせてしまうかな」

「閣下から会いたいと言われて断るようなお人ではありますまい。では、早速伝令を送ります」


 俺の教育係であるセルヴィン・トルバスは、色々なことを教えてくれる素晴らしい人物だ。

 彼がいなければ、俺はとんでもなくつまらない生活を送っていただろう。

 第三王妃であり、母であるリリスヴェーアが選んだ理由がわかる気がする。

 ヴォルフガングが伝令に指示を出そうと執務室から出るのと入れ替わりに、ゼフィラが入室してきた。

 ヴォルフガングは、ゼフィラを止めようとしたが、直接体に触れることを躊躇した。

 離宮内の、それも自室から直接来たであろうゼフィラは、肌がかすかに透けて見える室内着だった。

 まだ十一歳とはいえ、貴族の娘らしくよく整えられた容姿に、ヴォルフガングは戸惑ったようだ。

 そして、刺客だったときの印象と、馴染みの無さによる影響もあったのだろう。


「アールおうじい……」

「どうした、ゼフィラ」


 力の抜けた声を発しながら近寄るゼフィラは、体をフラフラとよろけさせて俺の横にたどり着いた。

 部屋の扉を開けたままのヴォルフガングが、様子を伺ったまま出られずにいる。

 その横をベリスがすり抜け、小走りでこちらへ向かってきた。


「ちょっとゼフィラ、アール様はお疲れなの! あなたもしっかり休んで、いつでもアール様のお手伝いができるようにしておかないと――」

「その前に、アール王子を補給しておく必要があるの。ぐっすり寝るためよー」


 ゼフィラらしさを爆発させているな。そんな彼女にベリスは相変わらず振り回されている。

 この二人は、いつもこんなやり取りをしているんだな。初めて会ったときも同じようなやり取りをしていた。

 この二人のやり取りを見るのが楽しくなってきている。

 お互い、無条件に気を許せる人――俺にとってのルヴェリナ、リリアナ、エリスのような存在に似ているからか。

 いずれゼフィラには、俺のそばから解放して、単独で別の動きをさせようと思っていた。

 だが、ベリスとの連携を壊すことになってしまい、二人の良さを引き出すことができない。

 今後も引き続き、二人一組にしておいたほうがよさそうだ。


「ゼフィラ、ダルクヴァルトの散策中では、君の動きを注視する必要があるとして、僕のそばにいてもらったね。実際は、目的と違って僕を安地へ運ぶという役をこなしてもらった。そこで今後についてだけども――」

「アタシ、ずっとアール王子のそばにいていいの?」

「まだ話の途中だぞ」

「え、だって、これからもアール王子の運び役としてそばにいられるかってことじゃないの? アール王子は優しいから、運ぶためだけに能力を使うなんて、不満に感じるかもって心配しているんでしょ。そんなの、アール王子がアタシの能力……えっと、エレヴァニス(魔法)だっけ、それを求めてくれるなら何だってする。風の使い方の一つなんだし、何も問題ないわ」


 ふむ……やはり彼女は侮れない。今の俺の言い回しからならゼフィラに限らず、誰でも何が言いたいのかを察した可能性はあるが。

 それでも、専属侍女らしく、俺への揺るぎない忠誠心を素直に届けてくれる彼女には、自然と好感を持ってしまう。


「ゼフィラ、君の言う通りだ。素敵な能力を移動手段だけに使うなんてもったいない。それに、素早い移動ができるということは、物事を有利に動かすことができるってことだ。ゼフィラ、これからも外出するときは僕のそばにいるように」


 彼女は、元気な返事をするだけでなく、座っている俺に横から抱き着いてきた。


「大好き! いーっぱい命令して。何でもします! はあ、来てよかった。ベリス、ぐっすり眠れそうよ」

「でしょうね……アール様、本当に申し訳ございません。私、全然ゼフィラのことを扱えていなくて――」

「そんなことないよ。君がいるからゼフィラはゼフィラらしくしていられるんだ。だからベリス、君もゼフィラの監視役は継続だ」

「それはつまり……私もアール様に付き添う、と?」

「ああ。だけど、それだけではない。ベリスの能力は他の能力と組ませやすいからね。急な指示が多いと思うけれど、頼りにしているよ」

「御意!」


 ベリスは、抱き着いたままのゼフィラを俺から離し、背筋を伸ばしたまま力の抜けたゼフィラを抱えて執務室から出て行った。

 扉が閉まると思いきや、閉じかけた扉は再び開けられ、ベリスが顔だけ出して俺に言う。


「アール様、ダルクヴァルトでの出来事や、リルヴァナク修道院までの往復、お疲れさまでした。ゆっくりお休みください……それから私、お慕いする気持ちはゼフィラより強いです」


