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「Jean-Luc、私はこの業界は全くの素人だから、あなただけが頼りなの。本当によろしくお願いします。」
私は不安でならなかった。Angelaの店を継続していかなければならない。彼女の一部である店を壊すことはできない。
「Anna、君は店を経営する。僕は料理を作る。それだけだよ。」
Jean-Lucは如何にも簡単だよと言わんばかりに、眉をあげて言った。
私は大きく息を吸って、溜息を作り、
「そう簡単にいけばいいんだけど。」
と独り言のように言ってみた。
経理関係のことはAngelaから既に引き継いでいたので、Jean-Lucにはメニューを中心に、仕入れや日々の仕事の流れ、客、スタッフに関すること、様々なことを質問した。明日から店を開けなければならない。
「メニューは秋までこのままで、9月頃に変更するよ。その時はまた相談するから。・・・それからスタッフだけど、先月アシスタントが一人辞めたんで、今はRaphaelしかいないんだ。もう一人早急に雇わないと。店が回らないよ。」
「誰か知り合いとかいない?」
「う~ん、何人か当たってみたけど、まだいい返事はもらえてないんだ。」
「Angelaにも聞いてみるわ。」
「頼むよ。それからMarieって高校生の女の子がアルバイトで来てくれている。Marieが来られない時は、代わりに彼女の友達が来るから、バイトは困らないよ。給仕はMarieとRaphaelと、忙しい時は君も手伝ってくれれば何とかなるし。」
「わかったわ。最初の重要な仕事はアシスタントの求人ね。」
打ち合わせは一段落したが、私の頭の中はやるべきことで溢れかえっていた。
「夕食でも食べにおいでよ。Edithも会いたがっているよ。」
「ありがとう。」
私はノートや書類の束をまとめて立ち上がりながら答えた。
「落ち着いたらお邪魔するわ。Edithに店にも遊びに来てって伝えておいて。」
Jean-Lucの妻Edithは静かな芯の強い雰囲気のフランス人だが、気心が知れると明るく楽しい人だった。数回しか会ったことはないが、彼女といると長年の友人のような気になる。
「うん、じゃあ明日。」
「よろしく。」
Jean-Lucを見送りながら、私はパソコンを立ち上げて求人広告の掲載内容を練り始めた。店のサイトに掲載し、かつ張り紙もすることにした。プリントした張り紙が素っ気なく感じられて、
『We are looking for you! あなたを探しているの!』
みたいなことを拙いフランス語で手書きしてみた。見た目にも満足して、張り紙を早速店の入り口の壁に張った。これで最初の仕事は終了だ。




