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私はそのままYvonneの所に向かった。手紙の束を彼女に渡す。私が死んだら出してもらう手紙だ。

いつものように彼女は暖かく私を迎え入れてくれる。


「Yvonneお願いがあるんだけど。」

「おお怖い。Annaが私にお願いなんて。よっぽどだね。あんたは自分でなんでも片付ける人だから。」


自分のことを見抜かれている相手には太刀打ちできない。何とか持ちこたえていた心の牙城が脆く崩壊する。


「・・私・・もうそんなに長く生きられないのよ。ガンなの・・・」


人の前で泣くことが許されたような気がして、体が崩れるままに私は泣いた。ずっと思い切り泣きたかったのかもしれない。私は私の死を悲しんでいる。怖れている。


Yvonneは黙って私の隣に座り、私を抱き寄せて背中をさすってくれた。死にたくない!と心の中で絶叫する。喉が熱く痛い。


「泣きなさい。泣き尽くしたら、死ぬまで生きなさい。私たちにはそれしかできないんだから。」


しゃくりあげる胸を押さえて、私は深呼吸をしてお願いを始めた。


「この手紙をポストに入れて欲しいの。私が死んだら。」


怪訝なYvonneの顔に乞うように話し続けた。


「誰にもこのことは話していないの。Angelaにも言えなくて。でも店はちゃんと続けられるように、手配してから病院に行くから大丈夫。誰にも迷惑かけないように。でも死んだら・・・それを伝えないと。みんなにありがとうを言いたいから。」


私の背中を擦り続け、やっと話し終えた私に、Yvonneはただ頷いて抱きしめてくれた。


「病院には一人で行くの?」

「ええ、そのつもり。」

「私がいることを忘れないでね。一緒に行くわよ。」

「ありがとう。」


手紙の束をYvonneの手に握らせて、ぬくもりの中からドアを開けて、私は残された力で背筋を伸ばして現実に出て行く。束の中にRamon宛ての手紙はない。鬱積した嘆き悲しみを書いてしまうかもしれないから止めたのか、彼への愛は言葉にできるほど浅くはないから止めたのか、自分でもわからない。書けなかった。


ミラベルの木が今年も実を付けている。自然は決して忘れない。終われば始まる。始まれば終わる。私は終わる。もう始まらない。抗わずに流れて行こう。岩にしがみ付いているから苦しい。手を放せば、その瞬間には最悪の恐怖と痛みを味わうが、すぐに楽になる。流されていく。痛みもなく心地よく流されていく。



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