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ニューヨークから帰ってきたRamonは自信に満ちていた。まだ結果は知らされていなかったが、既に若き奇才シェフの風格すら感じさせた。スペインの田舎から武者修行でフランスを旅するRamonはもういなかった。


これまでの日常を取り戻すように、私は話しかけた。


「そうだ、この前いいもの見つけたの。これ使って。」


カーディガンのポケットから、渡そうと持ってきていたキーホルダーを出した。Rの文字のキーホルダー。


「おぉありがとう!これで鍵をなくさないで済むよ。」


彼は今持っている数個の鍵を一つにしてキーホルダーにつけ、余分になった接続用の金属の輪を仰々しく私の薬指につけた。


「ははは・・・」


私は笑いながら、結婚会見で指輪を見せるお決まりのポーズを取って見せた。くだらない茶番劇は、私の最後の幸せな芝居の一幕になっただろう。


「誕生日プレゼント何がいいかわからなくて、Jacquelineに相談したんだけど・・どう?気に入るかな?」


スーツケースから矢継ぎ早に放り出される荷物の中から、Ramonは私に包みを一つ渡してくれた。私の好きなブルーのスカーフ。


「ありがとう。私の好きな色覚えていてくれたのね。」

「気に入った?青い素敵な物ってJacquelineに相談したんだ。よかった。買い物は苦手だから。」

「素敵よ。ありがとう。」


私は彼とJacquelineの時間を思って、スカーフを引き裂く妄想を見る。心臓が黒い血で動いているような気がする。


「市場にも行ってみたんだけど、想像していたより食材の入手は難しくなさそうなんだ。よかったよ。農薬にも厳しいし・・・」


Ramonはまだ働けるかわからないのに、もう新しいレストランを切り盛りしている。Ramonの携帯が鳴って、彼の熱意を止めに入った。携帯の画面にJacquelineの名前が浮かぶ。今までは私の前で電話を取っていたのに、彼は携帯を手に、逃げ出すように部屋を出て行った。


「もしもし、あぁ、うん、大丈夫。・・・」


私は妻が浮気を疑うように耳をそばだてる。彼の声は私に話しかける時より柔らかく優しく聞こえる。息が苦しい。


「面接の結果はいつ頃わかるの?」


部屋に戻って来た彼に、何も気にしていないように質問する。


「今月中には返事してくれるって。他にも候補者が数人いるらしい。まだ面接中で。でも開店は9月って決まっているから、採用されたら来月8月には行かないと。」

「そう、忙しくなるわね。受かるに決まっているわ。」

「どうかな・・・面接はよくできたと思うけど・・やるだけやったから後悔はないよ。」

「それでいいじゃない。・・・私たちの時間もあとひと月くらいか。」

「ここではね。でもずっと友達でいたいよ。」


『友達』。なんて残酷な言葉だろう。友達のRamonはいらない。独りよがりに勝手に愛していたのだろうか。愚かな老女は、賢者の振りをして微笑んでみる。言葉が出なかっただけなのに。



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