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求人の応募の連絡も思うように得られず、次の方法を模索し始めていたが、求人広告掲載から半月ほどでようやく三人の候補者が現れた。観光地とは言え、こんな小さな港町で働こうと言ってもらえてありがたい。書類を見て三人のうち二人を面接することにした。


一人目の候補者は人当たりがよく、うまくやっていけそうだと思ったが、経験が足りなくてJean-Lucのお眼鏡には叶わなかった。二人目は経験はあったが、プライドが高くJean-Lucのアシスタントとしてやっていくのは難しそうに思えて、私が却下することにした。


幸先良く思えたが、人を雇うのはそう簡単ではなく、応募の連絡も途絶えた。最後の面接から一週間経ってしまい、やはり求人の方法をもっと広げようと思案し始めた頃、店に人が入ってきた。


「すみません、まだ開店していないんですよ。」


客だと思った私は、開店の準備をしながら、エントランスに立つ男に声を張って伝えた。


「あっ、いいえ、客じゃないんです。あの・・・張り紙を見て来ました。」


私は求人の張り紙をしていたことをすっかり忘れていた。


「張り紙?・・・」

「あの・・アシスタント募集の・・・」

「あぁ、ごめんなさい。求人の張り紙ね。」

「まだ募集されてますか?」

「えぇ・・・」

「すみません、連絡もしないで。また出直します。」

「いえ、大丈夫よ。そんな畏まった店じゃないし。時間があるなら、今お話を伺いますけど。」


私は予想していなかった急なことに、一時言葉が出なかったが、すぐに支配人のような落ち着きを取り戻した。


「ありがとうございます。」


私の前を通って家に入って行く候補者を一瞥する。張りのある頬、大人に見せるための髭、幼さを隠せない長い睫毛、私には瑞々しく鮮やかに写る。若さが眩しく見えるなんて、随分と老け込んだものだと自分を揶揄する。


「じゃあ、事務所にどうぞ。」


私たちはテーブルを挟んで対面して座り、雇用主と従業員候補者の立場を作った。


「履歴書を見せてくれる?」

「はい。」


彼は片方の肩に掛けていた小さなリュックから、四つ折りの紙を取り出して私に差し出した。


「Ramon、32歳。スペイン出身。いろんな所で働いているのね。」


私はRamonの簡単な履歴書や推薦状に視線を固定したまま、彼を見ずに話し始めた。


「はい、高校を卒業してから家を出て、マドリードのレストランでフランス料理の修行を始めました。それからフランスに来て、パリでしばらく働きました。」


黒目がちの瞳は、長く濃い睫毛の瞬きの度に暖かい栗色に輝く。16歳も年下のスペイン人に何の共通点も見出せるはずもないのに、私はその瞳に引力を感じていた。


「どうしてCassisに来たの?パリのレストランはなぜ辞めたの?」

「生意気ですけど、もう教わることはないかと思って。自分の料理を作りたくて。あちこち旅して・・もう働かないと資金がなくなってしまうから。」


甘い栗色の髪は短くても柔らかそうに見える。少し緊張したような面持ちは、好感が持てた。


「旅の途中なのね。自分の料理が作りたいのに、アシスタントでいいの?それにこんな港町の小さな観光地のレストランで?」

「はい、えぇ・・求人の張り紙に呼ばれたような気がして。すみません、変なこと言って。いつもは張り紙とか見ることないんだけど・・僕のことを探しているんじゃないかって、なんだか気になって。」

「・・そう、私のフランス語がおかしいからじゃない?ははは・・」

「いや、ちゃんと通じました。」


張り紙に何と書いたか忘れていたが、彼の言葉が嘘には思えない。


「でも、すぐに辞められたら、こっちも困るのよ。」

「もちろん、そんなつもりはありません。将来は自分の店を持つのが夢ですけど、ずっと先の話です。」

「そう・・じゃあ、シェフに見てもらうわ。私は料理に関しては全くの素人だから。」



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