 ベリスの頭が引っ込み、扉が閉められた。執務室に静けさが戻るが、かえって耳鳴りを感じてしまう。

 ゼフィラとベリスは、俺への忠誠心に満ちていて、刺客であったのが嘘のようだ。

 思わずにやりとしているのを感じつつ、俺は写本に筆を走らせた。


 ――翌日。

 昨夜、ヴォルフガングが夜にも関わらず伝令を出したため、教育係のセルヴィンは、随分と慌てたらしいが、朝早くから来てくれた。

 執務室にある俺の机の前に置かれた椅子に座り、表情を緩ませている。

 相変わらず、灰色の短髪と鋭い目に独特な圧を感じ、きちんと整えられた服装は、几帳面な性格が表れている。


「アールヴェリス閣下、公爵に叙せられたこと、誠におめでとうございます。そして、久しくなってしまうまでお休みをいただき、ありがとうございます」

「人には休息が必要だよ、何も悪いことはない。それより、セルヴィンまで閣下というの?」

「当然でございます。やはり公爵というお立場はこれまでとは大きく違います。王子としてのご尊貴に加え、公爵としての重責を担われることとなり、そのお覚悟とご決断に深く敬服いたします。」

「待って待って。そんなのセルヴィンじゃないよ。僕がそんな立場というものを嫌いなのは知っているはず。少し会わなかっただけで今までの仲は無かったことにするの?」


 セルヴィンは、いたずらめいた笑みを浮かべると、少し肩を下げてから口を開いた。


「失礼しました。今のは照れ隠しといいますか、久しぶりであるが故の探りです。できれば見逃していただけると幸いです。叙爵されてもお変わりないアール様で安心しました」

「まったく変わりがないのも問題な気がするけど……最近は、役職として与えられたダルクヴァルトを見に出かけているんだ。あの森で色々な出来事を体験するたびに、立場なりの変化は必要なのだなと思い始めているよ」

「おや、お考えに変化が生まれたと?」

「そうだね。爵位についてだけでなく、歳相応の振る舞いや、侍女たちを束ねる力が必要なのだと痛感する場面に遭遇すると、自分の考えを押し通している場合ではないんだな、ってね」

「外に出られて、早速様々な体験をされたのですね」


 セルヴィンは、満足げにうなずいている。教育係の視点からは、俺が成長していると感じられたのだろうか。

 それなら良いのだが……。

 俺が叙爵する数日前、セルヴィンからしばらく時間が欲しいと申し出があった。

 はっきりと講義再開の期日を決めずに承諾していたため、次はいつ会えるのだろうと気になっていた。


「ところで、休みの間はゆっくりできた?」

「はい。でも、仕事の流れを忘れそうで、感が鈍くなるのではと、気がかりでなりませんでした」

「ははは、セルヴィンらしい。無心になるのは案外難しいよね。僕も、天井を見上げてぼーっとするぐらいしか気を休ませる時間を作ることができないから、よくわかるよ」


 苦笑いをするセルヴィンを見て、俺はリルヴァナク修道院へ行ったことを思い出した。


「そうだ、セルヴィン。ダルクヴァルトにある、リルヴァナク修道院を訪ねたよ」

「おお、もうそこまで足を延ばしていらしたのですか」


 彼は、驚きと喜びが混ざったような笑みを浮かべ、理想の反応をしてくれた。


「偶然にもザルクという講師に出会ってね、案内してもらったんだ」

「なんと! あのザルク名誉講師にお会いになったのですか!?」

「やはりセルヴィンも名誉講師だというのを知っているんだね」

「もちろんです。あの方がリルヴァナク修道院を選ばれたおかげで、ダルクヴァルトの維持ができていると言っても過言ではありません」


 セルヴィンの口調に熱が入る。ザルク講師という人物が特別であるという証拠だ。

 それほどに有名である人物を知らなかった俺は、恥ずかしく思えてならない。


「彼は、そこまでの力を持っているのか。僕が今後行うダルクヴァルトの維持と監視には、彼と連携したほうがよさそうだね」

「それが賢明でしょう。アール様の能力をより強くするためにも、ザルク先生との連携は重要です」


 セルヴィンは、分厚い写本を持ったまま一つうなずき、とても楽しそうだ。


「そういえば、彼は能力を感じ取ることができるらしくて、僕が能力者だと教えてくれたんだ。まさか僕が能力を持っているだなんて微塵も思っていなかったから、とても驚いたよ」

「なんですと! 先に言われてしまいましたか……それは私がお伝えしたかったことなのに」


 セルヴィンは、うなりながら拳を握って悔しがっている。

 一つ一つ反応してくれるセルヴィンとの会話は、自然と明るい気持ちにさせてくれる。


「それって……セルヴィンは僕が能力者だということを、すでに知っていたということ?」

「……はい。伝える時期が難しくて、いつお伝えしようかと悩んでいたのです。うーん、これは悔しい」

「なぜ?」


 素朴な質問を投げかけてみると、キリッとした目つきで視線を合わせてきた。


「それは、アール様専属の教育係である私がお伝えするべきでしょう。ずっとアール様を見届けてきたのですから。うーん、うーん、これは当分病みそうです」

「待ってくれ。またどこかへ遠出することになるじゃないか。それは僕が悔しい思いをするからやめてくれ」

「……そう言っていただけるなんて、これは、夜眠れなくなりそうです……アール様の人心魅了術によるものなのでしょうね」


 はて。また新たな言葉を耳にしたぞ。人心魅了術とはなんだ?


「セルヴィン、その人心魅了術とは何なの?」

「アール様の能力でございます。人の心を読むことができ、何より、優雅なカリスマ性により他者を引きつける魅力のこと。それらを総称して人心魅了術、と私が付けた能力の名です。アール様も、ルヴェリナ様らと同様に、無意識に能力を発動されています。実は、人心魅了術はとても強力でして、私も影響を受けています」


 思わず口をポカンと開けてしまいそうになるのを抑え、質問を続ける。


「まだワケがわからないのだけど、セルヴィンに被害があると?」

「私の場合は、教育者という立場上、人心魅了術によってアール様に依存してしまうことが問題となります。お休みをいただいた理由は、その人心魅了術を解くために、知り合いの修道士に会っていたのです。このことも、能力についてお伝えする時期を難しくした理由の一つです」


 人心魅了術――ザルク講師も、俺の能力は人の心を掌握するものだと言っていた。

 俺は、心紋を見ることで相手の心を読むが、それを能力だとは思っていなかった。

 ……ははは、すでに夢が叶っていただなんて、笑うしかない。

 さらにセルヴィンの説明では、俺が思うよりも強い効果があるようだ。

 心を掌握し、俺に依存させる力――。

 強力な能力を持っているのなら、うれしいことだ。

 専属侍女たちは、能力によって俺への忠誠心が芽生えているのではないか?

 できれば彼女たちからの好意は、本心であって欲しい。

 自分の能力だとはいえ、彼女らの本意ではないとしたら……もしそうなら、事実を受け入れるには時間が掛かりそうだ。


「アール様? お伝えしない方がよかったのでしょうか。知らないことを嫌うアール様ならばとお伝えしたのですが……ザルク先生を意識して、つい話してしまったことは否めません。もしお気を悪くされたのでしたら、私を処していただいてもかまいません」


 心配そうに見守るセルヴィンの声が、迷走する俺を現実に戻す。

 この場にルヴェリナがいたら、また肘で突かれているだろう。


「何を言い出すんだ、セルヴィン。僕とセルヴィンの間に、隠し事などある方が問題だ。僕が知らないことを嫌うとわかっているのなら、どんな内容であれ、話してくれたことは大正解だ。久しぶりだからって、今までと何も変わらないよ」

「……ありがとうございます、アール様。そのようなお優しいお気持ちが、人心魅了術を発動せずとも、生まれたときから持ち合わせている魅力。おそらく人心魅了術は、その魅力が磨かれていく過程で生まれた増幅能力なのでしょう。ですから、能力を特別視しなくてもよろしいのではないでしょうか。性格と同じく、持ち味なだけ。そういうことなのだと私は思います」


 能力を特別視しない、と。確かに、無意識にしていることなのだから、持ち味だとすれば納得できる。

 やっぱりセルヴィンと話すと、答えがはっきりして楽しいな。


「でも、僕に会うことでセルヴィンに影響があるのは心配だ。決して悪い気で接しているわけではないし、セルヴィンが僕を気に入ってくれるのならば、何よりうれしいことなのに」

「私は教育係であるという意識から、悪足掻きをしているだけです。アール様が気に病む必要は一切ありません。これぐらいのわがままはお許しください」


 セルヴィンは、椅子に腰かけたまま頭を下げた。

 俺が親しい関係でいたい相手であればあるほど、気を遣わせてしまう。

 無意識にしてしまっていることの怖さを実感して衝撃を受けたが、これは意識することで操作できるようになるのだろうか。

 今後は、能力を意識して扱えるように、実践していくしかない、か。

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